すれ違う星の形

凪玖海くみ

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第1章 相棒の始まり

03話「小さな歩み寄り」

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 透也と天城の関係は、どこかギクシャクしたまま数日が過ぎた。

 互いの感情がすれ違ったまま仕事を進める中、透也は黙々とデザインの修正を続け、天城はクライアントとの連絡を取りながらプロジェクトの進行を急ぐ。二人は言葉を交わすことが必要最低限になり、どちらも心のどこかで、相手に歩み寄るきっかけを見つけられないままでいた。

 その日の午後、天城がクライアントとの電話を終えて透也の席に戻ってきた。

「デザインの最終確認が明日までに欲しいって。あと、細かいところは任せるってさ」

 透也は軽く頷くだけで返事をした。
 天城の言葉がどこか楽しげに聞こえ、透也は内心は不安に陥りながらも口に出さなかった。

 しばらくして、天城が透也の手元を覗き込み、画面に映るデザインを見つめた。

「これ、すごくいいじゃん。クライアントも絶対気に入るよ」
「いえ、まだ完成ではないです」
「えー。完成してなくても、もう十分素敵だと思うけどな」

 その言葉に、透也の胸に何か温かいものが広がった。彼は素直に褒められることに慣れていなかったため、戸惑いを隠せなかったが、悪い気はしない。


§

 翌日、透也は一つの案を天城に見せることにした。

「このバリエーションも考えたのですが、どうでしょう?」
「いいじゃん! これ、クライアントにも提案しようよ」

 その瞬間、透也の中で一つの疑問が解けた気がした。

 天城は決して軽率ではなく、ただ物事を前向きに捉える人間なのだ、と。
 彼の明るさは、その場限りの楽観ではなく、本気でプロジェクトを成功させようとする姿勢から来ているのだと気づいた。


 昼休み、天城が突然言った。

「ねえ、真柴くんってデザインする時、何を一番大事にしてる?」
「……伝わることです。形にするだけでなく、相手に伝わるものを作りたいと思っています」

 天城は真剣な表情でその言葉を聞き、しばらくの間考え込んでから微笑んだ。

「なるほど。真柴くんのデザイン、そういうところがいいんだな」

 透也は一瞬だけ驚いたが、すぐに不器用ながらも微笑みを返した。



 プロジェクトが一歩前進した感覚を覚えたのはその日の夕方だった。

「今日はありがとう。おかげでプロジェクトも上手く進んでるよ」
「いえ、僕も大変勉強になっています」

 その日、二人は言葉にはしなかったものの、どこかお互いに対する見方が変わり始めていた。

 まだ完全な理解には至っていないが、小さな一歩を踏み出した感覚をどこかで共有していく。
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