すれ違う星の形

第1章 相棒の始まり

08話「初めての休日」

　休日の朝、透也は駅の改札前に立っていた。
　普段なら家で静かに過ごす彼が、こうして人と出かけるのは珍しいことだった。

「映画か……大丈夫かな」

　少し落ち着かない気持ちでスマホを確認していると、少し離れたところから天城が現れた。

「お待たせ、真柴くん！」

　天城はラフな私服姿で軽やかに手を振って近づいてきた。透也は思わずその姿に目を止める。普段のビジネススーツ姿とは違う親しみやすい雰囲気に、一瞬見慣れない感覚を覚える。

「あはは、そんなに構えなくてもいいよ。今日は楽しもう」

　天城が笑顔でそう言うと、透也の心も少しずつ和らいでいく。


「真柴くん、その服、結構似合ってるね」

　天城がさりげなく褒めると、透也は少し戸惑ったように視線を落とした。

「ありがとうございます……特に気を使ったわけではないんですけど」
「いやいや、センスあると思うよ。さすがデザイナーって感じ！」

　透也は照れくさそうに頬を掻きながら、わずかに微笑んだ。


§

　二人は映画館に到着し、天城が選んでいた話題の映画を観ることにした。

「どの席がいい？」

「えっと……端の方がいいかもしれません」
「了解、端っこの席でのんびり見よう」

　映画が始まり、館内が暗くなると、二人の間には自然な静寂が広がった。
　画面に集中しながらも、時折天城が透也の方を伺うように目を向ける。透也が小さく笑っているのを見つけると、天城は心の中でホッとした。


　映画が終わり、二人はカフェに立ち寄った。
　注文を済ませ、静かな店内でお互いに向き合いながら、自然と仕事の話題になる。

「最近のプロジェクト、大変だったけど、君がいて助かったよ」

　天城が素直な気持ちを伝えると、透也は一瞬戸惑いながらも小さく頷いた。

「僕も……天城さんがいたから、何とか乗り切れました」

　天城は少し驚いたように目を見開いたが、すぐに嬉しそうに笑った。

「それ、初めて言ってくれたね」
「……」


§

　帰り道、二人はゆっくりと歩きながら映画の感想を語り合った。天城がふと呟く。

「今日は楽しかった。またどこか行こうね」

　透也は少し照れたように視線を落としながら、けれど心からの笑顔で答えた。

「……はい、ぜひ」

　駅の改札の前で別れ際、天城が透也の肩を軽く叩いた。

「じゃあ、また月曜に。楽しみにしてるよ」
「はい……僕も楽しみです」

　透也は少し驚きながらも、その言葉に素直に頷いた。