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第13話【最終話】ご褒美。
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「聖拳奥義、光烈爆裂拳!」
僕が放った拳がセレスティンの顔面にヒット。セレスティンの顔は苦痛に歪み、やがて全身から光を放つ。
「ばかなぁ! この、おれさまがぁぁッ!」
ボンッと触手が爆裂し、セレスティンはその場に倒れる。
「セレスティン!」
僕は倒れたセレスティンに駆け寄り、抱き起す。
「あれ? ここは一体......あなたは?」
セレスティンはどうやら、記憶が混乱しているようだ。だがその体に怪物の要素は残っておらず、怪我も無い。良かった。
「私は聖女マルファ。あなたは怪物に意識を乗っ取られていたのですよ、勇者セレスティン。どこまで記憶はありますか?」
僕がそう尋ねると、セレスティンは記憶を辿るように目線を動かした。
「えっと......王都に呼ばれて......仲間を集める事になって......それから記憶がないです」
そっか。じゃあ僕やユティファ、アデルとルカの事も覚えていないんだ。
「わかりました。ではこのダンジョンを脱出したら、共に王城へ行きましょう。聖王カインド・ファルタス様が導いてくださる筈です」
「わかりました。ありがとうございます」
セレスティンは立ち上がり、戸惑いがちに様子を見ていた仲間達を見つめる。
「少しだけ、覚えています。俺は皆さんにご迷惑をおかけしましたよね。怪物に乗っ取られていたとはいえ、本当にごめんなさい」
セレスティンは深々と頭を下げた。
「まぁ操られてたなら仕方ないだろ。お前に罪はないさ。俺はアデル。鍛冶屋だ。武器の手入れは任せてくれ。また改めてよろしくな」
「アデルさん。はい、よろしくお願いします」
アデルとガッチリ握手するセレスティン。
「私はルカ。医師です。怪我や病気、毒の治療もお任せください」
「ルカさん。頼りにしてます」
ルカは優しくセレスティンと握手。
「私はユティファ。冒険者よ。罠の解除や、攻撃の援護は任せて。ところであなたと私の関係......覚えてる?」
「ごめんなさい。覚えてないんです。でも......あなたを見ていると、胸が締め付けられる思いです。これはきっと、恋愛感情......でしょうか?」
「ふふふ、そうかもね」
ユティファはそっと、セレスティンの手を握った。彼を許す事にしたのだろう。
僕らは団結して、ダンジョンを脱出した。そして王城に行き、聖王カインド・ファルタス様に全てを報告した。
「なるほどな。セレスティンからは勇者の資格を剥奪する予定だったが、話が変わって来たな。では改めて、勇者セレスティンよ、仲間と共に怪物を退治せよ。マルコに変わる新たな探索士は、こちらで探しておこう」
「はッ。かしこまりました。怪物退治の任、仲間共々、謹んでお受け致します」
セレスティンとアデル、ルカの三人はうやうやしく跪いて頭を下げた。
「さて、聖女マルファよ。この度はご苦労であったな。褒美として報奨金と、一週間程休暇をやろう。その間は私とセレスティン達で人々の困りごとにも対処する。タラスクと共に、ゆっくり休むがいい」
「本当かよ聖王! なかなか話がわかるじゃねーか! やったなマルファ!」
「こら! 聖王様になんて口きくんだ! 失礼だろ!」
僕の少年口調に目を丸くするセレスティン。他のみんなは僕の正体がマルコだと知っているので驚かない。
「聖王様。ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、少し休ませていただきます。タラスクも頑張ってくれたので、たっぷりご褒美を与えたいと思います」
僕はそう言って、タラスクにウインクした。するとタラスクは珍しく顔を赤くして、照れくさそうに頭をポリポリと掻いた。
邪神ケイオスの企みは、まだ続くだろう。聖王様、そして勇者と協力してケイオスを封印するまで、真に心が休まる事はない。
だけど今は、束の間の安らぎを満喫しよう。そして自分の気持ちに正直になろう。
