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本編

新武器の確認とツイてない男

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 集中治療室で徐瀬芙蘭が意識を取り戻した後、東行医大総合病院のVIP専用の個室にて、

「ママ、どうして入院しないと駄目なのよ? 私、どこも悪くないわよ」

「今はもう消えてるけど、背中に重傷を負って死に掛けてたんだから数日は我慢なさい。柚子太くんだって高熱で倒れた時、入院したんだから」

「それは柚子太が一人暮らしで不摂生をしたからでしょう」

 完全にナノマシン戦闘員の記憶が抜け落ちてる蘭が母親と揉めたが結局は入院する事となり、

「明日にまたお見舞いに来るから」

「柚子太は来ないで」

「ーーどうして?」

「入院中は髪も整えられないからよ」

「えっと」

「柚子太くん、蘭の乙女心を尊重して上げてね」

「では退院祝いには呼んで下さいね」

「ええ」

 などと言って別れて、東行医大総合病院を後にしたのだが、





 新しい武器が手に入ったら試したいのが人情というもので。





 柚子太はプロジェクト予測を確認してサクッと戦術ランクDのブルーフィールドに遊びに来ていた。

「いいな、このドーン」

 そして入手したレイアサルトライフルの使い勝手の良さに御機嫌になっていた。

 銃身の先端にはレイダガーが完備されていて接近戦も出来る。射撃は連射、短連射(3発)、単発の3段階にモードが変更可能。両手で持たなければならないのが難点だが、この武器一つで総てが事足りた。

 艦長用ヘルメットも良い。キングだからか、センサー類もかなり広範囲で、というか戦術ランクDの縦横6キロのブルーフィールドの全域を覆っている。

 通信も出来て、エアバイクを使ってる味方のビーコンの二人に向かって、

「そっちの二人、エアバイクを持ってるって事はエクセレントクリアを取った事があるんだよね? 戦術ランクDのエクセレントクリアのボーナスはレイシールドでそれを狙ってるからフィールドボスを倒さないで貰えるとありがたいんだけど?」

『あれ、その声、柚子太なの?』

「もしかしてハリー? 夜ふかしは美容の大敵だぞ?」

『まだ23時台でしょうが。ってか自宅に居て仕方なく対処してるだけだから』

「一緒に居るもう一人もプロジェクトに噛んでるの?」

『私よ』

「エリ姫? エリ姫がどうしてーーああ、二つ星狙いで」

『そういう事よ。合流は必要ないわ。敵機を潰して回って』

「了解」

 意思統一を図った後、柚子太は加速ブーツを使って、葉里と絵梨はエアバイクの二人乗りで戦術ランクDを蹂躙したのだが、

「嘘でしょ? 柚子太は走ってるのよね? どうしてエアバイクの私達よりもハイペースで敵を倒してるのよ」

「まあ、柚子太だからね」

 運転席の葉里が驚き、後部席の絵梨が呆れる中、ブルーフィールドの敵機の殲滅は続き、三人は簡単にエクセレントクリアを出したのだった。





【戦術ランクDのブルーフィールド、エクセレントクリア。クリアボーナス、全ステータス数値+2。ナノマシンの成長ポイント、200ポイント。アイテムを1つ選択出来ます(制限時間5分)】





 但し、選択画面は、

 レイシールド-SSA33とレイシールド -A100の2点セット
 レイシールド-SSA33とレイシールド-AA75の2点セット
 レイシールド-SSA33とレイシールド-AAA50の2点セット
 レイシールド-SSA33とレイシールド-SAA25の2点セット

 だったが。





 やっぱり2回目以降は半分なのか?

 それともパーフェクトとエクセレントクリアの差?

 最後のSSAが二つの項目も消えてたし。

 う~ん。





 階級:二つ星
 スペシャルナノマシン【ビースト】
 敵機撃破スコア:1400→1482
 ナノマシン成長LV:21→22(ナノマシン成長ポイント1915→2115)
 NE370/370→375/375
 武器庫(次の武器庫解放は20):19
 メイン武器【レイアサルトライフル-307C・ドーン】
      【レイショットガン-88・Kアーサー】
 ガンファイト・威力/射程補正:8
 ガンファイト・継続/弾数補正:8
 肉体ナノマシン:20+α
 知覚ナノマシン:25+α
 精密ナノマシン:20
 肉体治癒ナノマシン:20+α
 NE回復ナノマシン:20+α



