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第1章 「イケメンとの出会い~お持ち帰り」

第2話 「若者くんはイケメン!?」

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自宅のアパートに戻ったクルチアは、シャワーを浴びて失態を洗い流した。 昨晩は仕事で徹夜し、シャワーを浴びてなくて髪がベタついていたからちょうど良かった。 むしろシャワーを浴びる良い機会になった。

クルチアはタオルで頭を拭きながら次の計画を練る。

「コロリの臭いがあんなにキツいなら...」

街中での使用は難しい。

「どうしよう。 人気《ひとけ》の無い場所にイケメンを呼び出せればいいんだけど」

だが、クルチアの知人にイケメンはいない。 見ず知らずのイケメンは呼び出そうにも連絡先がわからない。

「夜道でイケメンを待ち伏せようかしら?」

辻斬りや痴漢と同じ発想だが、クルチアにその自覚は無い。

「それともユッティーに頼んでイケメンを呼び出してもらうとか...」

ユッティーとはクルチアの親友の名である。 ユッティーもクルチアと同じく、面食いなのにイケメン相手には緊張してしまう可哀想な女の子だ。

クルチアはワンテンポ遅れて、そのことに気づく。

「あっ、ダメだ。 ユッティーも私と同じでイケメンとまともに喋れない」

         ◇❖◇❖◇❖◇

悩むうちにクルチアは睡眠不足のせいもあって眠り込んだ。

そして夢を見た。

夢に出てきたのは地味なスーツ姿の紳士。

紳士は前置きもなくクルチアに提案する。

「お前の持つコロリ、人助けに使わないか?」

「コロリをご存知なのですか?」

目前の人物にはクルチアに丁寧語を使わせる雰囲気があった。

紳士はクルチアの問いかけに軽くうなずき言葉を続ける。

「餓死しかけの若者がいてな。 あれは、もはやコロリしか食べんだろう。 コロリを持って彼のもとへ向かってくれ。 もう何日も持たんだろうから、すぐに出発することだ。 かの者はアミハマ村に住んでいる」

「アミハマ村って...」どこでしたっけ?

聞き覚えはあるが、場所は知らない。

「お前が住むエクレーヌ市から北東に30kmのところにある」

「私の市の北東って...」ド田舎だよね?

クルチアの懸念を見透かしたように紳士は言う。

「案ずるな。 鉄道は通っている」

「でも...」やだなー。 メンドくさい。

「お前が適任なのだ」

「えー」忙しいのにい。

なおもしぶるクルチア。

「そうか。 ならば、気が向いたら来てくれ」

紳士は要請を強要する風でもなく、若者の家の場所をクルチアに伝えた。

「来るなら急いでな」 そう念を押して紳士は姿を消した。

         ◇❖◇❖◇❖◇

眠りから覚めたクルチアは、今しがたの夢について考える。

「今の夢は本物なの?」

いま現在アミハマ村で一人の若者が飢え死にしつつあるのだろうか?

「あんな夢を見たの初めてだし、本物かも」

なにがしかの神が夢に出てきた可能性が濃厚だ。

「なんの神さまだったんだろう?」

やがて彼女は、とんでもないことに思い至る。

「あっ!」 なんてことかしら!

「コロリなら食べるってことは、若者くんはイケメン!?」

コロリはイケメンに対し優れた嗜好性を発揮する。 逆に言えば、コロリを欲しがるのはイケメンのみ。 コロリしか食べないほどのコロリ好きとなると、イケメン中のイケメンではあるまいか。

「あの夢が本物だとして、飢え死にしかけの若者がイケメンだとすれば...」 ここがコロリの使いどころよ!

クルチアは外出の支度を始めた。
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