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アテニナ・バスラ生尻折檻事件
私は悪くないのに【セーラside】
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クワナリス伯爵家の屋敷の執務室で私は王宮から急ぎ戻ってきたお父様に氷点下まで冷め切った眼で睨まれながら、
「で? どうしてエニス嬢を止めなかった?」
と質問されたので、正直に、
「止めましたよっ! すぐに駆け付けてっ! バスラ公爵家の令嬢もちゃんと保護しましたしっ!」
と答えたのだけれど、お父様は不機嫌そうに、
「保護した? 遅過ぎるだろうが? バスラ公爵家の令嬢が皆の面前でお尻を丸出しにされて叩かれてるんだぞ? そんな屈辱を受けて、これからバスラ公爵家がどう動くと思ってるんだ? 最悪、私刑で殺されるんだぞ、クワナリス家は?」
確かに、向こうは魔法兵団長で、こっちは騎士団長の家柄ですけど、公私混同具合は向こうの方が上ですもんね。
いくら、お父様が陛下の無二の親友でも無理かも。
そんな事を思いながらも私は、
「お父様に一応言っておきますが、やったのはエニスさんで私は何も悪くありませんから」
「そんな言葉、バスラ公爵家に通じると本気で思ってるのか?」
とお父様が答えた時、屋敷内に居たお父様の側近の騎士が、ドアからノックもなく入室してきて、
「魔法兵団長、ーーバスラ公爵が屋敷にご到着されました」
「公爵だけか?」
「まさか、そんな訳が・・・・・・屋敷は魔法兵団1000人に包囲され、周囲は完全封鎖されています。どう見ても戦闘態勢です」
「そうか」
と呟いたお父様が、
「娘の失態で今日、死ぬ事になる訳か。あの世で死んだ妻に会えるから、まあいいか」
嫌味ったらしく私を見た。
私は全然、悪くないのにっ!
それどころか、私は的確に最善手を打って、被害を最小限に抑えた功労者なはずなのにっ!
そう思ってると、バスラ公爵が執務室のドアを潜った。
金髪で【覇眼】のナイスミドル。
名前はアデール・バスラ。
バスラ公爵家の当主にして、魔法兵団長を務める。
見た事があるので間違いない。
魔力量も高い。
これで影武者だって事はないだろう。
そして、嫡男の金髪【覇眼】の美青年、アデトス・バスラも一緒に乗り込んで来ていた。
バスラ公爵家の人間2人だけで、護衛もなし。
まあ、【覇眼】使いが2人も居れば、クワナリス伯爵家を潰すくらい余裕でしょうけど・・・
舐められてるわね、完全に。
「騎士団長、エニスってのを血祭りにするから邪魔するなよ?」
バスラ公爵が言う中、
「返り討ちにされるのがオチですよ」
とお父様が溜息を吐いた。
「あの女の異常さは知ってる。北の森の3頭の災害級を潰した事も。だが娘を辱められて引き下がれる訳がなかろうが」
「ですが・・・」
「差し出すのか、盾になるのか、どっちだ?」
「職務ですので盾に・・・」
とお父様が言った瞬間、2人の【覇眼】が怪しく輝いた。
【覇眼】は魔眼や邪眼の類だ。
精神系を侵すので、私は自分の意志とは関係なくビクンッと背筋を正し、直後に身体がまったく動かなくなった。
お父様はどうかしらないけど。
直後に、ドアが蹴破られて、
「そこまでよ、魔法兵団長」
乱入したのは屋敷に現在下宿してるホルーテさんだった。
へぇ~。まだ居たんだ。
律儀ね。メボ伯爵家に帰れば良かったのに。
「黙ってろ、小娘。おまえ以外のメボ家など瞬殺出来るんだぞ、こっちは」
バスラ公爵の脅迫で、ホルーテさんは動けなくなった。
「でも・・・」
「大人しくしてろよ。大人の世界に口を挟むのはまだ早い」
あらら。
これまでのようね。
と思ってると、執務室の開いたドアの廊下から、
「バスラ公爵家の御令嬢がお起こしになられました」
視線に入ってないので、誰が報告したのか分からなかったけど、直後に、
「お父様、お兄様、何をやってるの?」
