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盤石

【首脳部side】生後3日の赤子に全滅させられる

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 トルオンの娘セレリュアを連れ去ったナシゼフィーとその仲間が向かった先は都市国家ヒーナだった。

 因みに、今回の連れ去りは、トルオンは父親ながら全く関係ない。

 完全に蚊帳の外だ。

 誘拐の原因となったのはセレリュアの母親のセレシレルの系譜だった。

 セレシレルは都市国家ヒーナの王女という経歴で、それが何の因果か、もう滅亡したテーレ連合に内通してた裏切り者のドラゴニュートに父王を殺されて、戦う事なく捕縛の憂き目に遭い、更にはテーレ連合の首都ソルンの奴隷オークションで売られる破目になり、そこでトルオンが落札して、その後も色々あって結婚する事になって、この度、娘のセレリュアを出産した訳だが・・・・・・

 その王族の血が必要だったのだ。

 都市国家ヒーナには現在王族が不在だったので。

 何度もセレシレルとセレージュに帰還する書状を送ったが総て無視され、遂にはこのような強硬手段がセレシレルが産んだ娘のセレリュアに取られたのだった。





 さて。

 3時間もあったら、グリフォンの飛行速度だと城塞街ネレシオから実は余裕で都市国家ヒーナに到着する距離の為、既に深夜ながらセレリュアはヒーナ宮殿の一室に到着していた。

「おお、この子が?」

 出迎えたのは都市国家ヒーナを現在執政するパーパンだった。

 身長は181センチ。緑髪と緑翼の眼鏡男で、その経歴は国王殺しに加担した癖に首謀者だったオスイスを更に裏切って殺し、執政官の地位に就いたというものだった。

 はっきり言って信用ゼロの男だ。

「はい、セレシレル様のお子様です」

「何とも凛々しい。そして、この力。さすがは王族の直系。人間の血が入ってるのは気に喰わないが、まあ、この際、贅沢は言うまい」

 深夜ながら都市国家ヒーナの現幹部達が集まり、セレリュアを眺める中、

「パパの悪口を言わないでくれる? 気分が悪いんだけど?」

 との言葉が確かに全員の耳に届いた。

「?」

 全員がハテナ顔で周囲を見渡す中、

「こっちよ、こっち」

 声がする方向に視線を向ければ、そこには赤ちゃんベッドの中で、翼のある背中を上にして寝転びながら顔を横に向けて眼を開けてる赤子のセレリュアが居た。

「えっ?」

「まさか」

「ないない」

 その場に居た全員が否定したが、

「とりあえず全員、私を誘拐した罪で死刑ね。【閃光矢弾】っ!」

 セレリュアが攻撃魔法を唱えた瞬間、セレリュアの周囲に十数個の光が出現し、それらが閃光の矢弾となって周囲に居るドラゴニュートの全員の心臓を撃ち抜いたのだった。

 新たな国王の出迎えに深夜ながら50人以上居たので、

「ぐはっ!」

「馬鹿なっ!」

 4連射で、全滅するまで。

 こうして、その場に居た都市国家ヒーナの最高幹部とその一党は本当に生後3日の赤子のセレリュアによって全滅したのだった。





 ちなみに、

 トルオンや六柱神達が操った等々のトリックはなしだ。

 セレリュアが生後3日どころか誕生した瞬間から言葉と魔法を操れたからだった(隠してたが)。

 四半神のトルオンの娘のセレリュアが『神の力の8分の1を引き継いだ』から『生後3日で出来た』としか表現のしようのない出来事だった。





 ◇





 3時間後、ブチキレた城塞街ネレシオの精鋭部隊が乗り込んできたが、城塞街ネレシオと都市国家ヒーナのドラゴニュート達が知り合いだったので戦闘にはならず、トルオン達は簡単にヒーナ宮殿に入れた。

 そしてヒーナ宮殿の一室で都市国家ヒーナの幹部達が全滅してる中、トルオンは気にも留めず(その所為で転移魔法で先回りしたトルオンがやったと誤解される事になる)、

「おお、リュアちゃん、良かった、無事でぇ~。心細くなかったでちゅかぁ~?」

 そう赤ちゃん言葉で声を掛けて、赤ちゃんベッドからセレリュアを抱きかかえた。

 対するセレリュアは赤ちゃんらしく、

「ばぶぅ~」

 と返したのだった。
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