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盤石
【侯爵side】脱出用のマジックアイテムが起動不良を起こす
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トルオンに夜盗退治の話を持ち込んだカモスモーの狙いは発展目覚ましいネレシオ領への破壊活動である。
これは『隣の貴族領が繁栄してるのに嫉妬して』などという安っぽい物ではない。
ルーヴァケビスが隊長を務める不良兵士粛清部隊が少し目障りになり始めたアースレナ宮殿の大物貴族や大臣達による要請で、ルーヴァケビスが支配するネレシオ伯爵領を狙って動いていた。
目障りな部隊の隊長を『自領の統治失敗を理由に罷免させる』という立派な狙いがあったのだ。
そんな訳で、大物貴族が寄越した夜盗は実に精鋭揃いだった。
その者達がネレシオ領に雪崩れ込む算段だったが、そんな事はネレシオ領側にも筒抜けで、それを利用して侯爵のカモスモーと侯爵後継のカモスロ夫妻、更に次の世代の孫夫婦や曾孫らを始末するところまで計画が練られていた。
そして、その謀略が実行されたのだった。
◇
カモスモーの居城は旧国境沿いの城塞街カビトロントだ。
国境なので厳重だ。城のような砦があり、塔も3本も立ってる。
魔法学校なども存在し、魔術師などが多数存在したが、エトリア王国の侵攻の際には開戦前に門を開いて降伏している。その甲斐あって、街に被害は殆どなかったが。
その城塞街カビトロントがその夜、燃えていた。
夜盗による襲撃だ。
その報告を聞いた時『あり得ない』とカモスモーは思った。
確かに夜盗の噂は存在するが、それはカモスキーが主導で流したデマカセで本当は存在しないのだから。
だが、実際にはカビトロントの街は燃え、砦の正門が2メートル級の巨大な火炎球で吹き飛んでいた。
賊が吹き飛んだ正門から押し入り、兵達と戦闘になってる。
夜盗達の姿を見てカモスモーは驚いた。
全員が旧ネイチャ王国の国旗入りの鎧を纏っていたからだ。
つまりはネイチャ王国の残党で、早々に降伏したカモスモーは『祖国を捨てた裏切りもの』という訳だ。
拙い。賊の勢いの方が勝ってる。ここまで到達するのは時間の問題だ。
逃げないと殺される。
よって、すぐにカモスモーは家族達を部屋に集めた。
「父上、どうしてこのような場所に我々を集めたのです? 厩舎のグリフォンで早く逃げないと」
と質問したのはカモスモーの長男で65歳になるカモスロだった。
腹が出てる典型的な無能貴族だ。
「安心しろ。それよりも確実なこれがある」
と得意げに見せたのは愛用の杖だった。
「杖のように見えますが、それが?」
「今まで教えておらなんだがな、これは転移魔法が使えるマジックアイテムなのさ」
そう誇らしげに語ったカモスモーが、
「【転移】っ!」
とマジックアイテムを使った。
だが、転移魔法は発動しなかった。
「? 【転移】っ! 【転移】っ!」
と叫ぶも何も起こらない。
無論、このマジックアイテムの不発動はトルオンの【ズッコケ】が関係していたが、その真相に至れる者は居なかった。
「ええっと、父上?」
「何故じゃ? どうして・・・」
カモスモーが情けない顔で杖を確認するのを見て、全員が『拙い』と悟った。
「この砦に抜け道はないのですか?」
「ないわい、そんな物。それよりもどうして、【転移】っ! 【転移】っ!」
「外に急いで逃げるぞっ!」
家族全員が部屋から廊下に逃げる中、カモスモーだけが部屋に残って、
「【転移】っ! 【転移】っ!」
と唱え続けて、
「【転移】っ!」
19回目にして足元に転移魔法が出現して転移したのだった。
◇
転移した先は夜でも真っ赤に滾ってるガムガラ溶岩海だったが。
「ほへっ? ヒャアアアア」
カモスモーは浮遊魔法を習得していない。
その為、頭から落下してジャボンッとマグマの海に落ちたのだった。
「ギャアア・・・・・・熱い、助け・・・」
そして誰にも看取られる事なく人知れずマグマに焼かれて沈んで死んだのだった。
◇
