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デート中に異能力者に邪魔される

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 青夜がバイトの話をしたのは服が欲しかったからだ。

 何せ、自分の服を自宅から持ち出せなかったので。

 それらの経緯から、暇で青夜の事を気に入ってるアンジェリカが買い物に付き合ってくれる事になった訳だが。

 青夜は白塗りのリムジンカーに乗っていた。

「マジでBB財団の支配人なんだね、アンジェリカお姉さんって?」

「分かるの?」

「前後に警視庁のパトカーの護衛付きの外務省ナンバーのリムジンカーなんてBB財団くらいだからね」

「護衛は仕方がないのよ。どういう訳か右翼系の異能力者に狙われてるから、BB財団うち。それよりもどう? リムジンカーでセレブの金髪美人に密着するように抱き付かれてる心地は?」

 本当にアンジェリカはリムジンカーの広々空間の中で、何故かピッタリと青夜に身体を寄せていた。

 お陰でアメリカサイズの胸の膨らみが青夜の腕で弾んでいる。

 さすがはハグ大国のアメリカ人ハーフだ。距離感が日本人とは全然違った。

「そりゃ嬉しいよ」

「本音は?」

 青夜は思春期真っ只中なので本当に嬉しいのだが、

「BB財団系の幹部なら完全に『恐竜因子手術』だなぁ~って。ついでに言えば日本支部の支配人は怪鳥タイプの『プテラノドン』だったなぁ~って」

 恐竜因子手術の話はアンジェリカにとっては不機嫌になる禁句だ。

 だが青夜だったので特別に許した。

「ちょっと詳し過ぎない? それ、一応、雑魚は知らないトップシークレットよ? 世間的には『リザードマン技術』って事になってるし、私の『種類』も本当は秘密なのに」

「そりゃ、これでももと東条院だからね」

「嫡男は無能だって聞いたけど違うのね」

「いやいや、無能だよ。でないと田中家に養子になんて出されないから」

 そう青夜はとぼけたのだった。





 さて、アンジェリカとのショッピングだが青夜は当初、胸を躍らせていた。

 青夜は東条院宗家の嫡子だったので、店で買い物などした事がなかったのだ。

 店に出向かずともオーダーメイドの店員が寸法を測りにやってくるし、使用人がクローゼットの中にサイズがピッタリの服を入れてるのだから。

 そんな訳で店に出向くのを楽しみにしていた訳だが、アンジェリカと向かった先は都内にあるBB財団の日本支部の自社ビルだった。

 自社ビルの19階の来賓室に店側が商品を持ってやってきた時には青夜は心底ガッカリした。

 そんな青夜の心情を知る由もないアンジェリカが値札も見ずに見繕う。

 全部、海外ブランドだ。洋服の本場はイタリアやフランスらしい。1着何十万もする服や靴を青夜はアンジェリカに買って貰った。

 まあ、青夜もお坊ちゃんなので値札などは見なかったが。

 こうして春物の服を一通り購入して、その一着に青夜は着替えたのだった。

「ありがとね、アンジェリカお姉さん」

「はい、これもね」

 ペンダント型の護符タリスマンだった。

「おっ、『天使系』の『守護』か。でも、これ、居場所がバレバレじゃない?」

「一目で見抜かないでよ。優秀過ぎない、青夜って?」

 そう呆れられたが『呪い』等々は込められてなかったので青夜は気軽に首から掛けたのだった。





 服を購入後、青夜はアンジェリカと一緒に都内観光をした。

 青夜は本当にお坊ちゃんだったので、これまで都内観光などした事がなく、15歳な事も手伝って都内の水族館ごときで大ハシャギした訳だが、その際にマジで異能力者の襲撃があった。

 気付いた時には『人払いの法』で水族館の中が無人になっており、

「これはこれは、BB財団の日本支部の支配人様ではありませんか。護衛も連れずに都内を歩き回るなんて不用心過ぎませんか?」

 春休みのはずなのに学生服を着た茶髪男が何やら好戦的に話し掛けてきたので、興醒めとばかりに青夜が、

「今、デート中だから出直してくれない?」

「東条院宗家の廃嫡された無能者は黙ってろ」

 と言われたので説得は無理だと判断した青夜が指をパチンッと鳴らした。

 すると茶髪男が、

「ニンニン、そうでゴザルな。デート中に失礼したでゴザル。また日を改めるでゴザルな」

 変な喋り方で納得して帰っていった。

 直後に『人払いの法』が解けて一般客も姿を見せる中、青夜が、

「いやぁ~、説得してみるもんだね。話が通じて助かったよ」

 そうとぼけたが、相手に何をしたかは無視してアンジェリカは意味深な視線で、

「デートなの、これって?」

「ダメかな、アンジェリカお姉さん?」

「デートならアンって愛称呼びがいいわ、私」

「じゃあ、アンお姉さん」

「お姉さんもなしで」

「アン」

「他には?」

「?」

「『可愛い』とか『愛してるよ』とか『今夜は帰さない』とか」

「初デートでそれはないかな。まあ、綺麗なのは知ってるけど」

 そう青夜が褒めると、喜んだアンジェリカは腕を組んで胸に押し当てたのだった。
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