ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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盤石

トルオン、お祝いの席でズッコケる

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 運がいいのか悪いのか、トルオンはこの時期、困った事に帝都アースレナに出向く事となった。

 2トップからのお誘いではない。

 属国の国家都市ロンリーでエトリア帝国の将軍モロキューが死亡した事で、軍を掌握していた将軍の権限を3人に分けた三将軍体制がこの度、エトリア帝国に誕生した訳だが、その1人にエイチェナの父親の金的男のエイレクトが就任し、ネレシオ砦に帝都アースレナのエイレクトの屋敷で催される新将軍就任祝いのパーティーのトルオンを名指した招待状が来ており、断れずに出向く破目になったのだ。

 無論、エイチェナも連れてグリフォンでだ。

「大丈夫か、エイチェナ? そのお腹で」

「大丈夫よ、トルオン様」

(まあ、安産祈願があるから大丈夫か)

 という訳でトルオンはアースレナのエイレクトの屋敷に出向いたのだった。





 エイレクトの屋敷はデカかった。

 トルオンが前にアースレナに持ってた屋敷の文字通り10倍。

 玄関ホールだけでダンスパーティーが開けそうだった。

 族長の娘だけあり、エイチェナが周囲の兎人族からの注目を浴びる中、使用人の案内と共に新将軍に就任して讃辞を受けていたエイレクトの許へと出向いた。

「おお、エイチェナちゃん、よく来たな。お腹も大分、大きくなって」

「ありがと、パパ。パパも将軍就任おめでとう」

「ありがとな」

 眼尻を下げて喜ぶエイレクトに、トルオンが、

「この度は・・・」

 と挨拶しようとすると、顔色を変えて、

「おらっ! 今日こそはおまえのその面を殴るっ!」

 と問答無用で殴りかかってきた。

 だが、御存知、トルオンはふざけたズッコケ体質なので、

「いきなり何を・・・のわっ!」

 ズルッとズッコケた。

 室内はピカピカの床ではなくフカフカの真っ赤な絨毯が敷かれていたのに。

 そして仰向けにズッコケたトルオンの足がお約束とばかりにゴキンッとエイレクトの股間に炸裂して、

「ぬおおおっ! また······こいつだけはっ!」

 エイレクトは股間を抑えてピョンピョンする破目になった。

「イターーくないな。床に絨毯を敷くのもありかもな」

 とトルオンが感想を言う中、

「イタタタ・・・テメー、祝いの席でまで」

 涙ぐんだエイレクトが恨めしそうに睨み、

「パパが悪いんでしょ。次、トルオン様に殴りかかったら私達、帰るからねっ!」

「ああ、そんな事言わないで、エイチェナちゃん」

 その後は何事もなく、トルオンはエイチェナの何十人と居る兄弟達と挨拶する事となった。
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