2 / 38
第1章 「イケメンとの出会い~お持ち帰り」
第2話 「若者くんはイケメン!?」
しおりを挟む
自宅のアパートに戻ったクルチアは、シャワーを浴びて失態を洗い流した。 昨晩は仕事で徹夜し、シャワーを浴びてなくて髪がベタついていたからちょうど良かった。 むしろシャワーを浴びる良い機会になった。
クルチアはタオルで頭を拭きながら次の計画を練る。
「コロリの臭いがあんなにキツいなら...」
街中での使用は難しい。
「どうしよう。 人気《ひとけ》の無い場所にイケメンを呼び出せればいいんだけど」
だが、クルチアの知人にイケメンはいない。 見ず知らずのイケメンは呼び出そうにも連絡先がわからない。
「夜道でイケメンを待ち伏せようかしら?」
辻斬りや痴漢と同じ発想だが、クルチアにその自覚は無い。
「それともユッティーに頼んでイケメンを呼び出してもらうとか...」
ユッティーとはクルチアの親友の名である。 ユッティーもクルチアと同じく、面食いなのにイケメン相手には緊張してしまう可哀想な女の子だ。
クルチアはワンテンポ遅れて、そのことに気づく。
「あっ、ダメだ。 ユッティーも私と同じでイケメンとまともに喋れない」
◇❖◇❖◇❖◇
悩むうちにクルチアは睡眠不足のせいもあって眠り込んだ。
そして夢を見た。
夢に出てきたのは地味なスーツ姿の紳士。
紳士は前置きもなくクルチアに提案する。
「お前の持つコロリ、人助けに使わないか?」
「コロリをご存知なのですか?」
目前の人物にはクルチアに丁寧語を使わせる雰囲気があった。
紳士はクルチアの問いかけに軽くうなずき言葉を続ける。
「餓死しかけの若者がいてな。 あれは、もはやコロリしか食べんだろう。 コロリを持って彼のもとへ向かってくれ。 もう何日も持たんだろうから、すぐに出発することだ。 かの者はアミハマ村に住んでいる」
「アミハマ村って...」どこでしたっけ?
聞き覚えはあるが、場所は知らない。
「お前が住むエクレーヌ市から北東に30kmのところにある」
「私の市の北東って...」ド田舎だよね?
クルチアの懸念を見透かしたように紳士は言う。
「案ずるな。 鉄道は通っている」
「でも...」やだなー。 メンドくさい。
「お前が適任なのだ」
「えー」忙しいのにい。
なおもしぶるクルチア。
「そうか。 ならば、気が向いたら来てくれ」
紳士は要請を強要する風でもなく、若者の家の場所をクルチアに伝えた。
「来るなら急いでな」 そう念を押して紳士は姿を消した。
◇❖◇❖◇❖◇
眠りから覚めたクルチアは、今しがたの夢について考える。
「今の夢は本物なの?」
いま現在アミハマ村で一人の若者が飢え死にしつつあるのだろうか?
「あんな夢を見たの初めてだし、本物かも」
なにがしかの神が夢に出てきた可能性が濃厚だ。
「なんの神さまだったんだろう?」
やがて彼女は、とんでもないことに思い至る。
「あっ!」 なんてことかしら!
「コロリなら食べるってことは、若者くんはイケメン!?」
コロリはイケメンに対し優れた嗜好性を発揮する。 逆に言えば、コロリを欲しがるのはイケメンのみ。 コロリしか食べないほどのコロリ好きとなると、イケメン中のイケメンではあるまいか。
「あの夢が本物だとして、飢え死にしかけの若者がイケメンだとすれば...」 ここがコロリの使いどころよ!
クルチアは外出の支度を始めた。
クルチアはタオルで頭を拭きながら次の計画を練る。
「コロリの臭いがあんなにキツいなら...」
街中での使用は難しい。
「どうしよう。 人気《ひとけ》の無い場所にイケメンを呼び出せればいいんだけど」
だが、クルチアの知人にイケメンはいない。 見ず知らずのイケメンは呼び出そうにも連絡先がわからない。
「夜道でイケメンを待ち伏せようかしら?」
辻斬りや痴漢と同じ発想だが、クルチアにその自覚は無い。
「それともユッティーに頼んでイケメンを呼び出してもらうとか...」
ユッティーとはクルチアの親友の名である。 ユッティーもクルチアと同じく、面食いなのにイケメン相手には緊張してしまう可哀想な女の子だ。
クルチアはワンテンポ遅れて、そのことに気づく。
「あっ、ダメだ。 ユッティーも私と同じでイケメンとまともに喋れない」
◇❖◇❖◇❖◇
悩むうちにクルチアは睡眠不足のせいもあって眠り込んだ。
そして夢を見た。
夢に出てきたのは地味なスーツ姿の紳士。
紳士は前置きもなくクルチアに提案する。
「お前の持つコロリ、人助けに使わないか?」
「コロリをご存知なのですか?」
目前の人物にはクルチアに丁寧語を使わせる雰囲気があった。
紳士はクルチアの問いかけに軽くうなずき言葉を続ける。
「餓死しかけの若者がいてな。 あれは、もはやコロリしか食べんだろう。 コロリを持って彼のもとへ向かってくれ。 もう何日も持たんだろうから、すぐに出発することだ。 かの者はアミハマ村に住んでいる」
「アミハマ村って...」どこでしたっけ?
