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決戦編
巫女、潜入する
しおりを挟む159-①
(うぅ……こ、怖い……は、吐きそう……)
この地に封じられている水の神、《シュラップス》に会って異界渡りの書を完成させ、武光を無事に元の世界へ帰すべく、魔王シンに寝返ったフリをして魔王城へ潜入したナジミだったが、不安と恐怖と緊張でさっそく吐きそうになっていた。
ナジミは心の中で、武光に助けを求めそうになったが、慌ててそれを打ち消した。
(ダメよ!! 元はと言えば、武光様は私の勘違いに巻き込まれてこの世界に連れてこられただけ……それなのに武光様はいつだって私を命がけで守ってくれた!! 今度は私が武光様の為に頑張らなくちゃ……!!)
魔王シンに先導されて、妃の間へと続く長い廊下を歩いて行く。
こうして長い廊下を歩いていると、国王様に呼び出されて、武光と二人でアナザワルド城に登城した時の事を思い出す。
……あの時もビビって緊張しまくりだった私を、武光様は励ましてくれたっけ。武光様は物凄く堂々としてて、とても心強かった……後からあれは演技で本当は自分もビビりまくりだったって聞いた時は思わず笑ってしまったけれど。
(『狼狽えたらアカン』『堂々としてれば存外バレない』……ですよね? 武光様……!!)
それにしても……何とだだっ広い城なのだろう、もしかしてアナザワルド城よりも大きいんじゃないだろうか……そんな事を思いながらナジミが歩を進めていると、向こうの方から魔族の男達が三人、並んで歩いてきた。
三人の魔族は、魔王に気付くと、慌てて道を開けて跪いた。
それにしても……この城の魔族はどうしていちいち怖い顔の奴ばっかりなのか。震えているのを悟られまいと、ナジミは拳をきゅっと握った。
(おおおお落ち着くのよ、私!! 頑張れ、私!! へのつっぱりはいらんですよ!!)
魔王の花嫁らしく、優雅に、華麗に、堂々と振る舞うのだ。ナジミはミトの所作を頭の中で必死に思い出しながら、跪く魔族の横を通り過ぎた。
(…………よーーーしっ!! 完璧だわ、誰も私を不審に思ってない……これならイケる!!)
魔王とナジミが通り過ぎた後、跪いていた魔族の男達はヒソヒソと小声で話し合った。
「……あれが噂の魔王の花嫁か……」
「うむ、何と言うか……物凄くカクンカクンしていたな……」
「ああ、右手と右足、左手と左足が同時に出ていたぞ……」
「うーむ、何か得体の知れない生き物を見た気分だ……」
……全然イケてなかった!!
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