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イザベラの誕生日

舌は入れないわよ【パリナside】

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 イザベラのお屋敷の前で見送りに出たイザベラが、

「今日はありがとうございました、お姉さま、パリナさま」

「当然でしょ、妹の誕生日なんだから」

 エニスが言い、

「そうよ、イザベラ」

 私も答えてから、一緒にイザベラと見送ってるクララとカルネを見て

「2人は今日、イザベラの家に泊まるのよね?」

「はい」

「明日も一緒ですから」

「分かってると思うけど、飲酒はダメだからね」

 風紀委員長の癖がまだ抜けていないのか、そんなおかたい事を言ってしまったわ。

「飲みません」

「お酒なんて飲んだ事ありませんよ、パリナさま」

「もちろんです」

 と3人が答えたので、

「じゃあね、イザベラ。ちゃんと食べるのよ」

「はい、お姉さま」

 そんな挨拶をして、私とエニスを乗せた狼車は出発したんだけど、エニスが私を見て、

「お姉さま、私、春の乙女祭で優勝しました」

「ええ、知ってるわ。優勝おめでとう、エニス」

 イザベラの誕生会でも祝福したけど、再度私はそうエニスを祝福した。

 だけど、エニスの方はそれ以上の事を期待していたらしく、

「冬の乙女祭の優勝の御褒美はキスだったと記憶してますが」

「あのねぇ~」

 私は少し呆れながらエニスを見たのだけど、エニスが上目遣いでおねだりしたので、

「舌は入れないわよ」

 そう断ってから、私はエニスの唇にチュッとキスしたのだった。

 ドキドキッと胸が高鳴る中、キスを終えると、エニスが、

「やっぱり、お姉さまの唇は最高ですね」

「ったく」

 私も照れてしまい、自分でも赤面してるのが分かったので、その照れ隠しで、

「式典委員会が全員半殺しにあったそうね? その、退学とか?」

「そのあとも悲惨な末路らしいですよ。圧力を受けて、何とか修道院行きで見逃して貰えたのが3人、娼館行きが20人以上、圧力を無視して家が潰されたのが最低4家、一家で夜逃げしたのが4家」

「それって誕生会に出席してたセーラの妹のあのラディーゼル公爵の令嬢がやったのよね?」

「いえ、本人は知らないと思いますよ。後始末は周囲が勝手にやったっぽいです」

「さすがは大物貴族よね」

 私が呆れる中、

「今日のドレス姿も素敵ですよ、お姉さま」

 エニスが青ドレスを纏った私を改めて褒めてくれた。

「ありがと。アナタも素敵よ、その地竜のドレス。少し露出があり過ぎるけど」

 私はエニスのドレスを見て改めて褒めた。

 エニスのドレスはエニスが狩った地竜の貴重な素材で作ったドレスだった。

 素材の色は緑色。ストラップレスドレスだったので、肩や腕の肌が完全に露出している。

 今日のイザベラの誕生日パーティーは参加は女子だけだったけど、魅力的なエニスが普通のパーティーにこのドレスで出席したら異性の視線が集まるに決まってるわ。

 そもそも地竜の貴重な素材でドレスを作るなんて。

 パーティーでの戦闘でも考慮してるのかしら?

 私がエニスを見てると、エニスが笑顔で、

「お姉さまを誘惑する為に肌の露出するドレスを作りましたぁ~」

 普段通りに馬鹿な事を言ってきた。

「はいはい、言ってなさい。ったく」

「そう言えば今日は時折、考え事をされてますけど、何かお悩み事でも?」

 心を見透かしたように私に質問してきた。

「・・・そう見える?」

「はい」

 そう言われて、溜息を吐いた私はエニスに打ち明けるように、

「貰った騎士侯2つの分配で揉めててね、一族が」

「? お姉さまが貰ったんですよね? なら、お姉さまが好きにされれば・・・」

「ウチの一族ではそうはならないのよ」

「大変なんですね」

「ええ、どうすればいいと思う?」

「そんなに揉めるなら新王陛下に返上するって言っちゃえばどうです? 現に王妃様があんな事になってますから」

「その考えはなかったわね。ありがと、エニス」

 私がエニスの意見の妥当性を考慮しながらお礼を言うと、

「お礼はキスがいいな、私」

「ったく、エッチな妹を持って苦労するわ」

 私はエニスの唇に軽くキスして、エニスの下宿する騎士団長の屋敷に着くまでエニスと手を繋いで喋ったのだった。
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