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155.柔らかな部屋

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 灯りの落とされた乳白色のシャンデリアの下がる廊下は絨毯敷きで奥が薄暗い。開け放ってあるのだろう、ドアの形に外の灯りの入るところもあれば暗いまま閉じたドアもいくつも並んでいた。

「そちらは和館ですね。渡り廊下で繋がってます。普段は洋館は暮らしていて、そちらはお客様がいらした時ぐらいしか使っていません」

 八月一日宮は迷いなく歩いていく。緩やかなカーブを描く階段は腰板石が張られていて、アールデコ調の彫り物がされてあった。昇っていった先の踊り場には持ち送りが設けられている。縦長四連アーチの連装窓には四季の花をあしらった色ガラスがはめてあった。

 二階も一階と同じぐらい広い。二階にはいくつかの寝室と家族の居間、書斎などがあって一階よりもプライベートな空間になっているそうだ。

「広いんだな。迷子になりそう」

 八月一日宮は開けっ放しだったドアの中に入った。部屋の明るさにあゆたは目をしばたたかせた。大きなベッド、鏡付きの優美なマントルピース、壁紙やカーテンも優しい色味をしている。

 ばあやさんが気を利かせてくれたようで、ベッドの脇にあるチェストには水差しとコップが用意されていた。廊下に続くドアとは別にドアがふたつあってひとつはバスルーム、ふたつめはクローゼットになっているそうだ。

「ふふ。すぐに慣れますよ」

 きょろきょろするあゆたはそっとベッドに下ろされた。柔らかなマットレスにお尻が沈み込みそうになる。そこへ八月一日宮が隣に腰かけてきて、そちらのほうへマットレスが傾いでいく。あゆたはぽすんと八月一日宮の肩に頭を預ける形になってしまった。

「わ、ごめん。ベッドふわふわだな」
「ふふ、そのままでいいですよ。楽でしょ?」

 あゆたは奥歯をぐっと噛んだ。甘やかされることに慣れていなくて、お尻がむずむずした。あゆたは素直に八月一日宮に寄り添ってじっとしていた。
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