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188.親友への挨拶

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 運命の番という縁で出会った八月一日宮だが、八月一日宮があゆたの出会ったあの八月一日宮でなければ、たぶん究極的にはあゆたは付き合おうとは思わなかっただろう。

 かけがえのないひとだ。そしてその人があゆたを気遣ってくれる。あゆたも彼を大事にしたかった。

 制服のシャツの白い襟から覗いている黒いチョーカーは特別な金属の糸を縫い込まれた特製で、丈夫さとデザイン性を兼ね備えている。

 皮膚に触れるところはかぶれたり擦れたりしないよう、なめし皮のような丈夫で柔らかい素材になっていた。

 シンプルな見かけだが、信夫があゆたに薦めるぐらいだ。値段を聞くようなやぼなまねはしないが推して量るべしだ。

「あゆたくん、おはよう!」

 三階へ続く廊下を歩いていると、後ろから於兎の声が追いかけてきた。ぱたぱたと急ぎ足の足音が上って来るのにあゆたは振り返って於兎を待った。

「おはよう、於兎」

 いつも通りの挨拶だった。

 於兎はあゆたの隣に並んだ。

「三日? だっけ? 早退してからお休みだったから、なんだか久しぶりの感じだね。もう元気になったんだね、よかったね」

 あゆたより少し低い目線が、おやっというようにあゆたの首筋に行く。

「その、チョーカー……」

 いきなりチョーカーを着け始めたあゆたに於兎は驚いているようだった。それとも以前からオメガだと感じていただろうか。

 色恋沙汰なんて興味なかったし、パートナーの気配なんてまったくなかったあゆただ。黙っていたことを責められても仕方ないと覚悟を決めつつ、あゆたは於兎の長い睫毛がぱちぱちと上下するのを見下ろしていた。

「それって、マサリカヴァじゃない?!」
「……あ? まさかり場?」
「違うよ、マサリカヴァ! あゆたくんってほんとファッションに興味ないね」

 ブランド名を憶えず、なんとなくショッパーのロゴしか認識していなかったあゆたが首を傾げると、於兎はかぶりを激しく振った。

「光の反射でちょっときらきらするでしょ?」
 
 確かに刺繍のアクセントとして小さな透明な粒が縫い付けてある。あくまで上品な控えめな輝きで、あゆたも気にしていなかった。


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