因みに城塞街カビトロントも陥落し、侯爵後継のカモスロ夫妻と孫夫妻と曾孫らも全員討ち取られたが、カモスモーだけは姿がなく『家族を囮にして自分だけ逃げた』との汚名を残したのだった。
これは『隣の貴族領が繁栄してるのに嫉妬して』などという安っぽい物ではない。
ルーヴァケビスが隊長を務める不良兵士粛清部隊が少し目障りになり始めたアースレナ宮殿の大物貴族や大臣達による要請で、ルーヴァケビスが支配するネレシオ伯爵領を狙って動いていた。
目障りな部隊の隊長を『自領の統治失敗を理由に罷免させる』という立派な狙いがあったのだ。
そんな訳で、大物貴族が寄越した夜盗は実に精鋭揃いだった。
その者達がネレシオ領に雪崩れ込む算段だったが、そんな事はネレシオ領側にも筒抜けで、それを利用して侯爵のカモスモーと侯爵後継のカモスロ夫妻、更に次の世代の孫夫婦や曾孫らを始末するところまで計画が練られていた。
そして、その謀略が実行されたのだった。
◇
カモスモーの居城は旧国境沿いの城塞街カビトロントだ。
国境なので厳重だ。城のような砦があり、塔も3本も立ってる。
魔法学校なども存在し、魔術師などが多数存在したが、エトリア王国の侵攻の際には開戦前に門を開いて降伏している。その甲斐あって、街に被害は殆どなかったが。
その城塞街カビトロントがその夜、燃えていた。
夜盗による襲撃だ。
その報告を聞いた時『あり得ない』とカモスモーは思った。
確かに夜盗の噂は存在するが、それはカモスキーが主導で流したデマカセで本当は存在しないのだから。
だが、実際にはカビトロントの街は燃え、砦の正門が2メートル級の巨大な火炎球で吹き飛んでいた。
賊が吹き飛んだ正門から押し入り、兵達と戦闘になってる。
夜盗達の姿を見てカモスモーは驚いた。
全員が旧ネイチャ王国の国旗入りの鎧を纏っていたからだ。
つまりはネイチャ王国の残党で、早々に降伏したカモスモーは『祖国を捨てた裏切りもの』という訳だ。
拙い。賊の勢いの方が勝ってる。ここまで到達するのは時間の問題だ。
逃げないと殺される。
よって、すぐにカモスモーは家族達を部屋に集めた。
「父上、どうしてこのような場所に我々を集めたのです? 厩舎のグリフォンで早く逃げないと」
と質問したのはカモスモーの長男で65歳になるカモスロだった。
腹が出てる典型的な無能貴族だ。
「安心しろ。それよりも確実なこれがある」
と得意げに見せたのは愛用の杖だった。
「杖のように見えますが、それが?」
「今まで教えておらなんだがな、これは転移魔法が使えるマジックアイテムなのさ」
そう誇らしげに語ったカモスモーが、
「【転移】っ!」
とマジックアイテムを使った。
だが、転移魔法は発動しなかった。
「? 【転移】っ! 【転移】っ!」
と叫ぶも何も起こらない。
無論、このマジックアイテムの不発動はトルオンの【ズッコケ】が関係していたが、その真相に至れる者は居なかった。
「ええっと、父上?」
「何故じゃ? どうして・・・」
カモスモーが情けない顔で杖を確認するのを見て、全員が『拙い』と悟った。
「この砦に抜け道はないのですか?」
「ないわい、そんな物。それよりもどうして、【転移】っ! 【転移】っ!」
「外に急いで逃げるぞっ!」
家族全員が部屋から廊下に逃げる中、カモスモーだけが部屋に残って、
「【転移】っ! 【転移】っ!」
と唱え続けて、
「【転移】っ!」
19回目にして足元に転移魔法が出現して転移したのだった。
◇
転移した先は夜でも真っ赤に滾ってるガムガラ溶岩海だったが。
「ほへっ? ヒャアアアア」
カモスモーは浮遊魔法を習得していない。
その為、頭から落下してジャボンッとマグマの海に落ちたのだった。
「ギャアア・・・・・・熱い、助け・・・」
そして誰にも看取られる事なく人知れずマグマに焼かれて沈んで死んだのだった。
◇
因みに城塞街カビトロントも陥落し、侯爵後継のカモスロ夫妻と孫夫妻と曾孫らも全員討ち取られたが、カモスモーだけは姿がなく『家族を囮にして自分だけ逃げた』との汚名を残したのだった。
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