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最後の決着編

巫女、イジられる

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 281-①

 神々の姿が見えなくなると、ナジミは四つん這いになって嘔吐えずいた。

「うぅ……緊張しました……うぇぇっ……」

 武光はナジミの背中をさすってやった。

「大丈夫かいな」
「だ、誰のせいだと思ってるんですか……ゔっ!!」
「よしよし、落ち着いて深呼吸や、深呼吸」

 しばらくして、ようやくナジミは落ち着いた。

「武光様?」
「は、ハイっ!!」
「そこに正座してください……」
「は、はい……」

 武光は従うしかなかった。ナジミは微笑んではいるものの、目が全く笑っていない。

「さっきのアレはどういうおつもりですか? 神々に対して『掟破りは悪役の華』でしたっけ?」
「ご、ごめんなさい……おもっくそ調子に乗りました……」
「神々のお怒りを買ってしまったら、冗談抜きで華と散るところでしたよ?」
「は、ハイ……すみません」
「あの時、ちょっと自分に酔ってましたよね?」
「正直……結構、格好良かったのではないかと自負しております」
「2点」
「う……」
「2点ですっ!! 武光様にもしもの事があったら……私……私……武光様のあほーーーっ!!」
「ひー!! ごめんって!?」

 武光はナジミにポカポカと叩かれた。

「……まぁまぁ姐さん、それくらいで許してあげなよ」
「フリード君……それに皆も」

 フリードが 現れた!!
 クレナが 現れた!!
 ミナハが 現れた!!
 キクチナが 現れた!!

「イットー・リョーダンと魔穿鉄剣もいるぜ」

 そう言って、フリードはイットー・リョーダンと魔穿鉄剣を掲げた。

「隊長と副隊長を探してたら、神様達とお二人がお話しされているのを見かけたので、隠れて様子をうかがってました」
「副隊長殿のお気持ちも分かりますが……」
「た、武光隊長を許してあげてください」

 フリード達がなだめたが、ナジミはまだぷりぷりと怒っている。

「武光様を甘やかしちゃダメです!! 武光様は……何をしても最終的には私が折れて許してくれるって思ってるからいつもああいう事するんですっ!! 神々相手に啖呵を切るなんて、何と畏れ多くて命知らずな真似を……」
「……でも、その時の姐さん、めちゃくちゃ嬉しそうだったじゃん」
「そ……そんな事ありませんよっ!!」
「ふーん?」

 それを聞くとフリード達はすたすたと移動し、先程まで武光が跪いていた位置にフリードが、ナジミが跪いていた位置にクレナが跪き、そして神々のいた位置にイットー・リョーダンを手にしたミナハと、魔穿鉄剣を持ったキクチナが立った。

〔武光よ……お主、我らの命に従わぬと言うのか……!?〕
それがし、天下御免の斬られ役なれば!!」

 地神ラグドウンの口調を真似たイットーからの問いかけに、武光の口調を真似たフリードが答える。そして……

「あぁ……武光様ったら、神々に刃向かってでも『私を守る』だなんて……」

 クレナが立ち上がり、ナジミの口調を真似つつ、胸の前で手を組んだ。
 今度は風神ドルトーネの口調を真似たミナハがフリードに問いかけ、またしても武光の口調を真似たフリードが答える。

「君の言っている事は大いなる掟を破るという事なんだよ!?」
「掟破りは悪役の特権にござる!!」

 そして、クレナは胸の前で両手を組んだまま、空を仰いだ。

「そうまでして私の事を……!!」

 同様に、魔穿鉄剣が水神シュラップスの、キクチナが火神ニーバングの口調を真似て、フリードに問いかける。

〔大いなる掟を破るという事は、神々をも敵に回すという事なのですよ!?〕
「掟破りは悪役の魅せ場にござる!!」
「掟を破ってでもソイツを守るってのか……!!」
「掟破りは悪役の華なればッッッ!!」

 クレナは自分自身を抱きしめるように左右の肩に手を置き、くねくねと体をくねらせた。

「武光様……!! 大いなる掟に背き、神々を敵に回しても私を守るだなんて、そんなにも私の事を大切に想ってくれているのね……きゃーーーーー!! あ、でも格好良さは2点ですっ!!」
「に……2点!? それって……2点満点で、やんな……?」
「100点満点で、ですっ!!」

 それを言われたフリードが、ニヤニヤしながらクレナに問いかける。

「でも~~~? 嬉しさは~~~?」
「200点ですーーーっ!!」
「こ……こらーーーーー!! 勝手に人の心の内を再現するんじゃありません!! 大体、そんなに点数は低くありません!! 2000万点です、2000万点!! あっ…………」

 ナジミはド赤面した。

「そ……そんな事より!! 私達を探していたんでしょう、何か用があったんじゃないの?」
「あっ、そうでした!! 隊長、マイク・ターミスタにいる京三さんから連絡が来てましたよ」
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