100 / 180
鬼退治編
斬られ役、鬼を狩る
しおりを挟む100-①
「……おぉぉぉっ!!」
“ザンッッッ!!”
「……でやぁぁぁっ!!」
“ズバァァァッ!!”
「……どりゃあああっ!!」
“ドスッ!!”
「はあっ……はあっ……つ、角を……!!」
武光はジャトレーから預かった魔穿鉄剣を手に、オーガへの襲撃を繰り返していた。
倒した三体のオーガの角を、魔穿鉄剣で切り落とし、『鬼の角、奪ったどーーー!!』と、雄叫びを上げている武光のもとに、武光に物陰に隠れているように言われていたナジミが駆け寄る。
「武光様、大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!? 怒り狂っていませんか!?」
「おう!! 全然大丈……おいやめろローリングソバットの構えすんな、大丈夫や言うてるやろ!? いや、それにしても……流石はこの国屈指の刀匠が作った剣や……重いけど、凄い破壊力や。これなら鬼共とも渡り合え……いや、ホンマに大丈夫やから!! お前ローリングソバットしたいだけちゃうんか!?」
「ちょっ、そんな人聞きの悪い事言わないで下さいよ……あっ!? たたた武光様、大っきいオーガです!!」
「うおっ、でっかぁぁぁっ!?」
3m近い巨体を持つ二本角のオーガが一体、物凄い勢いで向かって来る。
「ナジミ!!」
「ハイっ!! 逃げるんですね!?」
「椅子っ!!」
「えっ!? は、ハイっ!?」
武光の事、てっきり『逃げる』と言うと思っていたナジミは、慌ててスイ・ミタタリオを座席形態にして、地面に置いた。
「しっかり押さえとけよ!! うおおおおおっ……!!」
“ダンッッッ!!”
武光は、ナジミが設置したスイ・ミタタリオ(座席形態)を足場にして跳躍した。
「喰らえぇぇぇっ!!」
魔穿鉄剣を振りかぶり……大型オーガの脳天めがけて、力を込めて振り下ろす。
“ザクッ!!”
脳天をかち割られ、即死したオーガ崩れ落ちる。空中で無理な動きをしたせいで、着地の時にバランスを大きく崩して派手にすっ転んだ武光だったが、すぐさま起き上がり、オーガの死体から角を切り落とした。
「よっしゃっ、次行くぞ……待ってろよ……イットー!!」
切り落とした角を、腰に下げた革袋に詰めた武光は再び駆け出した。
イットー・リョーダンの修復に必要な鬼の角……残り90本
100-②
マイク・ターミスタの中心部にあるマイク・ターミスタ行政府……そこに、屈強なオーガ達の中でも、一際大きく、屈強なオーガがいた。
夜の闇のような漆黒の体に、焔のような赤い髪、そして額に金色の一本角を持つこのオーガこそ、マイク・ターミスタを占領しているオーガ達の総大将、鬼将ザンギャクであった。
ザンギャクは苛立っていた。今日の昼頃から、手下達が何者かによって次々と襲撃され、あまつさえ、オーガ一族の力の源であり、強さの象徴でもある角が削ぎ落とされ、奪われているのである。
また一人、配下が報告にやって来た。今度は四人が襲撃され、殺られたらしい。そして、殺された連中はやはり角を奪われているとの事だ。
ザンギャクは声を荒げて、傍らに立つ弟……黒肌銀角のオーガ、ボウギャクに命じた。
「ボウギャクよ……どうやら俺達に喧嘩を売ろうっていう命知らずがいるらしい。そいつをここに連れて来い!!」
「分かったぜ、兄者!!」
命令を受けたボウギャクは天に向かって、野獣の如き咆哮をあげた。ボウギャクはオーガ一族の中でも随一の凶暴性を持つ、暴虐なるオーガなのだ。
「おっと……殺すんじゃねーぞボウギャク。俺は子分を何人も殺られたんだ……そいつは、この俺様が、目を潰し、耳と鼻を削ぎ、指を一本ずつ切り落とした後、苦しめに苦しめ抜いて殺す!!」
「おう!! 行くぞ……野郎共!!」
武光を捕らえるべく、オーガ達が動き出した。
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
斬られ役、異世界を征く!! 弐!!
通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
前作、『斬られ役、異世界を征く!!』から三年……復興が進むアナザワルド王国に邪悪なる『影』が迫る。
新たな脅威に、帰ってきたあの男が再び立ち上がる!!
前作に2倍のジャンプと3倍の回転を加えて綴る、4億2000万パワー超すっとこファンタジー、ここに開幕!!
*この作品は『斬られ役、異世界を征く!!』の続編となっております。
前作を読んで頂いていなくても楽しんで頂けるような作品を目指して頑張りますが、前作を読んで頂けるとより楽しんで頂けるかと思いますので、良かったら前作も読んでみて下さいませ。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
人気MMOの最恐クランと一緒に異世界へ転移してしまったようなので、ひっそり冒険者生活をしています
テツみン
ファンタジー
二〇八✕年、一世を風靡したフルダイブ型VRMMO『ユグドラシル』のサービス終了日。
七年ぶりにログインしたユウタは、ユグドラシルの面白さを改めて思い知る。
しかし、『時既に遅し』。サービス終了の二十四時となった。あとは強制ログアウトを待つだけ……
なのにログアウトされない! 視界も変化し、ユウタは狼狽えた。
当てもなく彷徨っていると、亜人の娘、ラミィとフィンに出会う。
そこは都市国家連合。異世界だったのだ!
彼女たちと一緒に冒険者として暮らし始めたユウタは、あるとき、ユグドラシル最恐のPKクラン、『オブト・ア・バウンズ』もこの世界に転移していたことを知る。
彼らに気づかれてはならないと、ユウタは「目立つような行動はせず、ひっそり生きていこう――」そう決意するのだが……
ゲームのアバターのまま異世界へダイブした冴えないサラリーマンが、チートPK野郎の陰に怯えながら『ひっそり』と冒険者生活を送っていた……はずなのに、いつの間にか救国の勇者として、『死ぬほど』苦労する――これは、そんな話。
*60話完結(10万文字以上)までは必ず公開します。
『お気に入り登録』、『いいね』、『感想』をお願いします!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる