能力者は正体を隠す

ユーリ

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高校生編 4月

チート

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予想外のことが盛りだくさんだった今日がやっと終わり、帰り支度をしていた頃、妖怪の気配を感じた。

これは・・・火の妖怪?

教室から出て気配をたどって移動する。
カイお兄ちゃんからは力を使ってはダメだと言われてるけど、気配を隠したら私が力を使ったということが分かる人はきっといない。
カイお兄ちゃんから聞いていたこの学校の光陰部のメンバーの属性はかなり偏っている。

水属性が1人もいないなら、火属性相手では戦いにくいだろう。

陰ながら力になりたい。

万が一にもカイお兄ちゃんに痛い思いさせたくないし。
そんなことを考えながら辿り着いたのは裏庭。
そこにはカイお兄ちゃんと、光陰部らしき面々がいた。
裏庭には幸い木がたくさんあって、隠れるには好都合だ。
木陰に身を隠し、様子をうかがう。

襲われたのは女子生徒。
腕から血を流している。
ポタポタとしたたり落ちているが、それが地面に落ちることはない。
血が落ちるたびに火花が飛んできて、血をさらっていくからだ。

妖怪は血を糧にして生きる。
血を摂取すれば力も強くなる。
とりあえず、あの血を止めなければ。
常に常備している札を取り出して、素早く女子生徒に向かって投げる。

「我が名は朱雲 蒼来。魂の記憶を保持する者。我が名の下に、我が力を行使する。水よ、土よ、我が望みに従い、彼の者の傷を癒せ。」

小声で唱えると、女子生徒の傷が塞がっていくのが見えた。
よかった、治った。
人を癒すなんて、普通はできないんだけど、複数の属性を持つ私は属性を合わせて使うということに挑戦してみて、土と水を合わせると癒しの力になることを発見したのだ。
札に描く複雑な文様は、属性によって違うんだけど、うまく組み合わせてより少ない力で効率よく力を合わせる文様を新たに造りだした。
当然、その札を描く時にも使う時にもその属性の力と、技に見合う力の強さが必要だから誰にでも出来るってわけじゃないけどね。

ちなみに私は全属性の力が使える。
いわゆるチートってやつだね。

・・・あれ?
妖怪の力が、妙に強い。

何でだろう。
最初に感じた気配は大して強そうじゃなかったのに。
カイお兄ちゃんが、苦戦してる。

・・・誰かにバレることなく倒そう。
どの属性を使えばいい?
ちょっと迷ったけど、バレないようにするには、方法は一つしかない。
2つ、風属性の札を取り出して重ねる。
そしてそのうちの1つに力をこめた。

「風よ、我が技の痕跡を隠せ。」

そうすると力を込めなかった方の札が誰からも見えなくなる。
よし、これならいける!
見えない札を妖怪に向かって投げる。

「風よ、彼の空間から退け。」

普通、火の妖怪を倒すのに風の力は使わない。
というか、使ってはいけない。
どれほど風の力が強くても、火を増幅させるだけだからだ。

でも、実は風は四つの属性の中のどれよりも、火を倒しやすいのだ。
もちろん、誰にでも使える技ではないけれど。
というか、私しか使えない。
いかんせん、必要な力が大きすぎる。
下手をすると、一発で力が枯渇して死んじゃう。

火の周りの空気を取り除く技。
つまり、火の周りが真空状態になるのだ。
酸素がなくなって、当然火は消えてしまう。
さっきまで能力者達を苦しめていた火の妖怪は跡形もなく消えていた。

うん、ベストの方法だった。
だって、こんな技があることを、誰も知らない。
カイお兄ちゃんなら気付くかもしれないけれど。

妖怪の気配が完全になくなったのを確認して、私はその場を去った。

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