ぽっちゃり娘、惚れ薬でイケメンに溺愛される

第２章 「イケメン、高級ホストになる」

第28話 「女の留守を狙え！」

昼食後、クルチアはミカリに部屋を割り当てていた。

「この部屋でいいかしら？」

クルチアの家は３ＬＤＫだから、あまり選択肢はない。

「いい部屋だね。 ありがとう」

「気に入らなければ私と一緒...」

「そんなことないさ。 とても気に入ったよ」

（...の部屋でも良かったんだけど）

そのとき呼び鈴が鳴った。 ピンポーン♪

「誰か来たよ」

「誰かしら？」

クルチアはミカリの部屋を出て、リビングに設置されているインターホンのスイッチをオンにした。

「どちらさまですか？」

クルチアが問うと、聞き慣れない男の声がインターホンから流れ出す。

「わたくしゴタンバ商会ホストクラブ部門のイナリと申します。 ユキノシタ・ミカリさんはご在宅でしょうか？」

（げっ、ホストクラブ！）

クルチアは咄嗟の判断で嘘をつくことにした。

「そんな人は知りません」

数瞬の間を置いてインターホンから再び男の声。

「...そうですか。 失礼しました」

男があっさり引き下がったことにとりあえずホッとしつつ、クルチアはインターホンのスイッチを切った。

（タナイデさん、ミカリくんのことを他の人に話したんだ...）

　　　　　　　　　　　◇❖◇

クルチアのアパート『アークパレス』のアーチ状の白い門を出たところで、先ほどイナリと名乗った男は携帯テレホンを懐から取り出し通話を始めた。

「例の女、ｽﾊﾟﾀﾞﾘ に会わせる気がなさそうだ。 嘘をつかれたよ」

通話を続けながら、男は付近に停めてあった車に乗り込む。

「ああ、あるいは女の留守を狙ってもいい。 どのみち監視が必要だ。 よそ同業者のスカウトを排除するためにもな」

男は通話を終えて車を発進させた。