7月22日

隅枝 輝羽

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7月22日

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「ふっ……うぅ……」

 俺は1人汗だくになりながら浴室の床に立てたディルドに跨って腰を振りながらチンポを扱く。
 そこそこの大きさのソレは俺のイイところにゴリゴリ当たって、時々腰が振れなくなるほどの刺激を感じる。

「はぁっはぁっ……ぐ……あ、もっと……」

 俺はディルドをあの人のチンポに見立てて1人呟く。

 ◇◆◇

 俺が大学生になり、思春期真っ只中でもないからって母親が再婚することになった。
「まあ、いいんじゃねーの?」って一応祝福してあげたら母親はちょっとはにかんでいた。
 俺が小さいときに父親は事故で他界して、それから母親は俺を第一優先で生きてきたのを知ってるから、そんな嬉しそうな表情を見てホッとした。

 新しく父親になるという人は母親より結構年上だったけど本当にいい人で、これから母親を幸せにしてくれるだろうって思えた。
 その人には息子が1人いて、社会人しているってことだったけど、こんな人の息子なら兄となるその人もきっといい人だろうって予想して俺もとても喜んでいたのに……。

 親の入籍直前の顔合わせのときに現れた新しい父親の息子。
 それが数ヶ月前にアプリで会ってヤッちゃった男だなんて誰が思う?
 息を飲み込んでなんとか初対面のなんでもない風を装って食事会を終えたけど、正直料理の味なんて覚えてないし、会話もちゃんとできていたかどうかわからない。

 結構タイプだったのになって、1回しか会ったことなくて直の連絡先も交換してないクセに今更残念に思った。
 父親を早くに失った俺からするとスーツとタバコが似合って落ち着いてる大人の男だった彼は甘えたくなる空気が漂っていて、なのにベッドに入ると結構激しくて……。

 ◇◆◇

 あの人が兄になり、母親の幸せを守るために俺は兄とは必要以上に話さないようにしていた。
 多分あっちもゲイだってバレないようにしているのもあってか、特に何かアクションしてくることもない。
 社会人のあの人は結構忙しくてあまり長時間顔を合わせないのがせめてもの救いだ。

 でも夏の大学生なんて時間は腐る程ある。
 暇な時間があればあるほど碌でもないことを考えちゃうのが人間ってもんだ。
 しかも日中は1人きりだし……オナニーするなら物音を気にする夜より今だろ。
 とは言え、エアコンをつけても暑い日中の部屋でやるくらいなら前処理も後処理も楽な浴室だよな。
 どうせ今の時間は1人だしさ。

 てことで今に至るわけなんだが。

「あぁ……いいっ……そこいい……」

 1人なのをいいことにポソポソと言葉を口に出しながらオナニーを続ける。
 やっぱただ刺激してイクだけより、気持ちが入ったほうが脳みそまで痺れるんだよな。
 だから普段は仮想の相手を作り上げてるんだけど、ごめん……最近は兄を使わせてもらってる。
 だって、あの日のアレが直近のセックスだったんだからしょうがないじゃん。

 しっかり吸盤が張り付いたディルドは俺がかなり激しく動いても剥がれずに、ブルンブルンとしなって俺の中を責め立てる。
 騎乗位をしているような妄想をしながら前立腺をこすり、そのリズムと合わせるように先走りが溢れまくる亀頭を手のひらでグリグリする。

「んぐぅ……あっあっあっ、それ……ああ、キそう……クル……」

 ……

 俺がラストスパートをかけたとき、いきなり浴室のドアが開けられた。

「えっ!? あっ」

 驚いた瞬間に足が滑って……。

「お"っ、あぐぅ……」

 俺は玉無し1本ディルドを根本まで完飲みしてしまい、その奥の奥に来る衝撃で意図せずドアを開けた兄の前で盛大に射精してしまった。
 しかもヤバいと思えば思うほど腹の中は収縮を繰り返し、ビュクビュクと熱い白濁を飛ばすのを止められなかった。

「声が聞こえるから誰か連れ込んでるのかと思ったら」

 兄は射精を続ける俺を見下ろしながらポツリと言った。

「ひ……な、なんで……」
「今日は直帰」

 ガクガクと腰が震えてディルドを抜きたいのに足に力が入らず、串刺しのままいつまでもイッてる痙攣が止まらない。
 涙が勝手に溢れてくるししんどいのにどうにもならなくて苦しい……。
 浴槽の縁に手をかけて頑張って腰を浮かそうと頑張っていたら、兄がスーツのまま浴室に入ってきて俺の脇に手を入れて起こしてくれた。

「何やってるんだ」
「う、1人のときにオナったって……いいじゃん……」

 しっかりと俺を抱きかかえてくれている兄のスーツが、シャワーやら俺の汗やら精液やらで汚れているのに思い至って身体を離そうとしたのに兄は離してくれなかった。

「よ、汚れちゃう、から」
「腰抜けてるだろ」

 そして兄は俺をリビングに連れて行ってくれて、何故かバスタオルで身体を拭いて巻き付けてくれたり冷たい水を出してくれたりしてくれる。

「俺はいいから……スーツ手入れして。ごめん」

 甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるけど、オカズにしていたのを思い出すといたたまれなくて俯いたまま声をかける。
 俺の足がしっかりしてれば自室に逃げられるのに。

 俺の言葉を聞いた兄が目の前でスーツを脱ぎだしてちょっと焦る。
 上はまだいい。でも、スラックスを脱いだら股間の部分がピンと張っている。

「あ……え……」
「あんなエロい姿見せられたんだからしょうがないだろ」
「でも、だって、俺とセックスしてナシって思ったから連絡先も聞かずに1回きりだったんだろ?」

