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アンジェリカが日本に居るのは

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 アンジェリカの母方の系譜はアメリカ合衆国を陰から支配するブラッディームーン一族だ。

 その歴史はアメリカ合衆国の独立戦争以前にまで遡る滅茶苦茶な一族で、アンジェリカの母親のエリザベートはブラッディームーン一族の本流も本流の血統だった。

 その高貴な一族のエリザベートがアメリカ合衆国に仕事でフラッとやってきた日本人と結婚したのは無論、占いーー占星術の所為だ。

 占星術だからと言って馬鹿には出来ない。

 異能がある世界では、占いは言わば『未来予知』なのだから。

 ブラッディームーン一族のお抱え占星術師ならアメリカ合衆国の最高峰、世界でも屈指の占星術師だ。

 その占いは百発百中と言ってもいい。

 数百年のスパンで『その男との子がブラッディームーン一族の繁栄に繋がる』と占星術に出たのなら、既に2度結婚している英語が片言の日本人、田中一狼とも結婚するのがブラッディームーン一族の令嬢としての務めだ。

 そうして生まれたのがアンジェリカで、用済みになった父親の一狼とはさっさと離婚したのだった。





 そのアンジェリカは5歳の時に呪われた。

 ブラッディームーン一族は恨まれてる事が多かったので(実際に逆らった一族抹殺等々の事をしてるので)呪われた理由は報復だろうが、その呪いは『インディアン系の悪霊』とアメリカ合衆国ではオーソドックスなタイプだったが強力だった。

 ブラッディームーン一族の権力を持ってしても、呪いを祓える異能者を探し出す事が出来ないほどに。

 お陰でアンジェリカは5歳から呪いが解呪されるまで死ぬほど痛い目に遭っていた。

 占星術で『5年後の10歳の時に日本で治療される(つまり死なない)』と出ていたらしく、大人達は楽観視していたが、呪いの激痛の所為でアンジェリカは本当に死ぬほど苦しんだ。





 そして、10歳の時、占星術に従って訪日。

 日本中の凄腕の解呪師に見せて回った。

 その1つが東条院の宗家だ。

 アンジェリカはブラッディームーン一族。その上、呪われてる。

 向こうが出向くのが普通だが、東条院というのはナメた一族で、アンジェリカの実父の一狼の格が低い事から『出向け』と言ってきて出向く破目になった。

 更に『解呪は失敗』というおまけ付きだ。

 ガッカリしながら帰ったが、翌朝に呪いは解呪されていた。

 前日、またはここ数日の内に、解呪を試みた解呪師の誰かの解呪が後発的に効果を発揮したのだろう。

 それが大人達の見解だったが、アンジェリカには誰が解呪したのか分かっていた。

 激痛でうなされる中、夢に出てきた日本人の少年だ。

 日本語なので何を言ってるのか分からなかったが、茶目っ気たっぷりに唇に人差指を立てた、

「しぃ~」

 というジェスチャーだけは理解出来た。

 だからアンジェリカはその少年の事を誰にも言わなかった。





 呪いが解呪されて本国に戻ったアンジェリカはブラッディームーン一族の本流としての英才教育を受けた。

 学校などには通学しない。総て家庭教師で済まされた。

 ブラッディームーン一族なので異能の訓練もある。

 アメリカ合衆国では先天性の異能を損なわない身体強化系の『恐竜因子手術』が確立しているが、それは雑魚が受ける手術だ。ブラッディームーン一族の令嬢が受ける手術じゃない。なので断ったのに、15歳の時、睡眠薬を盛られて勝手に手術された。

 発現した因子が鳥型の『プテラノドン』で飛行能力を得たのが唯一の救いだったが、その時からブラッディームーン一族には内心で反発しており、17歳の時に計画的に家出(事前に親権を日本に居る父親の一狼に移す等々をして。日本語は英才教育の一環で習得していた)。

 ブラッディームーン一族は黙認で、BB財団の日本支部の支配人をするのが日本に住む条件となって田中家に転がり込んだ。





 その2年後、父親が養子を取った。

 養子が来た時、裸だったのは単純に『その日だ』と忘れていたからで『運の悪い奴。私の裸を見たんだから殺そう』とチラッと考えたが、その養子の顔を見て『ん? 誰かに似てるわね。誰だったかしら?』と思考に引っ掛かった。

 興味を覚え、眼の前に移動して確認し、『あの時、解呪してくれた子供だ』と遅蒔きに理解した。

 面影があるし、本能も『そうだ』と告げてる。

 15歳でまだ背は低いが、あの激痛を助けてくれた相手に『好意を持つな』っていう方が無理な注文だった。
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