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第2部 令嬢魔王リーファ
第14話 ナースバル君。
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「ああーっ! いたな! 魔王の娘! お前のせいでこんな事になったんだぞ!」
すぐそばの教室から、少年の声がする。半壊して開けっ放しになっている扉の向こうから、私を指差す男の子。
「ナースバル君! 家に帰らなかったの!?」
私は彼の名前を呼んだ。ナースバル君は私のクラスメイト。この教室は、私たち七年生のクラスだ。七年生は今日はクラスが休みになって、全員が下校したはずだ。
「忘れ物を取りに来たんだよ! そしたらこのありさまだ。あの気味が悪くて臭い怪物に、『お前は魔王の娘か?』って聞かれた! 僕が女に見えるってのか? ふざけた奴だ! だけど僕はピンときたね。ああ、きっとこれは、リーファの事だってね」
魔王の娘。そう。怪物たちが探していたのは私だった。私は全身から力が抜けて、倒れてしまいそうだった。
「ごめん。それは確かに私だ。怪物は私を探してたんだ。怖い思いをさせて、ごめんね」
私は頭を下げて謝った。
「謝ったって、学校は元に戻らないぞ! お前さえあいつらの元へ行けば、全部丸く収まるんだ! だから言ってやったのさ! 魔王の娘はこの学校の生徒ですってね! 名前はリーファ! 勇者の娘として、育てられてますって!」
ナースバル君は、「ザマァみろ!」と言って笑った。そう、彼の情報によりオークは角笛を吹いた。主人を呼ぶ為に。
「ナースバル君、巻き添えを食わないうちに、早く家に帰った方がいいよ。もうすぐここには、恐ろしい『魔人』がやってくる。彼の目的は私だけど、人間の命を奪う事に、なんのためらいもない奴なんだ。見つからないうちに逃げて」
オークの記憶で見た、怪物たちの統率者。彼は、アルダラインさんの記憶にも度々登場している。そう、前魔王が最も信頼し、そして裏切られた人物。
「はぁ? どうしてお前にそんな事がわかるんだよ。あー、そうか、お前魔王の娘なんだもんな! 魔人とも仲良しって訳だ! ハッ! なんでお前みたいなのが、人間の学校に通ってんだよ! 何が勇者の娘だ! 今までよくも騙してくれたな!」
ナースバル君の言葉に、私の心はズタズタに切り裂かれた。彼とはずっと仲良しだった。少なくとも、私はそう思っていた。私が悪いのはわかってる。だってジコン君の生命力を奪ってしまったのだから。
だけど、こんなにも人の態度は変わるものなんだ。自分とは異質なものに、人は恐怖と嫌悪を抱く。
だけど......それでも私は......。
「ナースバル君! 危ない!」
教室の窓を突き破って入ってくる、巨大な手。私はナースバル君を突き飛ばした。手はナースバル君を掴みそこねたが、さらに追ってくる。
「うわあああっ! なんだこれ!」
「下がってナースバル君! 」
私は前魔王ミリアから授かった短剣を、スラリと抜き放った。手だけでこんなに大きいんじゃ、【ドレイン・ライフ】を使っても効果は期待出来ない。
襲いかかる巨大な手。私は素早く斬りつけ、巨大な指たちを全部切り落とした。この短剣、すごい切れ味だ。
それにサラスレイの【加速】の魔術効果は、幸いにもまだ続いている。なら、今がこの短剣を使う時だ。友達を守る時なんだ!
