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第1章 「イケメンとの出会い~お持ち帰り」

第17話 「真摯にお願いするイケメン」

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冷静さを取り戻したクルチアは考える。

(あの子の喜びようからすると、コロリは効果が上書きされる? あの子はどうしてそんなことを知ってるの?)

ワンピ娘にはコロリ説明書の他に情報源があるのだろうか? 神さまが教えたのだろうか?

(どっちにしても...)

クルチアはハンドバッグの底に眠るコロリを取り出そうと、バッグの中に手を入れた。

(念の為に2つ持ってきてて良かった)

           ◇❖◇

だが、ハンドバッグの中でコロリを握ったところでクルチアは思いとどまった。

(あの子もコロリを2つ持って来てるかも)

だとすれば、せっかくクルチアが上書きしてもワンピ娘に上書きし返されてしまう。

クルチアは少し考えて解決策を思いついた。

(あの子に2つ目を先に使わせられれば...)

でも、どうやって?

(...ミカリくんをけしかけてみる?)

無類のコロリ好きのミカリのことだから、少しそそのかせばワンピ娘にコロリをねだるはず。 ミカリにねだられたワンピ娘はミカリの魅力に抗うことあたわず手持ちのコロリを献上するに違いない。

(なんて名案なのかしら)

ワンピ娘がコロリを隠し持っているか否かを確認すると同時に、もし持っていれば隠しコロリを使わせられる。 まさしく名案である。 ただ、この案には1つ欠点があった。

(ミカリくんにおねだりされるなんて... ハァハァ 羨まし過ぎる)

だが、そんなことを言っている場合ではない。

クルチアは仲良くお喋りするワンピ娘とミカリに向き直った。 この2人、心なしか会話がはずんでいる...? クルチアの胸中に深く黒い不安がズグりと広がる。

(もうあの子のコロリが? 急がなきゃ!)

クルチアは意を決してミカリに声をかけた。

「ねっ、ねえミカリくん...」

           ◇❖◇

ミカリに冷たい目を向けられることを半ば覚悟するクルチア。

だが、振り向いたミカリの目にはこれまでと変わらぬクルチアへの愛情が満ちていた。

「なんだい、クルチア?」

(良かった、私まだ愛されてる。 私のコロリまだ効いてる)

コロリ無しではミカリに関心すら持ってもらえない。 そのことをクルチアは良く分かっていた。

クルチアは一瞬浮かんだ不満を心の底に押し込めて、ミカリをそそのかす言葉を口にする。

「その子、ハンドバッグにコロリをもう1つ持ってるんじゃないかしら? お願いしてみたらどう? もう1つ食べさせて、って」

根拠不在のバカバカしい提案である。

だがコロリ馬鹿のミカリはあっさりひっかかった。

ミカリは瞳を輝かせてワンピ娘に向き直る。

「そのカバンの中に、まだコロリがあるの?」

ミカリはワンピ娘の小さな両手を自分の両手に抱え込み、ありったけのイケメン・ボイスで真摯にお願いをする。

「キミのコロリを、ボクに食べさせて欲しい」
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