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おもらしフェイン家無くなったんだってよ(改稿)

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「どういうことだ!? アルダート家は無くなった?!」
「落ち着いてくれ旅人さん! 7カ月前のモンスターパレードを知ってるだろ? 超危険種の怪物たちが押し寄せて軍隊が出動した、あの!」
やっと帰りついたシャイアンの町。
急ぎ自宅のあった場所に行くと、アルダート家では無くなっていたのである。
そこには別の貴族風の誰かが住んでいたのだ。

情報交換の場所と言えば酒場である。
16歳は成人という法律のため、フェインは合法的に大人扱いであった。
地獄のような環境で過ごしたフェインは見た目が老けていた。
ギリギリ20歳くらいといったところだ。

「悪い。7カ月前は遠いところにいたんだ・・・・・・」
アヴェンダス教練所は外部の情報が入って来ない魔境だ。
山の上に配置され、四方は断崖絶壁、底の見えない谷が広がる。
下界につながる道は一本しかないが、脱走を阻止するためには殺しもいとわない退役軍人が詰めている。
遠いところと言えば間違いではないのだ。

「そうか、すまないな。7カ月前にモンスターパレードがあったんだ。シャイアンの町も進路上に含まれていた」
酒を煽りながら話す男の左腕は無かった。
体のどこかを欠損した人は数多くいる。
隣国と戦争中だからだ。
「あんたも知ってるだろうけど、モンスターパレードは異常行動のひとつだ。天災みたいなもんなんだ。だからみんな諦めてたんだ。あの男を除いて」
コップを静かにテーブルに置く。
中の葡萄酒が揺れていた。

モンスターパレード、名前の通りモンスターの大群が列をなしてやってくる天災だ。
一体何の目的があるのか、どうして起きるのかは分かっていない。
ただ、ある日突然パレードが起き、列が通り過ぎた後はぺんぺん草一本生えない荒れ地と化すのである。

「バド・アルダート。あの男だけは立ち向かっていったんだ。『俺が食い止めている間に国軍を呼べ』って言い残してな」
小さいころ憧れた父の背中が遠ざかっていく。
「国軍が来る頃にはパレードの進路が、ほんの少し。ほんの少しだけ変わっていた。町は救われた」
「そうか。で、バドはどうなったんだ? 怪我でもして療養地にでも越したのか?」
殺しても死ななそうな父の事だ。
きっと無理をして負傷でもしたのだろう。
フェインは遠い記憶のなか、父が大好きだった温泉街のことを思い出していた。
「バドさんは死んだよ」


夕陽が眩しかった。
会ったら、とりあえず一発殴ってやろうと思っていた父は、もういなかった。
家長を失ったアルダート家は急速に勢いを無くした。
と、同時に快く思っていなかった連中が増長するに至る。
「ボレス・・・・・・! あの野郎!!」
憎き男ボレスの実家レオニード家とは、親同士も仲がすこぶる悪かった。
そんな連中が、アルダート家の一大事を見逃すわけなど無い。

『モンスターパレードが起こって都合よく進路が逸れるわけなど無い! ここ100年ほどの記録にもそんな話は聞かない!!』
事後検分を行う国軍に訴えた人物がいる。
ボレス・レオニードだった。
『これはアルダート家が仕組んだ狂言だ! 天災で亡くなった時に支給される見舞金目的だろう。現にバドの遺体も見つかっていない!』
と熱弁したそうだ。
実際バドの遺体は見つかってないし、国の見舞金制度を悪用して縛り首になったケースもある。
検分中の兵士たちは困惑した。
『どうする?』
『俺たちで判断するのか?』
『だがアルダート家は一応貴族だぞ』
『レオニード家って商人だろ? 鵜呑みにしていいものか?』
と。
困りに困った兵士たちは閃いた。
『そうだ! とりあえず連行して尋問すればいいんだ!』
そんなこんなでミネラ・アルダートは捕縛され、王都に連れ去られてしまったのである。

4ヶ月前のことだそうだ。

その訴えた人物は当主不在で職にあぶれた使用人たちを雇用。
空き家を接収し、貴族モドキの生活に興じているらしかった。
憎きあいつの顔が鮮やかに浮かぶ。
爵位を持たないレオニード家は正規の貴族では無い。
だが、金と声の大きさからシャイアンの町を支配するまでに時間はかからなかった。
「許さん!」
フェインの青髪が、夕陽に照らされると血のような色に染まって見えていた。
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