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魔王軍進撃編
斬られ役(影)、めっちゃ怒られる
しおりを挟む188-①
影光と四天王が部屋に入ると、マナは体をガタガタと震わせながら号泣していた。扉の向こうから聞こえていた異音はマナが盛大に震えている為に、甲冑が擦れ合っていた音だったのだ。
「だ、大丈夫かマナ!?」
「し……師匠ぉぉぉぉぉっ!!」
「お、落ち着けって!?」
「怖かったですーーーーー!! 緊張しましたーーーーー!! わぁーーーーーん!!」
緊張の糸がブツリと切れてしまい、感情が昂り倒しているのだ。影光は初舞台を終えた時の自分を思い出して内心苦笑しながらもマナを叱咤した。
「バカ!! 本番はこれからだ!! 幕が上がる前から号泣する奴があるか!?」
「だって……だって……あんなアドリブ聞いてませんよぉぉぉ、何なんですか!? その……お、おち……おちん……が……その……あーーー!! もーーーっ!!」
「いや、あれはアイツらに黙ってお前の話を聞かせる為にだな……実際、効果抜群だったろ!?」
「だからって……あれじゃあまるで私が……うぅ……もう知りません!! 師匠なんて破門です!!」
「弟子に破門されたっ!?」
「師匠のバカーーーーー!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
酷く興奮し、全く泣き止まないマナに影光は頭を抱えた。
「ったく、しょうがねえなぁ……ヨミ!!」
「うん?」
「お前……ギュッとしてやれ」
「ハァ!? 何で私がそんな事しなきゃならないのよ!? アンタの弟子なんだからアンタがやれば良いでしょうが、アンタがやれば」
「バカヤロウ!! 俺は……心底惚れた女以外にはそういう事はせんのだ!! カクさんにも悪いしな!!」
「えぇ……面倒くせー」
「つべこべ言うな、文句を言うなら『脳内ホラー映画上映会の刑』だぞ」
「ああもう、分かったわよ!! ほら、マナこっち来なさい!!」
ヨミに抱きしめられる事数分、マナはようやく落ち着きを取り戻した。
「落ち着いたか?」
「ハイ……その……お恥ずかしい所を」
「気にすんな、俺も昔、初舞台を終えた後は感極まってちょっと泣きそうになった。そんな事より、ここからが本当の戦いだ、気合いを入れ直せ!!」
「ハイ……師匠!!」
「おっし!! そんじゃ本番前スタンバイに行って来るぞ!!」
「師匠、御武運を」
「おう!!」
影光達は突入に備えて、中央制御室へと向かった。
中央制御室ではマナの宣言を伝声管越しに聞いていたゲンヨウが涙を流していた。
「お嬢様……立派になられて……」
いや、そのお嬢様は、さっき涙と鼻水ドバドバ出しながら号泣してましたよ……などと無粋な事を言うのもあれなので、影光は先程見た光景を心にしまい、ゲンヨウに話しかけた。
「なぁ、ジイさん──」
その時、突如として、けたたましい鐘の音が城中に鳴り響いた。
「何だ!? どうしたジイさん!?」
「こ、これは……敵襲じゃ!! 敵が……高速でこの城に向かって来ておる!!」
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