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第11話 銀杏ちゃん、みんなのアドバイスを聞く。
しおりを挟む(銀杏様! 聞こえますか!?)
ん?この声......木蓮か?頭の中に直接響いてくる!
(そうです、俺です! 式神に手を触れる事で、遠く離れた相手と、思念で会話出来るみたいです!)
おお、そりゃすげぇな!
(え? 銀杏様、なんか口調が男っぽいですね。一体どうしたんですか?)
ん!?い、いや、どうもせんよ。ちょっと物ノ怪と決闘する事になってのう。どうすれば良いか、悩んでおったのじゃ。わしは人の力を引き出すのは得意じゃが、わし自身はとってもか弱い女子(おなご)にすぎんのでな。
(ええ!? 決闘!? それは大変ですね。俺たちも加勢に行きます!)
いや、それはまずい。一対一の勝負、と言う約束で受けたのでな。わしが負けると村は滅びる。何が何でも勝たねばならぬのじゃ。
(そうでしたか......。俺たちを捕まえてた物ノ怪は、隙を見て俺が倒しました。蔵に閉じ込められていますが、脱出は可能です)
そうか。それを聞いて安心したぞ。
(はい。しかし加勢出来ないとなれば、そうですね......ここから助言させてください。決闘は素手ですか?)
うむ、そうじゃ。敵は狸の物ノ怪なのじゃが、えらく頑丈でな。殴った手の方が怪我をしてしまうほどじゃ。
(なるほど。なら投げ技の方が有効かも知れませんね。日凛、銀杏様に技を教えて差し上げろ)
(はぁい。銀杏ちゃん、今から僕が言う通りにやってみてね)
うむ。よろしく頼む。
俺は日凛の言う通りに動き始めた。敵の動きは亜水が心眼で見ているようで、ドラザエモンの動きに対応するように的確なアドバイスが飛んでくる。
「おのれちょこまかと! まるでネズミだな!」
日凛の声に従って、ドラザエモンの攻撃を紙一重でかわして行く俺。
(今だよ銀杏ちゃん! 相手の足を思いっきり持ち上げて!)
俺は言われた通りに奴の懐に飛び込み、両腕で抱えるように奴のふくらはぎを持ち上げる。
ドラザエモンは巨漢だ。普通なら持ちあがらない。だが今の俺は累火の祈祷でパワーアップしている。
「どっせぇぇぇい!」
思いっきり両腕を上にあげる。ドラザエモンは、無様にひっくり返った!やったぜ!
「ぐぬぬ......おのれ娘っ子ぉぉ!」
あれ? 全然戦意喪失してないぞ?それどころか、なんか怒らせてしまったみたいだ。
どうしたものかのう......。
(大丈夫よ、銀杏様。そろそろ私の薬が効いてくる頃だわ。その狸さん、私の事を気に入ったみたいでね。一緒に料理を作ってくれって言うもんだから、美味しいお鍋の作り方を教えてあげたんだけど......その時にこっそり薬、入れておいたの」
葉月か。一体何の薬を入れたのじゃ?
(うふふ。お腹がすっごく痛くなる薬、です♡)
葉月がそう言った直後、物ノ怪たちが一斉に苦しみだす。
「は、はらがぁ! 腹がいてぇぇ!」
「便所! 便所はどこだぁぁ!」
蜘蛛の子を散らすように走り去っていく物ノ怪たち。銀牙は意外にも、面白そうにその様子を眺めている。
ドラザエモンも例外ではなく、顔を真っ青にしてうずくまっている。
「す、少しまて、娘っ子。 一時休戦だ。ちょっと便所に......」
「ん?何を言っておる。この場を離れると言うなら、負けと言う事。負けを認めるか、ドラザエモン」
俺は青ざめるドラザエモンをじっと見る。めちゃくちゃ辛そうだ。わかる。スッゲーわかるよその気持ち。
銀牙を見ると、コクリと頷く。つまり、この場を離れる事は負け、そう言うルールでいい、と言う事だ。
「わ、わかった。時間がないから一撃で決めるぞ。まず娘っ子、おまえが俺を攻撃しろ。避けずに食らってやる。その後は俺がおまえを攻撃する。避けるのは、なしだ」
なるほど。それなら確かにすぐ決着がつく。もしも、ドラザエモンを一撃で仕留める事が出来れば、の話だが......。なんか弱点とかないかな。
(銀杏様、私の心眼によりますと、どうやら奴の弱点は、ふぐりのようです)
亜水か。ふぐり、とな?それはなんじゃ。
(き、金玉、でございます)
おお、なるほどのう。なんだか妙に納得じゃ。
よし。ならば話は早い。わしの全力の蹴りで、奴の金玉を蹴り上げてやるわい!
(銀杏様、御武運を!)
うむ、任せておけい!
俺はドラザエモンの金玉めがけ、助走する。元男としては心苦しいが、これも村を救う為だ。悪く思うなよドラザエモン!
「むっ、貴様まさか......俺の金玉を!」
「そのまさかじゃ! てぇぇぇーい!」
ドッギャーン!と、またも脳内擬音が響く。
「うごぉぉぉ!」
ドラザエモンは白目を剥き、口からブクブクと泡を吹く。こりゃ決まりだろ。勝ったぜ。
「や、やばい! 逃げろ銀杏!」
銀牙が青い顔をして、俺に警告する。いつになく真剣な表情だ。
「よりにもよって、ドラザエモンの金玉蹴っちまうとは! 確かにそこはドラザエモンの弱点だ! だけどぶっ倒れるまで時間がかかる上に、意識失うまで手当たり次第に暴れ回るぞ! そうなったら俺にも止められねぇ! だから早く逃げろ!」
「うごぉぉぉ!」
うわわ、ヤベェ!ドラザエモンは泡を撒き散らしながら暴れまわっている。 まだ周囲に残っていた物ノ怪たちが、次々と吹き飛ばされて行く!
「に、逃げろと言っても、わしは足が遅......」
とりあえず後ずさりして逃げようとする俺。
だけど、遅かった。気づいた時には、景色がぐるぐる回っていた。
殴られた。そこで意識が......途切れ......。
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