聞き覚えはあるが、場所は知らない。
「お前が住むエクレーヌ市から北東に30kmのところにある」
「私の市の北東って...」ド田舎だよね?
クルチアの懸念を見透かしたように紳士は言う。
「案ずるな。 鉄道は通っている」
「でも...」やだなー。 メンドくさい。
「お前が適任なのだ」
「えー」忙しいのにい。
なおもしぶるクルチア。
「そうか。 ならば、気が向いたら来てくれ」
紳士は要請を強要する風でもなく、若者の家の場所をクルチアに伝えた。
「来るなら急いでな」 そう念を押して紳士は姿を消した。
◇❖◇❖◇❖◇
眠りから覚めたクルチアは、今しがたの夢について考える。
「今の夢は本物なの?」
いま現在アミハマ村で一人の若者が飢え死にしつつあるのだろうか?
「あんな夢を見たの初めてだし、本物かも」
なにがしかの神が夢に出てきた可能性が濃厚だ。
「なんの神さまだったんだろう?」
やがて彼女は、とんでもないことに思い至る。
「あっ!」 なんてことかしら!
「コロリなら食べるってことは、若者くんはイケメン!?」
コロリはイケメンに対し優れた嗜好性を発揮する。 逆に言えば、コロリを欲しがるのはイケメンのみ。 コロリしか食べないほどのコロリ好きとなると、イケメン中のイケメンではあるまいか。
「あの夢が本物だとして、飢え死にしかけの若者がイケメンだとすれば...」 ここがコロリの使いどころよ!
クルチアは外出の支度を始めた。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
兄に恋した
長谷川 ゆう
恋愛
28歳さやかは、血の繋がらない兄38歳ミタカに恋をしている。
しかし、さやかには、同い年の夫と2歳の娘がいる。
兄であるミタカにも妻のエリがいる。
さやかが、7才の時に両親が離婚。母親の再婚相手の父親には、さやかより、10歳上の一人息子のミタカがいた。
お互い、3年間だけ同じ家で血の繋がらない兄妹として住みながらも好きだと感じるものの、ミタカは20歳で現在の妻エリと学生結婚して家を出る。
さやかは、大学卒業後、就職して職場の同期の石田と25歳で結婚。
実家に帰るたびに会う兄ミタカへの想いは募るが、反りのあわないミタカの妻エリとは顔を合わさない日が続き...。
※こちらの作品は、小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
主な登場人物
※石田さやか 28歳 主人公
※石田ヨウタ 28歳 さやかの夫
※石田 華 2歳 2人の娘
※佐藤ミタカ 38歳 さやかの血 の繋がらない兄
※佐藤エリ 40歳 ミタカの妻
※佐藤トヨコ さやかの実母であり、再婚相手の佐藤の息子ミタカの義理の母親
※佐藤カツヤ ミタカの父親
※土田ヨキナ ミタカの実母
※土屋トヤマ さやかの実父
※田辺トモコ 28歳 性同一性障害のキャリアウーマンであり、高校時代からのさやかの大親友
※田辺ヒカル トモコの父親
この度、青帝陛下の番になりまして
四馬㋟
恋愛
蓬莱国(ほうらいこく)を治める青帝(せいてい)は人ならざるもの、人の形をした神獣――青龍である。ゆえに不老不死で、お世継ぎを作る必要もない。それなのに私は青帝の妻にされ、后となった。望まれない后だった私は、民の反乱に乗して後宮から逃げ出そうとしたものの、夫に捕まり、殺されてしまう。と思ったら時が遡り、夫に出会う前の、四年前の自分に戻っていた。今度は間違えない、と決意した矢先、再び番(つがい)として宮城に連れ戻されてしまう。けれど状況は以前と変わっていて……。
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
こんなに遠くまできてしまいました
ナツ
恋愛
ツイてない人生を細々と送る主人公が、ある日突然異世界にトリップ。
親切な鳥人に拾われてほのぼのスローライフが始まった!と思いきや、こちらの世界もなかなかハードなようで……。
可愛いがってた少年が実は見た目通りの歳じゃなかったり、頼れる魔法使いが実は食えない嘘つきだったり、恋が成就したと思ったら死にかけたりするお話。
(以前小説家になろうで掲載していたものと同じお話です)
※完結まで毎日更新します
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる