156 / 202
155.柔らかな部屋
しおりを挟む
灯りの落とされた乳白色のシャンデリアの下がる廊下は絨毯敷きで奥が薄暗い。開け放ってあるのだろう、ドアの形に外の灯りの入るところもあれば暗いまま閉じたドアもいくつも並んでいた。
「そちらは和館ですね。渡り廊下で繋がってます。普段は洋館は暮らしていて、そちらはお客様がいらした時ぐらいしか使っていません」
八月一日宮は迷いなく歩いていく。緩やかなカーブを描く階段は腰板石が張られていて、アールデコ調の彫り物がされてあった。昇っていった先の踊り場には持ち送りが設けられている。縦長四連アーチの連装窓には四季の花をあしらった色ガラスがはめてあった。
二階も一階と同じぐらい広い。二階にはいくつかの寝室と家族の居間、書斎などがあって一階よりもプライベートな空間になっているそうだ。
「広いんだな。迷子になりそう」
八月一日宮は開けっ放しだったドアの中に入った。部屋の明るさにあゆたは目をしばたたかせた。大きなベッド、鏡付きの優美なマントルピース、壁紙やカーテンも優しい色味をしている。
ばあやさんが気を利かせてくれたようで、ベッドの脇にあるチェストには水差しとコップが用意されていた。廊下に続くドアとは別にドアがふたつあってひとつはバスルーム、ふたつめはクローゼットになっているそうだ。
「ふふ。すぐに慣れますよ」
きょろきょろするあゆたはそっとベッドに下ろされた。柔らかなマットレスにお尻が沈み込みそうになる。そこへ八月一日宮が隣に腰かけてきて、そちらのほうへマットレスが傾いでいく。あゆたはぽすんと八月一日宮の肩に頭を預ける形になってしまった。
「わ、ごめん。ベッドふわふわだな」
「ふふ、そのままでいいですよ。楽でしょ?」
あゆたは奥歯をぐっと噛んだ。甘やかされることに慣れていなくて、お尻がむずむずした。あゆたは素直に八月一日宮に寄り添ってじっとしていた。
「そちらは和館ですね。渡り廊下で繋がってます。普段は洋館は暮らしていて、そちらはお客様がいらした時ぐらいしか使っていません」
八月一日宮は迷いなく歩いていく。緩やかなカーブを描く階段は腰板石が張られていて、アールデコ調の彫り物がされてあった。昇っていった先の踊り場には持ち送りが設けられている。縦長四連アーチの連装窓には四季の花をあしらった色ガラスがはめてあった。
二階も一階と同じぐらい広い。二階にはいくつかの寝室と家族の居間、書斎などがあって一階よりもプライベートな空間になっているそうだ。
「広いんだな。迷子になりそう」
八月一日宮は開けっ放しだったドアの中に入った。部屋の明るさにあゆたは目をしばたたかせた。大きなベッド、鏡付きの優美なマントルピース、壁紙やカーテンも優しい色味をしている。
ばあやさんが気を利かせてくれたようで、ベッドの脇にあるチェストには水差しとコップが用意されていた。廊下に続くドアとは別にドアがふたつあってひとつはバスルーム、ふたつめはクローゼットになっているそうだ。
「ふふ。すぐに慣れますよ」
きょろきょろするあゆたはそっとベッドに下ろされた。柔らかなマットレスにお尻が沈み込みそうになる。そこへ八月一日宮が隣に腰かけてきて、そちらのほうへマットレスが傾いでいく。あゆたはぽすんと八月一日宮の肩に頭を預ける形になってしまった。
「わ、ごめん。ベッドふわふわだな」
「ふふ、そのままでいいですよ。楽でしょ?」
あゆたは奥歯をぐっと噛んだ。甘やかされることに慣れていなくて、お尻がむずむずした。あゆたは素直に八月一日宮に寄り添ってじっとしていた。
2
お気に入りに追加
271
あなたにおすすめの小説
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
欠陥αは運命を追う
豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」
従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。
けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。
※自己解釈・自己設定有り
※R指定はほぼ無し
※アルファ(攻め)視点
僕にとっての運命と番
COCOmi
BL
従兄弟α×従兄弟が好きなΩ←運命の番α
Ωであるまことは、小さい頃から慕っているαの従兄弟の清次郎がいる。
親戚の集まりに参加した時、まことは清次郎に行方不明の運命の番がいることを知る。清次郎の行方不明の運命の番は見つからないまま、ある日まことは自分の運命の番を見つけてしまう。しかし、それと同時に初恋の人である清次郎との結婚話="番"をもちかけられて…。
☆※マークはR18描写が入るものです。
☆運命の番とくっつかない設定がでてきます。
☆突発的に書いているため、誤字が多いことや加筆修正で更新通知がいく場合があります。
ハッピーエンド
藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。
レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。
ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。
それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。
※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。
【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!
MEIKO
BL
本編完結しています。Ωの涼はある日、政略結婚の相手のα夫の直哉の浮気現場を目撃してしまう。形だけの夫婦だったけれど自分だけは愛していた┉。夫の裏切りに傷付き、そして別れを決意する。あなたの妻(Ω)辞めます!
すれ違い夫婦&オメガバース恋愛。
※少々独自のオメガバース設定あります
(R18対象話には*マーク付けますのでお気を付け下さい。)
貴方の事を心から愛していました。ありがとう。
天海みつき
BL
穏やかな晴天のある日の事。僕は最愛の番の後宮で、ぼんやりと紅茶を手に己の生きざまを振り返っていた。ゆったり流れるその時を楽しんだ僕は、そのままカップを傾け、紅茶を喉へと流し込んだ。
――混じり込んだ××と共に。
オメガバースの世界観です。運命の番でありながら、仮想敵国の王子同士に生まれた二人が辿る数奇な運命。勢いで書いたら真っ暗に。ピリリと主張する苦さをアクセントにどうぞ。
追記。本編完結済み。後程「彼」視点を追加投稿する……かも?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる