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第2部 令嬢魔王リーファ
第17話 喋る短剣。
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ズグーラは傷を再生出来る。彼を傷つけるのは少し心が痛むけど、治ると思えばいくらか気持ちが軽くなった。
巨人を戦闘不能まで追い込むのは、なかなか大変だ。私はサラスレイの軽やかな動きを真似し、ズグーラの攻撃をかわし続けた。かわしながら、彼の足首などを斬って動きを封じようと試みる。だが、やはりすぐに傷は治ってしまう。
このままではらちがあかない。何か別の方法を考える必要がある。ファミリアの中で攻撃に長けているのは アルダラインと、もう一人だけだ。だけど彼らの力をもってしても、ズグーラの再生能力を上回るのは難しい......と思う。たぶん。
私が頑張るしかない。彼らの主として!
「それでこそ我が娘だ! リーファ!」
短剣が感心したように叫んだ。そう、この短剣は喋る。鞘から解き放たれている間だけ、意志を持って喋るのだ。おまけに私の心を読んでしまうらしい。
「心読まないでよ、ミリア母さん」
短剣には、なんと実の母である前魔王の魂が宿っていた。先程から私に、あれこれアドバイスをくれる。大人にメタモルフォーゼ出来たのも、ミリア母さんのお陰だ。
「言い忘れていたが、メタモルフォーゼすれば、【ドレイン・ライフ】の威力と範囲が上がる。あのデカブツ相手でも充分通用するぞ」
「それ言い忘れちゃダメなやつ! でもありがとう、教えてくれて!」
いい事聞いちゃった! これでズグーラをやっつけられる!
ズグーラもちょこまか動き回る私に、しびれを切らしたようだ。
恐ろしい雄叫びをあげて、狂ったように地面を殴り始めた。凄まじい地響きに、校舎が崩壊し始める。
急いでつけなきゃ。決着を!
メフィストは空飛ぶ絨毯に乗って、空中を逃げ回っている。今はあいつに構っている暇はない。私は崩壊しかかっている校舎の壁を駆け上がった。
そして空中へと飛び出す。ズグーラが私を見つけ、拳を振りかぶる。あの大きな拳の直撃を食らったら、私の小さな体はタダではすまないだろう。だが、食らったりはしない!
「ドレイン・ライフ・オーバードライブ!」
「吸い取る」力を右拳に乗せ、思いっきり突き出す。見に見えない衝撃波のようなものが、ズグーラのほっぺたをブルブルと揺らした。
それとほぼ同時に、ズグーラは肩を落とし、がくりと膝を前のめりに倒れた。
ドズゥゥゥンッと轟音が鳴り響き、土埃が巻き起こる。
ついにズグーラは倒れた。その膨大な量の生命力は、どうにか吸い取る事が出来た。
ズグーラの記憶が、流れ込んでくる。彼の精神は、まるで赤ん坊のようだった。メフィストを父親だと思っている。父親の役に立とうと、頑張っていたのだ。
私は最低限の生命力だけを、ズグーラに返した。この程度なら、もう暴れたりは出来ないだろう。私が戻さない限り、魔術での回復は出来ない。
私はズグーラの背中に降り立ち、絨毯に乗って飛び回っているメフィストに向かって叫んだ。
「私は絶対にあなたのお嫁さんになんか、ならない! もう諦めるのね! ズグーラを連れて、大人しく帰って!」
あれほど自信を持って戦わせたズグーラが私に負け、奴はへこんでいる筈だ。追い返すなら今がチャンスだろう。本当はやっつけてやりたいけど、もう私の生命力許容量は満タンに近い。もっと成長しないと、メフィストの生命力まで吸い取る余裕はない。
「はっはっは! なかなか面白い余興だったぞ! 今回は私の負けという事にしておいてやる! だが、私は決してお前の事を諦めんぞ、リーファ! さらばだ!」
メフィストが指をパチンと鳴らすと、ズグーラの姿がスーッと消えた。
メフィストはぐるーっと絨毯で旋回しながら私に手を振り、笑いながら飛び去っていった。
巨人を戦闘不能まで追い込むのは、なかなか大変だ。私はサラスレイの軽やかな動きを真似し、ズグーラの攻撃をかわし続けた。かわしながら、彼の足首などを斬って動きを封じようと試みる。だが、やはりすぐに傷は治ってしまう。
このままではらちがあかない。何か別の方法を考える必要がある。ファミリアの中で攻撃に長けているのは アルダラインと、もう一人だけだ。だけど彼らの力をもってしても、ズグーラの再生能力を上回るのは難しい......と思う。たぶん。
私が頑張るしかない。彼らの主として!