「教室から出て、出口まで走って! こいつは私がやっつける!私の剣術の腕前は知ってるでしょ!」
私の剣術の成績は、クラスでトップだ。他はからっきしだけど。木刀以外を使うのは初めてだったが、意外となんとかなるものだ。
「ああ、知ってるさ! それにそいつらとグルじゃないって事は、良くわかった! 疑ってごめん!」
ナースバル君が私に謝っている間に、巨大な指たちがまた生えてきた。まるでトカゲの尻尾みたいだ。
「気にしないで! 私は友達を守りたいだけ! そして学校は必ず元どおりにする! だから今は逃げて!」
「わかった!」
ナースバル君は教室を飛び出し、駆けていった。だけど良く考えたら、この巨大な手以外にも敵がいるかも知れない。私は頼れるファミリアを、再び呼ぶ事にした。
すぐそばの教室から、少年の声がする。半壊して開けっ放しになっている扉の向こうから、私を指差す男の子。
「ナースバル君! 家に帰らなかったの!?」
私は彼の名前を呼んだ。ナースバル君は私のクラスメイト。この教室は、私たち七年生のクラスだ。七年生は今日はクラスが休みになって、全員が下校したはずだ。
「忘れ物を取りに来たんだよ! そしたらこのありさまだ。あの気味が悪くて臭い怪物に、『お前は魔王の娘か?』って聞かれた! 僕が女に見えるってのか? ふざけた奴だ! だけど僕はピンときたね。ああ、きっとこれは、リーファの事だってね」
魔王の娘。そう。怪物たちが探していたのは私だった。私は全身から力が抜けて、倒れてしまいそうだった。
「ごめん。それは確かに私だ。怪物は私を探してたんだ。怖い思いをさせて、ごめんね」
私は頭を下げて謝った。
「謝ったって、学校は元に戻らないぞ! お前さえあいつらの元へ行けば、全部丸く収まるんだ! だから言ってやったのさ! 魔王の娘はこの学校の生徒ですってね! 名前はリーファ! 勇者の娘として、育てられてますって!」
ナースバル君は、「ザマァみろ!」と言って笑った。そう、彼の情報によりオークは角笛を吹いた。主人を呼ぶ為に。
「ナースバル君、巻き添えを食わないうちに、早く家に帰った方がいいよ。もうすぐここには、恐ろしい『魔人』がやってくる。彼の目的は私だけど、人間の命を奪う事に、なんのためらいもない奴なんだ。見つからないうちに逃げて」
オークの記憶で見た、怪物たちの統率者。彼は、アルダラインさんの記憶にも度々登場している。そう、前魔王が最も信頼し、そして裏切られた人物。
「はぁ? どうしてお前にそんな事がわかるんだよ。あー、そうか、お前魔王の娘なんだもんな! 魔人とも仲良しって訳だ! ハッ! なんでお前みたいなのが、人間の学校に通ってんだよ! 何が勇者の娘だ! 今までよくも騙してくれたな!」
ナースバル君の言葉に、私の心はズタズタに切り裂かれた。彼とはずっと仲良しだった。少なくとも、私はそう思っていた。私が悪いのはわかってる。だってジコン君の生命力を奪ってしまったのだから。
だけど、こんなにも人の態度は変わるものなんだ。自分とは異質なものに、人は恐怖と嫌悪を抱く。
だけど......それでも私は......。
「ナースバル君! 危ない!」
教室の窓を突き破って入ってくる、巨大な手。私はナースバル君を突き飛ばした。手はナースバル君を掴みそこねたが、さらに追ってくる。
「うわあああっ! なんだこれ!」
「下がってナースバル君! 」
私は前魔王ミリアから授かった短剣を、スラリと抜き放った。手だけでこんなに大きいんじゃ、【ドレイン・ライフ】を使っても効果は期待出来ない。
襲いかかる巨大な手。私は素早く斬りつけ、巨大な指たちを全部切り落とした。この短剣、すごい切れ味だ。
それにサラスレイの【加速】の魔術効果は、幸いにもまだ続いている。なら、今がこの短剣を使う時だ。友達を守る時なんだ!
「教室から出て、出口まで走って! こいつは私がやっつける!私の剣術の腕前は知ってるでしょ!」
私の剣術の成績は、クラスでトップだ。他はからっきしだけど。木刀以外を使うのは初めてだったが、意外となんとかなるものだ。
「ああ、知ってるさ! それにそいつらとグルじゃないって事は、良くわかった! 疑ってごめん!」
ナースバル君が私に謝っている間に、巨大な指たちがまた生えてきた。まるでトカゲの尻尾みたいだ。
「気にしないで! 私は友達を守りたいだけ! そして学校は必ず元どおりにする! だから今は逃げて!」
「わかった!」
ナースバル君は教室を飛び出し、駆けていった。だけど良く考えたら、この巨大な手以外にも敵がいるかも知れない。私は頼れるファミリアを、再び呼ぶ事にした。
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