王立ミリアリリー女学園〜エニス乙女伝説・春の乙女祭編〜

春の乙女祭の優勝者

ベスト８が決まる【マリンピーチside】

　春の乙女祭の最終日。

　14人が試合を終えて（１試合が不戦）、ベスト８が決まった。





　３年生の幹部生徒のエニスさん。

　３年生の生徒会書記で、元風紀委員のリンダさん。

　３年生の生徒会会計のセーラさん。

　２年生のソラーサ。

　１年生の幹部生徒のカウービー・ルーンサード。

　１年生のコスモス。

　１年生のスコーピー。

　そして、３年生の風紀委員長の私。





　何とか風紀委員長としてのメンツは保てたわね。

　まあ、次の対戦相手はエニスさんだから勝てないんだけど。

　それよりも、注目すべきは春の乙女祭のベスト８に入学したての１年生が３人も残ってる事かしら。

　こんなの初はつなんじゃないかしら？

　それだけ今年の春の乙女祭は式典委員会が滅茶苦茶やったって事なんだけどね。

　うんざりだわ。

「では、第１試合、エニスさんとマリンピーチさんは試合場へ」

　呼ばれて私は摸擬刀を片手に試合場に上った。

　試合場で対峙したエニスさんに、

「ベスト８からは本気で行くから無理だと思ったら、すぐにギブアップしてね」

　そう言われたわ。

「あら、全力を出してくれるのね。嬉しいわ」

　私はそう言いながら、審判役のチェラーリ先生の、

「はじめ」

　との合図で戦闘態勢に入ったのだけど、対するエニスさんは御前対校試合の「あれ」をやってきた。

　魔力を全開放出。

　半径３メートルに紫色の魔力を纏って、摸擬刀を構えたエニスさんが、

「リリー式、剣撃突進っ！」

　と言って、型通りに突進してきた。

　動き自体は、これまでの試合の時のエニスさんよりも遅い。

　私はレコリーズ伯爵家の令嬢だ。

　レコリーズ伯爵家の特異能力は【加速】。

　なので、余裕で避けれるはずだったんだけど･･････

　でも、私は一歩も動けなかった。

　膨大な魔力量に飲まれて足が竦すくんだんじゃない。

　これは・・・・・・

「なっ？　魔力を私に絡めて、私の動きを封じてる？」

　私はこの技の真の意味を体感する事となった。

「分かった時にはもう遅いってねっ！」

　私から見たら遅い動きのエニスさんが模擬刀で私の喉に突こうとして、

「・・・参ったっ！」

　私は咄嗟に叫んだ。

　エニスさんの摸擬刀は私の喉の前で止まっていた。

　摸擬刀を引いたエニスさんが審判役のチェラーリ先生を見て、チェラーリ先生が私に、

「いいのね、マリンビーチさん？」

「はい」

「マリンピーチさんの敗北宣言で、勝者エニスさんっ！」

　チェラーリ先生の言葉で闘技場内からは歓声が上がった。

「よかったわ。意地を張らないでくれて」

「御前対校戦の対戦相手は意地を張ってた訳ね」

「っぽいわよ」

　エニスさんが手を出したので、私は健闘を讃えてエニスさんと握手を交わしたのだった。