 武器庫リスト(スペース32/38→33/38)
 レイガン-LQ12・エチュード
 レイカン-LQ12・エチュード
 レイガン-A56・レクイエム
 レイショットガン-81・ダルク
 レイショットガン-88・Kアーサー
 レイアサルトライフル-307C・ドーン
 レイバズーカー10X-アポロン
 レイロッド-グランドキャニオン
 レイ電磁手榴弾-イエローローズ30
 レイ手榴弾-ウルフ10
 NEタンク100-1
 NEタンク200-7
 NEタンク400-3
 NEタンク500-3
 NEタンク700-4
 新兵用バトルスーツ-01ルーキーソルジャー
 滑空型バトルスーツ-16.2バッドオフィサー
 パワードスーツBE専用パイロットスーツ-17Eプロトオフィサー
 飛行士用ヘルメット-Bクイーン
 艦長用ヘルメット-Bキング
 加速ブーツ-04レッドキャップ
 加速ブーツ-06アシュラ
 レイシールド-A200
 レイシールド-AA30
 レイシールド-AAA50
 newレイシールド-SAA25
 レイシールド-SSA97→130
 治癒ナノマシン注射器(軽傷用)-3
 治癒ナノマシン注射器(重傷用)-1
 戦術ランクBCDE専用レーダー、スパイダーネット-BCDE
 戦術ランクD専用レーダー、スパイダーネット-D
 戦術ランクSSのエスケープチケット(使い捨て)
 戦術ランクBCDEのエスケープチケット(使い捨て)



 武器庫2リスト(スペース10/32)
 パワードスーツBEジャブ・兵装1aタイプ(スペース3)
 【チューンナップ中:完了まで68時間31分】エアバイク-GXアナコンダ(スペース2)
 BE専用パワードスーツ修理キット
 エアバイク修復キット
 NEタンク20-6
 NEタンク200-2





 ◇





 さて。

 4という数字は日本では縁起が悪いとされている。

 本日、柚子太は10秒フィールド、介護バトル、敵指揮官機、アサルトライフル試しの4回、ブルーフィールドで戦った。

 まあ、未来の技術のナノマシンやブルーフィールドに異変、などは起こらなかったが。

 プロジェクトの情報では1日の最多戦闘回数は6戦。

 それでも身体に何の影響もなかったらしいので。

 だが運が落ちたのは確かだろう。

 ようやくルームシェアしているマンションに帰るべく、3車線の幹線道路を柚子太が乗る高級車が走っていたら、横に同じく高級車が並走してその後部ドアの窓が開いて、ワンピース姿の緋位多怜が手を振ってきて、柚子太が笑した時、





【ブルーフィールド展開、戦術ランクA、フィールドカウント121分20秒】





 とのアナウンスともに、本日5度目のブルーフィールドが唐突に展開されて柚子太は巻き込まれたのだから。





 戦術ランクA。

 このブルーフィールドは滅多に発生しない。

 例え、そのブルーフィールドに偶発的に巻き込まれたとしても、未来の人類が「まだ現地の戦闘員達が死ぬだけだ」と判断して、戦闘員を逃がす為の安全措置が施される。

 それが戦術ランクAなのだ。

 だが、柚子太の階級は二つ星。

 「戦術ランクAのブルーフィールドでも制圧出来る」とのの判断なのか、エスケープゲートの設置情報は出なかった。

 更に問題なのが。

 総てが停止して無人のはずのブルーフィールドの世界で、並走してた高級車に乗った緋位多怜がまだ存在している事実である。





【軍籍停止戦闘員、緋位多怜の戦線復帰を二つ星権限で認めますか? 認める場合はイエス、認めない場合はノーを選択して下さい(制限時間なし)】





 こんな表示までが出ていた。

(まさかの高難度の戦術ランクAで介護バトルって、あり得ないだろ。運にも見放されたかーーいや、蘭が生きてるんだから使った運の分、不運が舞い込んだ?)

