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1年1学期の中間テスト、打ち上げ、東条院の宗家屋敷の邪気浄化作業終了

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 5月下旬。

 青龍大学の高等部は中等部の時同様、この時期に1学期の中間テストがあった。





 ◇





 火武祭が終わった5月中旬。

 一年以組の教室では担任の真達羅通春菜が、

「田中、関、榊、中村、火武祭は御苦労様。そして火武祭が終われば次は中間テストね、みんな」

 と話し始めた訳だが、何故か青夜だけを見て、

「分かってると思うけど手を抜かないようにね。特に田中、赤点は取らないように」

「ヤダな、春菜センセー。オレ、中等部でもペーパーテストは平均点ですよ」

「故意によね?」

「もちろん」

「実技テストの測定で今更、赤点は取らないわよね?」

「ええ」

「田中と同じクラスだった榊と浅野もそうなのよね?」

 確認するように春菜が榊弁真と浅野陽香を見ると、

「以組の一員としてそれなりに頑張ります」

「はい」

 2人も同意した。

「テストかぁ~。苦手なんだよなぁ~」

 テンションの低い関三宝兎が呟く中、春菜が、

「安心なさい、関。青龍大学ではペーパーテストで赤点を取っても補習はないから」

「そうなの?」

「ええ、問題なのは異能力を測る実技テストの方だから。まあ、以組は大丈夫でしょう」

 そう春菜が断言したのだった。





 ◇





 中間テストが始まった。

 但し、異能力者育成機関の為、テスト内容は一般の学校とは完璧に掛け離れていたが。

 何せ、ペーパーテストも異能力の歴史や一般常識に関する内容の物ばかりだったのだから。





 青龍大学の高等部1年1学期のペーパーテストの一部を抜粋すると、





 歴史科目。

 問い、平安時代の関東の豪族、平将門の本物の見分け方を次の中から選べ。

 1、髭。

 2、影。

 3、桔梗の匂い。





 『平将門って誰だ』と思うかも知れないが異能界では有名人だ。

 三択なので実に簡単だった。





 道具科目。

 問い、この図柄は何の効果のお札なのかを答えよ。





 それでお札の図柄があるだけなのだが、1年生の1学期なのでお札の文字は漢字を図柄のように書かれてまだ・・読めるので簡単だった。





 薬学科目。

 問い、二級霊草、冬虫夏草を使って腕の骨折個所を瞬時に治す効果のある中級回復薬(錠剤)を作る際に必要なグラム数は次の内どれか答えよ。

 1、10グラム。

 2、100グラム。

 3、1000グラム。





 三択問題なので簡単だ。





 一般教養科目。

 問い、今年の吉の方位を総て答えよ。





 『どこが一般教養だ』と思うかもしれないが異能力者なら分からない方がおかしい問題だ。

 因みに、ひっかけ問題でもある。今年の吉方は1つだけなのだから。





 同じく一般教養。

 問い、今年の凶の方位を総て答えよ。





 異能力者には本当に一般教養問題だ。尚、凶の方角は今年は二方向だった。





 ◇





 ペーパーテストだけではない。

 異能力者育成機関の青龍大学には異能力の実技テストも存在する。

 実技テストの方がクセモノで、『実技テストが低い』と放校や退学もあり得た。

 何故なら『実技テストが低い』という事は『異能力がない』という事を意味するのだから。





 1年生の1学期の中間の異能力の実技テストは・・・

 測定器にゼロ距離で『念』や『気』や『魔力』等々を込めるものだった。

 早い話が数値の測定だが、測定するのは2種類。

 1つは制限時間の3分の間に数値を測定。これを2回。

 もう1つは1秒の間に数値を測定。これを5回。

 1回目の測定で生徒の地力を測り、2回目の測定で生徒の瞬発力を測った。





 実技テストなので1人ずつ生徒が検査室に入って測定する訳だが、青龍大学の高等部の1学年の生徒は青夜が入学式で暴れた所為で今や60人ちょっとだ。

 青龍大学の高等部には検査室が5つあるのでフルに活用すれば、1日で両方の測定が出来た訳だが・・・

 それでも2日間に分けて計測された。

 無論、理由は色々だ。薬品やアイテムを使っての一時的な『気』を上乗せに対する不正対策や女子の体調の起伏に考慮して等々の。

 3学年あるので、ペーパーテスト等々も加味して一週間は丸々中間テストの期間となった。





 ◇