 あーって言いながら兄が頭をかいている。
 眉を下げて困った表情をしているのを見て、俺いらんこと言ったって思った。

「あの日、お前が新しく弟になる奴ってわかってたんだ」
「…………は?」
「親父からすでに2人の写真を見せられててな。そしたらアプリで似たような雰囲気のやつがいるからまさかって思って連絡取った。会えばわかるだろうって会ったら本人で、伝えようと思ったけど甘えてくるのが可愛くて食いたくなっちゃって。でもそんな関係続けちゃダメだろって思ってそのままにしてしまって……すまない」

 マジかよ。
 知ってたのにセックスしたの? それはそれで……どうかと思うけど。

「親父と好みは似てるからあの女性ひと似のお前は俺のタイプドンピシャなんだよ。だからスイッチ入ったら止まれなかった。……一緒に暮らすのはよそうかと思ったけど側にいたいとも思ってしまってな。ズルズル気持ち引きずって、何も言えないくせに男連れ込んでるのかと思ったら焦って嫉妬してあんな行動して……幻滅したよな」

 待って待って待って。
 俺が何も言えないでいると兄がどんどん思ってもないことを打ち明けてきてどうしたらいいのかわからなくなる。

「嫉妬……え?」
「やっぱ俺はダメだな。こんな状況でまたしてもお前に欲情してるんだから」

 欲情って言葉に反応して兄を見ると困った表情をし続けてる割に熱のこもった目を俺に向けていた。
 キュッと胸が軋む。

「あの……」
「おっ勃ててこんなこと言ってるけど手は出さないから安心しろ」
「なっ、なんでだよっ」

 無理に立ち上がったら足がカクンとなって兄を押し倒しながら乗り上げてしまった……。

「ご、ごめ……怪我は……」
「俺は平気だけど、お前は? 大丈夫か?」

 相変わらず優しくて紳士的だ。でも、俺が求めるてるのはそうじゃなくてさ。
 硬いソコに手を伸ばして下着の上から形をなぞると中でピクンと動く。
 トクトクと俺の心臓が速度をあげて、頭がぽーっとしてくる。

「ダメだって言ってるだろ……あ……」

 ダメって言いながら強くは拒否しないし、下着を咥えながら下ろして中から飛び出たチンポが俺の顔にペチリと当たると兄の表情が変わったのがわかった。
 あの時のセックスのときの雄の顔だ。

「欲しい。俺に入れてよ、コレ。俺が何を考えてオナニーしてたと思ってるんだよ」

 俺が言い終わる前に兄は俺の腰を支えて上に乗せようとしていた。
 足はまだそこまで力が入ってるわけじゃないけど、支えてくれているから倒れないで済んでいる。
 右手に唾液を垂らして兄のチンポに塗りつけると俺はそのまま腰を落とした。
 ローションじゃないから滑りはそこまでじゃないけど、さっきまでオナニーしてたから入り口もゆるくなってたし中はローション使ってたからヌルヌルしててスムーズに飲み込んでいく。

「くっ」

 兄が快感をこらえるような顔をするから俺は嬉しくなって腰をグラインドさせた。
 上下にはまだ動けそうになかったけどこっちならできると思って。
 そしたら兄が下から突き上げるように動いてくる。

「ああっ!! あっ……やばい」
「いい、か?」

 ガツガツと容赦なく突き上げられて、浴室でイッた感覚がまた戻ってくる。
 しかも、今は本物が入ってるから、もうそれだけでとんでもなく気持ちいい。

「す、すぐ……イッちゃうぅぅ……きもちいっ! あああ!!」

 意思とは別にあっという間に身体がビクンビクンと跳ねて、射精はしないのに規則的に収縮を繰り返す。

「かわいいな」
「あ……あぅ……ううぅ…………に、さん」
「カズヒコ。呼んで?」
「で、も……」

 俺がためらっていると、ぐっと身体を起こしてきて対面座位にさせられた。

「兄と思ったほうが燃える?」
「ち、ちが……」
「ほら。呼んで」

 さっきまでとは違って優しく身体を揺すぶられながら、乳首を舌先でツンツンされてたまらなくなる。

「んんっ……もっと、つよく……して」
「じゃあ呼んでごらん」
「カ……カズヒコ、さん……」

 呼んだ途端にヂュッと音を立てて強く乳首を吸われて俺はもう一度達した。

 その後、中でいいって言う俺をたしなめて外に出した兄は、母親が帰ってくる前にリビングや浴室のすべてをキレイにしてくれた。
 俺はというとグッタリしてソファにずっと横になっていたんだけど……。
 浴室の床にそのまま張り付いて立っていたディルドも兄が俺の部屋に持っていってくれたらしい。

 ◇◆◇

 その後も2人きりのときはひたすら俺を甘やかしていっぱい愛してくれる兄……いや、カズヒコさん。
 母親には申し訳ないけど、俺はこの人に本気になりそうだ……。
 でもちゃんと家族でいるときは兄弟するから許してほしい。

「なんて顔してるんだ?」
「家族を好きになっちゃうなんて不毛だなって」
「血は争えないからな。それにどうせ今の日本じゃ同性婚はできないし、養子縁組しなくても合法的に家族になれてはいるぞ?」

 えっ?

「少なくとも、俺はお前を遊びで終わらそうとは思ってない。あの日、ちゃんと俺が線を引こうとしたのをお前が乗り越えてきたときからな」

 これってプロポーズってこと?
 なんか……その……いつの間にか事実婚の夫夫になったみたいになっちゃったけど。

「もうお前は俺のものだってこと忘れないように」

 言ってることはなんかアレだけど、それにときめく俺も大概おかしいのかもしれない。

 ―― end ――
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