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聖道化師襲来編
聖道化師、奥の手を出す
しおりを挟む72-①
暗黒教団の聖道化師、月之前京三から操影刀・双頭蛇を奪い取り、なんとか元の体に戻る事が出来た武光は、京三にイットー・リョーダンの切っ先を向けた。
「さてと……覚悟してもらおうか!!」
「その剣……その剣が聖剣イットー・リョーダンか!? その剣があればボクは……英雄になれるんだ!!」
「いやぁ、お前には無理やと思うけどなー」
「何だとぉ……!?」
「……試してみるか? ほらよっ」
「えっ?」
武光はイットー・リョーダンを再び鞘に納めると、腰の帯から鞘ごと抜いて、京三に向かって放り投げた。
「け、剣を!!」
「うらぁっ!!」
「ぐはあっ!?」
京三が放り投げられたイットー・リョーダンに反射的に手を伸ばした瞬間、武光は一気に間合いを詰めて京三を殴り倒した。
殴られた拍子に、京三は手から透明のプレートを取り落としてしまった。
武光は京三が取り落としたプレートを拾い上げ、懐に入れると、悪役丸出しの表情でニヤリと笑った。
「フッ、危険な玩具は没収させてもらう」
「ふ、ふざけやがってぇぇぇ……だが、これで聖剣はボクの手の中だ……早速お前で斬れ味を試してやる!!」
イットー・リョーダンを杖代わりに立ち上がり、鞘を投げ捨てた京三に、イットーが話しかける。
〔やめといた方が良いと思うよ? 柄を握られただけで分かる、君には僕の真の力を引き出す事は出来ない〕
イットーの言葉に反発して、京三は剣を握り締める手に力を込めた。
「な、ナメるなよ……ボクは……選ばれし人間だ!! ぐ……お、重──」
京三はイットー・リョーダンを頭上に振りかぶったが……
「そら……よっと!!」
「うわっ!?」
イットー・リョーダンを頭上に振り上げたその瞬間、京三は懐に飛び込んで来た武光に柄頭を右の掌底で勢い良く押し上げられ、大きくバランスを崩してしまった。
「せいっっっ!!」
「ふぐぅっ!?」
後ろに大きく仰け反り、ガラ空きになった京三の鳩尾に武光の左の正拳突きがめり込む。
体重の乗った一撃を急所に叩き込まれた京三は、思わずイットー・リョーダンをその手から取り落として蹲った。
「うぐぐ……何でだよ……おかしいだろこんなの……ここはボクが聖剣の力を引き出して、皆が『SUGEEEEE!!』って驚愕する場面のはずなのに……」
苦し気に吐き出された京三の言葉を聞いて、武光は苦笑しながら、京三が取り落としたイットー・リョーダンを拾い上げた。
「あのなぁ、ラノベじゃあるまいし……普段から訓練してへん物を易々と扱えるわけないやろ」
〔だね、選ばれてるとか選ばれてないとか関係ないよ〕
「もうええかげん諦めろ……お前一人では俺らには勝てん!! お前は騙されてるねんて、悪いようにはせぇへんから、大人しく降参してくれ」
「ふざけるな……ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁっ!! どいつもこいつも……ボクをコケにしやがって……こうなったら……奥の手を見せてやる!!」
転がりながら武光と距離を取った京三は、ポケットから人形を取り出し地面に置いた……影魔獣の元となる影を作り出す為の人形だ。
……その人形は異様な姿をしていた。
巨大な鰐を思わせる四足歩行の下半身と四本腕の人型の上半身を繋ぎ合わせたような怪物だ。
京三はもう一本持っていた操影刀・双頭蛇を影に突き刺した。片方を人形の影に、そして、もう一方を……自分の影に。
双頭蛇の柄にはめ込まれた宝玉が妖しく光り、怪物の影が、実体を持って立ち上がった。
立ち上がった異形の影魔獣は、身長2.5mはあろうかという巨体を震わせ、叫びを上げた。
「殺す……殺してやるぞォォォォォッ!!」
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