【完結】のじゃロリ狐娘に転生した俺。守り神として村人を英雄覚醒させ、邪悪な帝にざまぁします。

アキ・スマイリー

文字の大きさ
上 下
10 / 42

第10話 銀杏ちゃん、ガチンコ勝負する。

しおりを挟む
    餌場にたむろしていた物ノ怪たちが場所を開け、俺とドラザエモンはそこで向かいあった。

 周囲を囲む物ノ怪たち。いわばここは、即席の土俵のようなものだ。

「うぇへへ、可愛い娘っ子だなぁ」

「ああ、嫁にしてぇ」

 物ノ怪たちが、好き勝手に俺を品評する。俺は体は女の子だけど、心は男なんだ。嫁とか可愛いとか、勘弁してくれよ......。まぁ、確かに可愛いけどな!

「グハハハ、娘っ子! 俺が相手とは運が悪かったな! 俺は銀牙様の右腕! 物ノ怪の中でも一、二を争う怪力の持ち主だ。おまえに勝ち目はないぞ。グハハハ!」

 得意そうに笑うドラザエモン。俺に強さを誇示したいのか、ドスンドスンと四股を踏み始めた。

 うおおお!金玉、めっちゃ揺れてるぅぅ!!!

「怖くて声も出せんか? グァーッハハハ!」

 ドラザエモンが何か言ってるが、今の俺はそれどころじゃない。奴の金玉が気になりすぎる。四股をやめた後も揺れている。風もないのに、ぶらぶらしている。

「おい、ドラザエモン。わかってると思うが、銀杏を傷つけるなよ。勝てそうな感じで負けろ。いいな」

「うひぃっ! かしこまりぃ!」

 銀牙の指示に、ビクンと震えて身をすくませるドラザエモン。よほどあいつが怖いみたいだ。銀牙の声は、俺とドラザエモンにしか聞こえないくらいの声量である。やっぱりこっちに勝たせてくれそうな雰囲気だ。

「銀杏様、頑張ってー!」

 後ろを振り返ると、累火が一生懸命「大幣(おおぬさ)」を振って応援してくれている。

 おおお!力、みなぎってきたぁ!

「いくぞ! ドラザエモン!」

 俺はドラザエモンに向かって助走した。俺の身長は小さいから、ジャンプして顔面にパンチを叩き込みたい。

 体が軽い。まるで風になったようだ。

「とうっ!」

 俺は奴の二歩手前くらいで跳躍した。俺の体はドラザエモンの頭上よりも高く上がり、一瞬奴を見下ろした。

 すごい。これが累火の「祈祷」の力。あの子だけでも残っていてくれて、本当に良かった。

 もしかしたら、このまま勝ちに持っていけるか!? 

 なんて事を一瞬で考えつつ、拳を振りかぶる俺。

 ドラザエモンは何を思ったのか、左頬を俺に差し出す。ここを殴れと言わんばかりだ。

 なめやがってぇ! 泣かしたる! 

 俺はドラザエモンの誘いに乗り、右のストレートを奴の左頬に叩き込んだ。

 ドッギャーン!!と俺の頭の中で擬音が鳴り響く。だが実際には「ぺち」と音がしただけだ。そしてもんどりうって倒れこむ......俺!

「いたーい! 骨折れたー!」

 俺は泣きべそをかきながら座り込み、叫んだ。右腕がプラーンと垂れ下がり、力が入らない。これはマジで逝っちまったかも知れない。なんて頑丈な奴なんだ。まるで岩みたいだ。

「グハハハ! どうした娘っ子! もう仕舞いかぁ?」

 ポンポンと陽気に腹鼓はらつづみを打つドラザエモン。満面の笑みだ。だがその笑顔は数秒で消えた。

「おいおいおいおいおいおい、ドラザエモーン。俺、言ったよな。銀杏に怪我させたらブチ殺すって。なぁ。言ったよ、なぁぁぁ!」

 群衆の中から飛び出し、一瞬でドラザエモンの隣に来た銀牙。奴の耳をグイグイと引っ張る。銀牙はそんなに身長が高い方ではないが、なんと宙に浮いている。

「ぎょえええ! しゅ、しゅいましぇぇぇん!で、でもあれは、娘っ子が勝手に! 俺は何もしてま、ぎょえええ!」

 言いかけるドラザエモンの言葉を遮るように、さらに耳を引っ張る銀牙。

「オメェはバカみてぇに頑丈なんだからよ、避けるとか色々方法はあんだろが。今回は見逃してやるが、次やったらマジでバラバラにして、狸鍋にすっから覚悟しろ」

「ぎょええええ!  狸鍋! はいです、はいですぅ!頑張ります! ドラザエモン頑張りますから! 耳、離しておくんなましぃぃ!!」

 鼻水とよだれを垂らして泣き叫ぶドラザエモン。敵ながら哀れだ。

「よし。んじゃ、頑張れ」

「うへぇぇ」

 銀牙はようやくドラザエモンの耳を離すと、俺の方へスイーッと飛んできた。

「腕、見せてみろ。治してやる」

「......わしは敵じゃぞ。いいのか?」

 俺は目をウルウルさせながら、銀牙を睨む。

「まぁ、立場上はそうだけどさ。親友じゃねぇか。お前が傷ついてんの、俺はほっとけねぇんだ」

 そういや生前も、怪我の手当てしてくれた事あったっけ。相変わらず優しいな。

「すまぬ。では、お願いするぞよ」

 俺は右腕を差し出した。銀牙が手をかざすと、みるみる痛みが引いていく。

「動く......。それにもう、痛くない」

「へっ、あたりめーだ。そう言う術をかけたんだからな。ほら、治ったんなら行った行った」

 銀牙は俺の頭をポンポンと軽く叩き、ドラザエモンを指差す。ふと見上げると、銀牙は八重歯を見せて微笑んでいた。

 八重歯、可愛いなこいつ。それに結構かっこいい顔してるよな......。優しいし。

 ん!? おいいい!どうした俺!くっそー! ちょっとだけキュンとしちまったじゃねーか!乙女か俺は!ふざけんな俺!

 っと。気をとりなおして行くか。でも、一体どうすりゃいいんだ?

 銀牙がフォローしてくれるから、俺が怪我をしないのはわかった。でも他の物ノ怪も納得するような勝負の付け方をしなきゃならない。つまりドラザエモンの戦意を喪失させる。その為には、何か作戦を練らなきゃならんだろう。

 さて、どうしたもんか......。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!

ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません? せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」 不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。 実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。 あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね? なのに周りの反応は正反対! なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。 勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

処理中です...