愛するタラスクの手を握り、僕はそっと彼に寄り添ったのだった。
僕が放った拳がセレスティンの顔面にヒット。セレスティンの顔は苦痛に歪み、やがて全身から光を放つ。
「ばかなぁ! この、おれさまがぁぁッ!」
ボンッと触手が爆裂し、セレスティンはその場に倒れる。
「セレスティン!」
僕は倒れたセレスティンに駆け寄り、抱き起す。
「あれ? ここは一体......あなたは?」
セレスティンはどうやら、記憶が混乱しているようだ。だがその体に怪物の要素は残っておらず、怪我も無い。良かった。
「私は聖女マルファ。あなたは怪物に意識を乗っ取られていたのですよ、勇者セレスティン。どこまで記憶はありますか?」
僕がそう尋ねると、セレスティンは記憶を辿るように目線を動かした。
「えっと......王都に呼ばれて......仲間を集める事になって......それから記憶がないです」
そっか。じゃあ僕やユティファ、アデルとルカの事も覚えていないんだ。
「わかりました。ではこのダンジョンを脱出したら、共に王城へ行きましょう。聖王カインド・ファルタス様が導いてくださる筈です」
「わかりました。ありがとうございます」
セレスティンは立ち上がり、戸惑いがちに様子を見ていた仲間達を見つめる。
「少しだけ、覚えています。俺は皆さんにご迷惑をおかけしましたよね。怪物に乗っ取られていたとはいえ、本当にごめんなさい」
セレスティンは深々と頭を下げた。
「まぁ操られてたなら仕方ないだろ。お前に罪はないさ。俺はアデル。鍛冶屋だ。武器の手入れは任せてくれ。また改めてよろしくな」
「アデルさん。はい、よろしくお願いします」
アデルとガッチリ握手するセレスティン。
「私はルカ。医師です。怪我や病気、毒の治療もお任せください」
「ルカさん。頼りにしてます」
ルカは優しくセレスティンと握手。
「私はユティファ。冒険者よ。罠の解除や、攻撃の援護は任せて。ところであなたと私の関係......覚えてる?」
「ごめんなさい。覚えてないんです。でも......あなたを見ていると、胸が締め付けられる思いです。これはきっと、恋愛感情......でしょうか?」
「ふふふ、そうかもね」
ユティファはそっと、セレスティンの手を握った。彼を許す事にしたのだろう。
僕らは団結して、ダンジョンを脱出した。そして王城に行き、聖王カインド・ファルタス様に全てを報告した。
「なるほどな。セレスティンからは勇者の資格を剥奪する予定だったが、話が変わって来たな。では改めて、勇者セレスティンよ、仲間と共に怪物を退治せよ。マルコに変わる新たな探索士は、こちらで探しておこう」
「はッ。かしこまりました。怪物退治の任、仲間共々、謹んでお受け致します」
セレスティンとアデル、ルカの三人はうやうやしく跪いて頭を下げた。
「さて、聖女マルファよ。この度はご苦労であったな。褒美として報奨金と、一週間程休暇をやろう。その間は私とセレスティン達で人々の困りごとにも対処する。タラスクと共に、ゆっくり休むがいい」
「本当かよ聖王! なかなか話がわかるじゃねーか! やったなマルファ!」
「こら! 聖王様になんて口きくんだ! 失礼だろ!」
僕の少年口調に目を丸くするセレスティン。他のみんなは僕の正体がマルコだと知っているので驚かない。
「聖王様。ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、少し休ませていただきます。タラスクも頑張ってくれたので、たっぷりご褒美を与えたいと思います」
僕はそう言って、タラスクにウインクした。するとタラスクは珍しく顔を赤くして、照れくさそうに頭をポリポリと掻いた。
邪神ケイオスの企みは、まだ続くだろう。聖王様、そして勇者と協力してケイオスを封印するまで、真に心が休まる事はない。
だけど今は、束の間の安らぎを満喫しよう。そして自分の気持ちに正直になろう。
愛するタラスクの手を握り、僕はそっと彼に寄り添ったのだった。
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