「それでこそ我が娘だ! リーファ!」
短剣が感心したように叫んだ。そう、この短剣は喋る。鞘から解き放たれている間だけ、意志を持って喋るのだ。おまけに私の心を読んでしまうらしい。
「心読まないでよ、ミリア母さん」
短剣には、なんと実の母である前魔王の魂が宿っていた。先程から私に、あれこれアドバイスをくれる。大人にメタモルフォーゼ出来たのも、ミリア母さんのお陰だ。
「言い忘れていたが、メタモルフォーゼすれば、【ドレイン・ライフ】の威力と範囲が上がる。あのデカブツ相手でも充分通用するぞ」
「それ言い忘れちゃダメなやつ! でもありがとう、教えてくれて!」
いい事聞いちゃった! これでズグーラをやっつけられる!
ズグーラもちょこまか動き回る私に、しびれを切らしたようだ。
恐ろしい雄叫びをあげて、狂ったように地面を殴り始めた。凄まじい地響きに、校舎が崩壊し始める。
急いでつけなきゃ。決着を!
メフィストは空飛ぶ絨毯に乗って、空中を逃げ回っている。今はあいつに構っている暇はない。私は崩壊しかかっている校舎の壁を駆け上がった。
そして空中へと飛び出す。ズグーラが私を見つけ、拳を振りかぶる。あの大きな拳の直撃を食らったら、私の小さな体はタダではすまないだろう。だが、食らったりはしない!
「ドレイン・ライフ・オーバードライブ!」
「吸い取る」力を右拳に乗せ、思いっきり突き出す。見に見えない衝撃波のようなものが、ズグーラのほっぺたをブルブルと揺らした。
それとほぼ同時に、ズグーラは肩を落とし、がくりと膝を前のめりに倒れた。
ドズゥゥゥンッと轟音が鳴り響き、土埃が巻き起こる。
ついにズグーラは倒れた。その膨大な量の生命力は、どうにか吸い取る事が出来た。
ズグーラの記憶が、流れ込んでくる。彼の精神は、まるで赤ん坊のようだった。メフィストを父親だと思っている。父親の役に立とうと、頑張っていたのだ。
私は最低限の生命力だけを、ズグーラに返した。この程度なら、もう暴れたりは出来ないだろう。私が戻さない限り、魔術での回復は出来ない。
私はズグーラの背中に降り立ち、絨毯に乗って飛び回っているメフィストに向かって叫んだ。
「私は絶対にあなたのお嫁さんになんか、ならない! もう諦めるのね! ズグーラを連れて、大人しく帰って!」
あれほど自信を持って戦わせたズグーラが私に負け、奴はへこんでいる筈だ。追い返すなら今がチャンスだろう。本当はやっつけてやりたいけど、もう私の生命力許容量は満タンに近い。もっと成長しないと、メフィストの生命力まで吸い取る余裕はない。
「はっはっは! なかなか面白い余興だったぞ! 今回は私の負けという事にしておいてやる! だが、私は決してお前の事を諦めんぞ、リーファ! さらばだ!」
メフィストが指をパチンと鳴らすと、ズグーラの姿がスーッと消えた。
メフィストはぐるーっと絨毯で旋回しながら私に手を振り、笑いながら飛び去っていった。
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