 柚子太はバトルスーツを纏いながら、ノータイムで緋位多怜の戦線復帰を認めた。





【軍法イエローの軍籍停止戦闘員、緋位多怜が二つ星戦闘員の権限でブルーフィールドに戦線復帰しました】





「えっ? ーーああ、これって、あの時の」

 記憶が戻ったのか納得した怜がバトルスーツを纏って車を降りた。

 ブルーフィールド終了後に車に乗ってないと不自然だからだ。

 下車して同じく全身タイツに身を包んだ柚子太に、

「ってか、先輩もそうだったんですか?」

「まあね。因みにオレが強いのは男の戦闘員に限り、ブルーフィールド終了後の24時間? くらい現実でもナノマシンの恩恵があるからだぞ」

「それってズルじゃないですか」

「だからズルだって言っただろ」

「でも私、これに参加する気ないですからね」

「じゃあ、ここで大人しくしていろーーは拙いか。仕方ない。オレの背中にしがみついてろ」

「もしかしてエッチイ事、期待してます?」

「このバトルスーツ越しだと何も感じないから安心しろ」

「へ~、誰かで実験済みなんだ~」

「ほら行くぞ」

 ヘルメットを被って足に加速ブーツを装備した柚子太が背中を見せ、

「慣れてますね」

「まあな。これでも成長LV21だし」

「凄いんですか?」

 遠慮なく怜が身体を預けると柚子太が立ち上がり、

「男はhardモードだから多分な。それよりも、もっとしっかり両足でオレの腰を挟め」

「どうしてです?」

「振り落とされるからだよ」

「はあ」

 仕方なく怜が両足で柚子太の腰を挟んだ瞬間、

「行くぞ」

 その言葉と同時に柚子太は走ったのだった。

 100メートルを2秒で。

「ちょ、きゃあああああ」

 それも一直線じゃない。

 ムシに向かって進んで、敵機がビームを撃つ前にレイアサルトライフルの先端に付いてるレイダガーで攻撃して更にプロペラに向かって1発銃撃して、もう1機のプロペラも撃破してビルの壁に張り付いたムシ2機に壁走りで接近してレイダガーで撃破して、地上に戻って、その100メートルを2秒だ。

「ま、待った、先輩。何ですか、今のスピード?」

「加速ブーツを履いてるからな」

「どうやって取れるんです、それ? アイテムですよね?」

「ブルーフィールドを72キロ移動してたらフィールドランのボーナスで出て」

「私、今から走ります」

 加速ブーツが欲しくなった怜がノータイムでそう言った。

「ブルーフィールドはやらないんじゃないのか?」

「やりますよ、こんなに面白いんだったら。未来の戦争とかいう情報がつまらなそうでやらなかっただけですから」

「ふ~ん。あっ、そうだ。連中、素手でどれだけ殴っても無駄だからな」

「えっ、そうなんですか?」

「ああ、NEナノマシンエネルギーは大切に使えよ。ってか、成長LVはいくつなんだ?」

「1ですけど」

「マジか~」

「馬鹿にしてます?」

「いいや。このブルーフィールドのデスゲームっぷりに呆れてるだけだ。これだと何人も死ぬと思ってな」

「そうだ。バレると思いますから先に白状しますけど。私、学校で喧嘩した剣道女、見殺しにしてますよ・・・先輩はどう思います?」

 試すように怜は質問したが、柚子太は赤の他人にはドライな性格なので、

「命賭けの戦場だぞ? 後ろから撃つならともかくその程度ならありだろ」

「えっと、私は見捨てませんよね?」

「可愛い後輩だからな」

「本音は?」

「ん? 『緋位多一族なら戦力になりそうだから』って下心って意味か? それはないな」

「あれ、そうなんですか?」

「だって、おまえ、弱いし」

 柚子太がさらっと言い、怜が、

「私にその言葉を吐いたの先輩が初めてですよ。なら本当に可愛いと思ってる?」

「ツラとスタイルと先輩を立てれる性格はな。但し、血統が可愛くないんだよな~。手を出したら各方面から怒られそうだし。特に宮内庁の裏関係」

「あっ、私、本家じゃないからそれほどですよ」

「本家とか言ってる時点で駄目だろ」

「確かに」

 と喋ってるとムシが寄ってきたので、

「お喋りはここまでだ。行くぞ。確か女の戦闘員は成長LVが上がるとNE全容量が回復する仕様のはずだ。それに成長ポイントも3ずつ加算されるらしい。男の戦闘員はゼロなのに。それでステータスの数値の武器庫を上げていくぞ。ああ、ナノマシンのステータスの数値は30以上げるなよ。丸2日ぶっ倒れるからな」

「さすがは上級者。色々と知ってますね」

「武器は持ってるのか?」

「はい、初期装備のを」

 怜が出したのはエチュードだった。

「マジか~」

「ちょいちょい馬鹿にしてますよね」

「してないぞ。道理でやる気がないと思ってるだけで。耐久値の低いのを残してやるから倒せよ」

「は~い」

 こうして柚子太と怜は戦術ランクAのブルーフィールドに挑んだのだった。

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