バスラ公爵家のあの時、ミリアリリー女学園の廊下で泣いてた御令嬢が執務室に入ってきて、そう2人に言ったのだった。
「で? どうしてエニス嬢を止めなかった?」
と質問されたので、正直に、
「止めましたよっ! すぐに駆け付けてっ! バスラ公爵家の令嬢もちゃんと保護しましたしっ!」
と答えたのだけれど、お父様は不機嫌そうに、
「保護した? 遅過ぎるだろうが? バスラ公爵家の令嬢が皆の面前でお尻を丸出しにされて叩かれてるんだぞ? そんな屈辱を受けて、これからバスラ公爵家がどう動くと思ってるんだ? 最悪、私刑で殺されるんだぞ、クワナリス家は?」
確かに、向こうは魔法兵団長で、こっちは騎士団長の家柄ですけど、公私混同具合は向こうの方が上ですもんね。
いくら、お父様が陛下の無二の親友でも無理かも。
そんな事を思いながらも私は、
「お父様に一応言っておきますが、やったのはエニスさんで私は何も悪くありませんから」
「そんな言葉、バスラ公爵家に通じると本気で思ってるのか?」
とお父様が答えた時、屋敷内に居たお父様の側近の騎士が、ドアからノックもなく入室してきて、
「魔法兵団長、ーーバスラ公爵が屋敷にご到着されました」
「公爵だけか?」
「まさか、そんな訳が・・・・・・屋敷は魔法兵団1000人に包囲され、周囲は完全封鎖されています。どう見ても戦闘態勢です」
「そうか」
と呟いたお父様が、
「娘の失態で今日、死ぬ事になる訳か。あの世で死んだ妻に会えるから、まあいいか」
嫌味ったらしく私を見た。
私は全然、悪くないのにっ!
それどころか、私は的確に最善手を打って、被害を最小限に抑えた功労者なはずなのにっ!
そう思ってると、バスラ公爵が執務室のドアを潜った。
金髪で【覇眼】のナイスミドル。
名前はアデール・バスラ。
バスラ公爵家の当主にして、魔法兵団長を務める。
見た事があるので間違いない。
魔力量も高い。
これで影武者だって事はないだろう。
そして、嫡男の金髪【覇眼】の美青年、アデトス・バスラも一緒に乗り込んで来ていた。
バスラ公爵家の人間2人だけで、護衛もなし。
まあ、【覇眼】使いが2人も居れば、クワナリス伯爵家を潰すくらい余裕でしょうけど・・・
舐められてるわね、完全に。
「騎士団長、エニスってのを血祭りにするから邪魔するなよ?」
バスラ公爵が言う中、
「返り討ちにされるのがオチですよ」
とお父様が溜息を吐いた。
「あの女の異常さは知ってる。北の森の3頭の災害級を潰した事も。だが娘を辱められて引き下がれる訳がなかろうが」
「ですが・・・」
「差し出すのか、盾になるのか、どっちだ?」
「職務ですので盾に・・・」
とお父様が言った瞬間、2人の【覇眼】が怪しく輝いた。
【覇眼】は魔眼や邪眼の類だ。
精神系を侵すので、私は自分の意志とは関係なくビクンッと背筋を正し、直後に身体がまったく動かなくなった。
お父様はどうかしらないけど。
直後に、ドアが蹴破られて、
「そこまでよ、魔法兵団長」
乱入したのは屋敷に現在下宿してるホルーテさんだった。
へぇ~。まだ居たんだ。
律儀ね。メボ伯爵家に帰れば良かったのに。
「黙ってろ、小娘。おまえ以外のメボ家など瞬殺出来るんだぞ、こっちは」
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「でも・・・」
「大人しくしてろよ。大人の世界に口を挟むのはまだ早い」
あらら。
これまでのようね。
と思ってると、執務室の開いたドアの廊下から、
「バスラ公爵家の御令嬢がお起こしになられました」
視線に入ってないので、誰が報告したのか分からなかったけど、直後に、
「お父様、お兄様、何をやってるの?」
バスラ公爵家のあの時、ミリアリリー女学園の廊下で泣いてた御令嬢が執務室に入ってきて、そう2人に言ったのだった。
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