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本拠地突入編・1

隊員達、驚愕する

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 102-①

 『勇者リヴァルが消息を絶った』

 ……ロイが告げた言葉に武光は言葉を失った。

 リヴァル=シューエン……光の力を操る『一騎当千の光の勇者』で、機略縦横、勇猛果敢、誇り高く正義感に満ちあふれ、温厚篤実、品行方正、挙げ句の果てには絶世の美男子という、正に非の打ち所の無い英雄である。
 三年前の大戦でも『剛力無双の大豪傑』ヴァンプ=フトー、『千能万才せんのうばんさいの天才術士』キサン=ボウシン、『方正謹厳の監査武官』ダント=バトリッチらと共に各地を転戦、行く先々で魔王軍を蹴散らし多くの民を救ってきた。

 武光も幾度となく彼に窮地きゅうちを救われており、彼は武光にとって、命の恩人であり、戦友にして大親友である。

 その彼が消息を絶ったという事を武光はにわかには信じられなかった。唖然とする武光をよそにロイは続ける。

「暗黒教団を追っていた奴は、何らかの情報を掴んだらしく、かつての仲間達と共にこの街に急行したらしい。そこまでは監査武官からの定期連絡が入っていたのだが……連絡が途絶えた」
「まさか……暗黒教団に!?」
彼奴あやつの事だ、そうそう容易たやすくやられるなどという事はあるまいが……万が一という事もある。奴を倒す程の相手となれば──」

 ロイが潜入調査部隊に選ばれた理由を武光は理解した。あのリヴァルを倒す事が出来る程の敵がいるとしたら……対抗出来るのは目の前の偽パン屋しかいない。

「なぁ、唐観武光よ」
「な、何や……」
「我々に手を貸してくれぬか?」
「お、おう……!!」

 親友の危機だと知り、武光は差し出されたロイの手を取ろうとしたのだが……

「それにな……」
「うん?」
「…………三年前、私にしてくれた事への礼もせねばなるまい?」

 武光は反射的に手を引っ込めた。

「お……おおお……おおおおお……」
「お……?」

 ガタガタと肩を震わせる武光を見て、首をかしげるロイだったが……

「お礼参りやーーーーーーーーーーーーーーっ!?」
「オイ!?」

 武光は 逃げ出した!!

 102-②

「ちょっ!? 武光様ーーー!?」
「アニキーーー!?」

 その場からものすごい勢いで逃げ出した武光を見て、天照武刃団の面々は慌てた。ナジミが慌ててフリード達に指示を出す。

「みんな、武光様を追いかけるのよ!!」
「任せろ姐さん!!」
「分かりました副隊長!! 行こう、キクちゃん、ミーナ…………ミーナ?」
「み、ミナハさん……?」

 ……ミナハの様子がおかしい。クレナとキクチナは恐る恐るミナハに近付いた。

「ゲェーッ!?」
「た、立ったまま気絶してます!!」

 憧れの人物が突然目の前に現れて、テンションが上がり過ぎたミナハは、何と立ったまま気絶していた。

「おい、大丈夫か……」

 ロイが、ミナハの肩に手を置き、軽く揺すった。

「う……う~ん……?」

 ミナハは 目を覚ました!!

「大丈夫か……?」
「はっ!? あああ貴方様はロ……ロイ=デスト将軍!? はぅっ!?」
「ミーナ!?」
「み、ミナハさん!?」

 再び気絶したミナハをクレナとキクチナが慌てて介抱する。しばらくして、ミナハはようやく落ち着きを取り戻した。

「あああああのっ……わたくし、ブルシャーク家の長女で……ミナハ=ブルシャークと申しますっっっ!!」
「ほう、あのゴセイハイド=ブルシャーク殿のご令嬢であったか……」
「は、ハイ!! 三年前に、私の乗った馬車が魔王軍に襲撃された折、駆け付けたロイ将軍に命の危機を救って頂きました!! ふふふ再びお目にかかれて、こ……こここ光栄ですっっっ!!」
「そうか、あの時の……あの可憐かれんな少女がな……」
「かっ……可憐ッ!?」

 ミナハは顔を真っ赤にした。

「フフ……随分と凛々しく成長したものだ。しかしな、私の仮面を見て恐怖で失神するようでは、戦士としてはまだまだ修行が必要だな、ミナハ嬢?」
「さ、先程は……お恥ずかしい所を……!! と言うか、あれは恐怖で気絶したのではなく……あの……その……」

 更に顔を真っ赤にしてうつむくミナハをよそに、フリードがぼそりと呟いた。

「そんな事より、アニキめちゃくちゃビビってたじゃん。コイツとの間に一体何があったってんだよ……」

 フリードの呟きを聞き取ったロイが、苦笑しながらフリードの疑問に答える。

「何、大した事ではない。三年前に私はお前達の隊長と殴り合って……完膚無かんぷなきまでに叩きのめされただけだ」

 それを聞いたフリードと三人娘は顔を見合わせた。

「へぇー三年前に……」
「隊長と殴り合って……」
「は、白銀の死神ロイ=デスト将軍が……」
「完膚無きまでに叩きのめされ……って」


「「「「えええええええええーーーーーっ!?」」」」


 隊員達は驚愕の叫びを上げた。


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