 1学期の中間テストが終わった日、打ち上げと称する一年以組の集まりがあった。

 ファミレスではない。

 2週間前に火武祭の祝賀会で春菜が用意した高級レストランだ。

 打ち上げには春菜は不参加だったが、レストランを春菜が貸し切ってくれたので、打ち上げが催されていた。

 レストランのスイーツがテーブルに並ぶ中、自棄食いをする三宝兎が、

「全然ダメだったから。分からないって、関帝信仰と違う系統のお札の効果なんてさ」

 と文句を言った。

 高等部から青龍大学付属の坂田良子も同調し、

「お札は授業でやったから分かったけど、問題は一般常識のテストよ。あれ、何? 授業で一度も習ってないのに、さも当然のように出題されてたわよ」

 文句を言ってた。かなり不評のようだ。

「田中君はどうだったの?」

 野々宮稲穂が問う中、青夜は高城貴文が毒味をした紅茶を飲みながら、

「ん? 80点にしておいたよ」

「何だ、それ?」

 三宝兎が問う中、青夜が、

「中等部の時はペーパーテストの方は平均点だったからな。高等部に上がってすぐに100点を取ったりしたら、さすがに中等部の先生達に悪いかなぁ~と思って」

「変な事に気を使うんだな、青夜は・・・待った。じゃあ、実技の測定は?」

「4000EPエネルギーポイント前後で止めておいたよ」

「はあ? そうなの? 私、全開でやって2万5000を越してたぞ?」

「えっ? ギン様、EPが2万5000を越えてるの?」

 稲穂が驚く中、

「ダメなのか、イナ?」

「いえ、それだと国内ではトップクラスで、青龍大学の高等部でも最高記録だと思うわよ?」

「トップの青夜が手加減してるのにか?」

 褒められた三宝兎が嫌そうな顔でそう返し、その後もワイワイと打ち上げを続けたのだった。





 ◇





 さて。

 同時刻、東条院の宗家屋敷では東条院の分家や一党達が集まり、藤名金城が行う邪気の浄化作業を見つめていた。

 邪気の浄化終了予定は7月上旬だったが、5月下旬の段階でもう邪気はかなり薄れ、本日の浄化作業で完全に消え去る予定だった。

 ここまで邪気の浄化が早く進んだ理由としては柴咲金猿を東条院の食客にした事が挙げられた。

 神気覚醒した金猿が神事相撲の奉納の儀式『四股』を踏み、地道に邪気を浄化し続けていたのだ。

 だが重要なのはこれから行う邪気の浄化作業で、現在金城の手には東条院の秘宝『三夜鈴』があった。

 宗家屋敷の宝物庫内に安置されてるとばかり思われていたが外部に持ち出されており、青夜が回収した事で、東条院の宗家屋敷に籠もった邪気を吉日、並びに宮内庁の使用許可を得て、本日使用する運びとなったのだ。

 東条院の宗家代理の金城でさえ、いささか緊張気味に、

「では」

 遂に握っている三夜鈴を振った。





 リリーンッ。





 神々しい音色と共に聖なる強烈な波動が三夜鈴から周辺一帯に放たれる。

 その強烈な聖波動によって、まだまだ薄黒い邪気が漂っていた宗家屋敷の敷地内の邪気が一気に、そして一瞬で浄化された。

 今や宗家屋敷の敷地内には清らかさを通り越して神聖な粒子がキラキラと漂っている。

「おお、遂に・・・」

「やりましたな、宗家代理」

「何と清らかな。さすがは東条院の秘宝『三夜鈴』」

「だが、鈴の方は・・・」

 金城が持つ三日月型の鈴は完全に零力を失っていた。

 『ふぃ~。割れんで助かったわい。伝承では割れるらしいからのう。もし割れたら若様に何を言われるか』と内心で冷や汗を掻いた金城が、

「総ては副宗家が『三夜鈴これ』を取り戻して下さったお陰じゃわい」

 懐に『三夜鈴』をしまってから、

「では、まずは宝物庫の中を確認するかのう。他に紛失していない物がない事を祈ろう」

 こうして金城達は東条院の宗家屋敷に異常がないかの捜索に入ったのだった。





 宝物庫の方は大丈夫だった。

 盗まれた宝具もなかった。

 何故なら東条院法子が東条院の秘宝の『上から4つ』を盗んでおり、他の宝物は盗まれた4点と比べると大した事がなかったからだ。





 まあ、他の宗家屋敷の場所は散々だったが。

 何せ、4月1日の時点から手付かずでそのままなのだ。

 厨房では用意されていた酒のつまみが総て腐っており、冷蔵庫の中も含めて大惨事だった。

 他は料理が残っていた『生誕の儀』の会場となった広間や、護衛達にも料理が振る舞われたのか、庭のあちこちで腐った料理が散乱していた。

 ともかく掃除は必要だったが、こうして東条院の宗家屋敷の使用は可能となったのだった。
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