能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 4月

恐怖と諦め ~紫月 司~

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おれは屋上の鍵を預かっている。

屋上には、おれしか入れない。
光陰部の生徒とはいえ、なぜおれにこんな優遇が許されているのかと言うと、それは生徒の安全のためだ。

おれは、人を傷つけてしまう。
おれは、力を制御するのが他の能力者に比べて下手だ。
おれの力は、他の能力者のものよりもずっと強い。
それは、おれも感じている。

でも、おれが力を制御できないのは、力が強いから、という理由だけでは説明できない。
おれ自身に、力を制御する、という能力が欠落しているからだ。

能力者として、致命的な欠点。
力が強いくせに属性にも目覚めていない、力を使えない役立たず。

それが、おれだった。
頻繁に起こす力の暴走の予兆を感じ取ったおれは隔離場所である屋上にやってきた。
そうしてやってきた力の暴走は、いつもよりひどく、とても苦しかった。
力の暴走とは、身の内で制御しきれなくなった力が体の中で暴れ回り、かなりの苦痛をおれに与える。
そして力はおれの体から漏れ出し、周囲にあるものを破壊しようとする。

屋上のフェンスがないのは、おれが全て壊してしまったからだ。
それでもおれが屋上から落ちる危険がないのは、現在能力者の中で最も力が強い藤沢先生が屋上を囲むように強固な結界を張ってくれているからだ。
ちなみに外からおれの姿が見えないように細工してくれている。

「っく!」

身が焼かれるような苦しみにおれはのたうち回る。
視界がかすんで、全部がめちゃくちゃだ。
そんなおれの耳に、屋上の扉が開く音が聞こえる。

鍵をかけているはずなのに、なぜ・・・!
鍵をかけ忘れていたのだろうか。

光陰部のメンバーならここには近寄らない。
一般生徒がおれに近づくのは、危険すぎる。

力の存在を知られてしまうということ以前に、その生徒が命を落としてしまうかもしれない。

おれが、人を殺してしまうかもしれない。

「こっちにっ、来るなっ!」

恐怖にかけられあえぎながらなんとか声を絞り出す。
その声は届いているはずなのに、気配がおれに近づいてくる。
もうおれには声を出す余裕すらなく、もうどうにでもなれと諦めた。

ああ、明日からは役立たずと共に、人殺しというレッテルまでおれについてまわるのか。

諦めてオレは意識を手放す。


目を閉じる瞬間、おれのかすむ視界が捉えたのは揺れる銀と、まっすぐにおれを射貫く鮮烈な紫だった。

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