23 / 105
高校生編 4月
チート
しおりを挟む予想外のことが盛りだくさんだった今日がやっと終わり、帰り支度をしていた頃、妖怪の気配を感じた。
これは・・・火の妖怪?
教室から出て気配をたどって移動する。
カイお兄ちゃんからは力を使ってはダメだと言われてるけど、気配を隠したら私が力を使ったということが分かる人はきっといない。
カイお兄ちゃんから聞いていたこの学校の光陰部のメンバーの属性はかなり偏っている。
水属性が1人もいないなら、火属性相手では戦いにくいだろう。
陰ながら力になりたい。
万が一にもカイお兄ちゃんに痛い思いさせたくないし。
そんなことを考えながら辿り着いたのは裏庭。
そこにはカイお兄ちゃんと、光陰部らしき面々がいた。
裏庭には幸い木がたくさんあって、隠れるには好都合だ。
木陰に身を隠し、様子をうかがう。
襲われたのは女子生徒。
腕から血を流している。
ポタポタとしたたり落ちているが、それが地面に落ちることはない。
血が落ちるたびに火花が飛んできて、血をさらっていくからだ。
妖怪は血を糧にして生きる。
血を摂取すれば力も強くなる。
とりあえず、あの血を止めなければ。
常に常備している札を取り出して、素早く女子生徒に向かって投げる。
「我が名は朱雲 蒼来。魂の記憶を保持する者。我が名の下に、我が力を行使する。水よ、土よ、我が望みに従い、彼の者の傷を癒せ。」
小声で唱えると、女子生徒の傷が塞がっていくのが見えた。
よかった、治った。
人を癒すなんて、普通はできないんだけど、複数の属性を持つ私は属性を合わせて使うということに挑戦してみて、土と水を合わせると癒しの力になることを発見したのだ。
札に描く複雑な文様は、属性によって違うんだけど、うまく組み合わせてより少ない力で効率よく力を合わせる文様を新たに造りだした。
当然、その札を描く時にも使う時にもその属性の力と、技に見合う力の強さが必要だから誰にでも出来るってわけじゃないけどね。
ちなみに私は全属性の力が使える。
いわゆるチートってやつだね。
・・・あれ?
妖怪の力が、妙に強い。
何でだろう。
最初に感じた気配は大して強そうじゃなかったのに。
カイお兄ちゃんが、苦戦してる。
・・・誰かにバレることなく倒そう。
どの属性を使えばいい?
ちょっと迷ったけど、バレないようにするには、方法は一つしかない。
2つ、風属性の札を取り出して重ねる。
そしてそのうちの1つに力をこめた。
「風よ、我が技の痕跡を隠せ。」
そうすると力を込めなかった方の札が誰からも見えなくなる。
よし、これならいける!
見えない札を妖怪に向かって投げる。
「風よ、彼の空間から退け。」
普通、火の妖怪を倒すのに風の力は使わない。
というか、使ってはいけない。
どれほど風の力が強くても、火を増幅させるだけだからだ。
でも、実は風は四つの属性の中のどれよりも、火を倒しやすいのだ。
もちろん、誰にでも使える技ではないけれど。
というか、私しか使えない。
いかんせん、必要な力が大きすぎる。
下手をすると、一発で力が枯渇して死んじゃう。
火の周りの空気を取り除く技。
つまり、火の周りが真空状態になるのだ。
酸素がなくなって、当然火は消えてしまう。
さっきまで能力者達を苦しめていた火の妖怪は跡形もなく消えていた。
うん、ベストの方法だった。
だって、こんな技があることを、誰も知らない。
カイお兄ちゃんなら気付くかもしれないけれど。
妖怪の気配が完全になくなったのを確認して、私はその場を去った。
0
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら男女比がおかしくなっていた
いつき
恋愛
主人公である宮坂葵は、ある日階段から落ちて暫く昏睡状態になってしまう。
一週間後、葵が目を覚ますとそこは男女比が約50:1の世界に!?自分の父も何故かイケメンになっていて、不安の中高校へ進学するも、わがままな女性だらけのこの世界では葵のような優しい女性は珍しく、沢山のイケメン達から迫られる事に!?
「私はただ普通の高校生活を送りたいんです!!」
#####
r15は保険です。
2024年12月12日
私生活に余裕が出たため、投稿再開します。
それにあたって一部を再編集します。
設定や話の流れに変更はありません。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
最愛の番~300年後の未来は一妻多夫の逆ハーレム!!? イケメン旦那様たちに溺愛されまくる~
ちえり
恋愛
幼い頃から可愛い幼馴染と比較されてきて、自分に自信がない高坂 栞(コウサカシオリ)17歳。
ある日、学校帰りに事故に巻き込まれ目が覚めると300年後の時が経ち、女性だけ死に至る病の流行や、年々女子の出生率の低下で女は2割ほどしか存在しない世界になっていた。
一妻多夫が認められ、女性はフェロモンだして男性を虜にするのだが、栞のフェロモンは世の男性を虜にできるほどの力を持つ『α+』(アルファプラス)に認定されてイケメン達が栞に番を結んでもらおうと近寄ってくる。
目が覚めたばかりなのに、旦那候補が5人もいて初めて会うのに溺愛されまくる。さらに、自分と番になりたい男性がまだまだいっぱいいるの!!?
「恋愛経験0の私にはイケメンに愛されるなんてハードすぎるよ~」
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる