43 / 165
全てが斜め上
しおりを挟む
※この世界の人間はFALLOUTのレイダーの子孫なので、こっちの方がまともな生き方というバグが発生してます。
私はシチューを口にして気付いた。
この味は、間違いない……この機人が、なぜこのように慈悲をもって施しをするのか。これの意味することは一つしかないだろう。
我々は今まで紛い物を口にしてきた。カリスト教の教えは絶対だ。しかしその教えに矛盾する行為を我々はしている。そう、エルフや牛、それらの血肉を通して。
つまり機人は、我々の信仰するものが、その姿を本来のものとまったく変わったものになっていることを指摘しているのだ。
――ほろほろと肉が舌の上でほどける。……うまい!これは我々の好きな肉だ!
我々は今までなにをしてきたのだろう?
カリスト教の儀典を妄信するばかりで、本来求めるべきものを見うしなっていたことに気が付かされた。
――「隣人を食せよ」
これまで、そのまま口にすることは良しとされても、調理するという事は禁忌とされてきた。しかし何と甘美なことだろう。古代の営み、それを感じる。
私は大地にその身を投げ出す。五体投地と呼ばれる姿勢だ。
この肉の為なら例え魔王であっても、この身をささげよう。
父祖たちが信じた生き方を守るために。
★★★
なんだろう。この時代の人間の思考。上を行くかと思うきや、斜め上を行った後に帰ってくる。そんな感じだ。グラフにしたらぐるぐる回って、かたつむりができてるんじゃないか?
全く帰ってくる反応が予測できないし、理解できんな。
ま、いっか。人と人が分かり合えないんだから、機械と人間が分かり合うなんて不可能だろ。常識的に考えて。
とにかく、懐柔はできた。その心理が一体どういった化学反応を、この缶詰と起こしたのかまでは、正直さっぱりわからんが。
とりあえず騎士に尋問を始めるとしよう。
「……いくつか尋ねたきことがある」
「ハッ、なんなりと。」
「……あの丸太を使った盾の車を考案したのは何者か?」
「ハッ、聖ヨワネ騎士団の参謀たちにございます。ムンゴル帝国の銃に対抗するために考案されたもの、それをもとに改良したものにございます。」
「……銃だと?これと似た物を知っているのか?」
俺は自分の腕に付いた、お洒落な6門銃身を騎士に見せてみる。
「……それが銃、ですか?ムンゴル帝国の銃は、機人様が身に帯びている、そのようなものにはございません。」
「鉄の棒に「たまぐすり」と火矢を差し込み、飛ばす武器にございます」
「……なるほど」
やっべ、この世界、もういい線までいってるじゃん!先込め式の鉛玉を発射する、ちゃんとした銃が出てくるのも、時間の問題だぞ?!
「……エルフ達の装束、それと、こういったものに見覚えはあるか?」
俺は手元からある者を取り出す。
緑色に金色の線が縦横無尽に走っている、電子基板だ。
エルフ達に探させるために、見本として、食べずにのこしていたのだ。
「エルフらの装束は、古代にあった『世界の終末』を記した写本のさし絵で見たことがございます。」
「……ほう?」
「まさに、『ククレン』なる者たちが身に着けていた、古代の戦装束かと」
「……」
音だけでピンときた。まさか、国連か?いちおう情報は残ってるんだな。
「そして、その緑色の板にございますが、聖職者たちが集め、船に乗せていずこかに運んでいるのを見たことがあります」
「……交易品として扱っていた、と言うのか?」
「はい、海を越えた先にあるという、『ラメリカ』という国へ送っておりました。」
俺は失念していた。俺が手している基盤、これが何なのか、いまだに理解している連中がまだこの世界に存在している可能性を。
私はシチューを口にして気付いた。
この味は、間違いない……この機人が、なぜこのように慈悲をもって施しをするのか。これの意味することは一つしかないだろう。
我々は今まで紛い物を口にしてきた。カリスト教の教えは絶対だ。しかしその教えに矛盾する行為を我々はしている。そう、エルフや牛、それらの血肉を通して。
つまり機人は、我々の信仰するものが、その姿を本来のものとまったく変わったものになっていることを指摘しているのだ。
――ほろほろと肉が舌の上でほどける。……うまい!これは我々の好きな肉だ!
我々は今までなにをしてきたのだろう?
カリスト教の儀典を妄信するばかりで、本来求めるべきものを見うしなっていたことに気が付かされた。
――「隣人を食せよ」
これまで、そのまま口にすることは良しとされても、調理するという事は禁忌とされてきた。しかし何と甘美なことだろう。古代の営み、それを感じる。
私は大地にその身を投げ出す。五体投地と呼ばれる姿勢だ。
この肉の為なら例え魔王であっても、この身をささげよう。
父祖たちが信じた生き方を守るために。
★★★
なんだろう。この時代の人間の思考。上を行くかと思うきや、斜め上を行った後に帰ってくる。そんな感じだ。グラフにしたらぐるぐる回って、かたつむりができてるんじゃないか?
全く帰ってくる反応が予測できないし、理解できんな。
ま、いっか。人と人が分かり合えないんだから、機械と人間が分かり合うなんて不可能だろ。常識的に考えて。
とにかく、懐柔はできた。その心理が一体どういった化学反応を、この缶詰と起こしたのかまでは、正直さっぱりわからんが。
とりあえず騎士に尋問を始めるとしよう。
「……いくつか尋ねたきことがある」
「ハッ、なんなりと。」
「……あの丸太を使った盾の車を考案したのは何者か?」
「ハッ、聖ヨワネ騎士団の参謀たちにございます。ムンゴル帝国の銃に対抗するために考案されたもの、それをもとに改良したものにございます。」
「……銃だと?これと似た物を知っているのか?」
俺は自分の腕に付いた、お洒落な6門銃身を騎士に見せてみる。
「……それが銃、ですか?ムンゴル帝国の銃は、機人様が身に帯びている、そのようなものにはございません。」
「鉄の棒に「たまぐすり」と火矢を差し込み、飛ばす武器にございます」
「……なるほど」
やっべ、この世界、もういい線までいってるじゃん!先込め式の鉛玉を発射する、ちゃんとした銃が出てくるのも、時間の問題だぞ?!
「……エルフ達の装束、それと、こういったものに見覚えはあるか?」
俺は手元からある者を取り出す。
緑色に金色の線が縦横無尽に走っている、電子基板だ。
エルフ達に探させるために、見本として、食べずにのこしていたのだ。
「エルフらの装束は、古代にあった『世界の終末』を記した写本のさし絵で見たことがございます。」
「……ほう?」
「まさに、『ククレン』なる者たちが身に着けていた、古代の戦装束かと」
「……」
音だけでピンときた。まさか、国連か?いちおう情報は残ってるんだな。
「そして、その緑色の板にございますが、聖職者たちが集め、船に乗せていずこかに運んでいるのを見たことがあります」
「……交易品として扱っていた、と言うのか?」
「はい、海を越えた先にあるという、『ラメリカ』という国へ送っておりました。」
俺は失念していた。俺が手している基盤、これが何なのか、いまだに理解している連中がまだこの世界に存在している可能性を。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる