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アタリオスの石版
トルオン、石版を分捕られる
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セレシレルは妊娠320日目になった。
出産が280日の人間と、出産が360日のドラゴニュートのハーフなら、この時期の出産後もあり得た訳がセレシレルに出産の兆候はない。
身重のセレシレルが腹に耳を当てるトルオンに向かって真顔で、
「トルオンの子だからな」
「わかってるよ、レル。創造の女神リュアラビーテ様のお墨付きなんだから」
「そうなのか?」
「ああ」
という会話を交わした訳だが、豊穣の女神チョリスサラの安産祈願があるので順調だった。
さて。
トルオンはこの時期、エトリア帝国の2トップの要望を断るのに全精力を使う破目になっていた。
エトリア帝国の誕生によって巨大な領土の国境が撤廃され、それによって国内で裏の勢力の抗争が激化したのが原因だ。
エトリア帝国は平定した各国の暗部組織や宗教や貴族が持つ裏部隊は取り込んだが、他にも、
エトリア本国領は銀狼、赤の塔、狼月。
ネイチェ領は闇貴人、12、赤布。
ナスナ領は第5層、毒蛇教団。
フェイアス領は六花協定、青蠍。
これらがエトリア帝国に帰順しない裏の独立勢力として存在し、エトリア帝国の顔色を窺わずに好き勝手やっていたのだ。
エトリア帝国としては、それらを帰順、または撃滅して総ての裏の勢力圏も統一したく、その制圧をトルオンやトルオンの妻、ルーヴァケビス女伯爵にやらせようと当初は予定していた訳だが・・・・・・
そんな話はトルオンとしては馬鹿らしい限りな訳だ。
そもそもトルオンは魔物相手なら幾らでも無双するが、人を殺す事は殆どない。
ポリシーとかではなく、四半神としての【予感】でありありと『余り調子に乗って殺すと六柱神様の不興を買う』と理解していたからだ。
その為、どうしても殺す必要がある際には転移魔法でマグマの海にポイが殆どだった。
妻のルーヴァケビスを持っていかれるのも困る。
女伯爵としてのネレシオ領の統治もあるし、夜のイチャイチャもあるのだから。
そこで2トップへの要請を拒否する為の代替案としてトルオンは半日問だけエトリア帝国に大賢者の塔の残骸から失敬した『アタリオスの石版(影)』をレンタルしたのだが・・・
『アタリオスの石版』とは古代文明の遺物で、その用途は一言で言えば『天空神殿にあった石版の劣化バージョン』だった。
触れただけで上級までの影系魔法が一瞬で習得出来る。
才能や魔力なし、種族の禁止系統、魔法が使えぬ種族であっても絶対に、だ。
魔法の授与と共に、魔力の絶対値の等々の上昇までが付与された。
それがこの『アタリオスの石版』だった。
使用回数はもちろん無限だ。
何千、何万人に魔法を習得させる事が出来た。
こんな便利な物、現在の魔法技術では到底製造出来ない。
古代文明の遺物で、こんな物が出回れば魔術師の価値が下がるので、大賢者エレスティーが研究の名の許に独占していた訳だが、それをトルオンは惜しげもなくレンタルしていた。
まあ、完全なヤラかしな訳だが。
そんな訳でエトリア帝国の帝都アースレナの某所にある暗部組織『宮殿の影』350人程が一瞬にして上級までの影魔法を習得した事で、戦力は大幅に増強され、国内の裏の勢力圏もエトリア帝国が簡単に統一した訳だが・・・・・・
そんな便利な石版を暗部組織の構成員だけで終わらせるのは勿体無いというのが2トップの考えで、帝太后ビレリアの手紙が極秘裡に、そして頻繁にネレシオ砦に届いており、その断りの返事にトルオンは全精力を注ぐ破目になっていたのだ。
手紙をトルオンに届ける役は女魔術師のアナリアだった。
実はアナリアは死んだドーベルが派遣したトルオン監視の暗部組織の構成員だったのだ。まあ、既にトルオン側に寝返ってたが。
手紙を受けたトルオンは封も開けずに、
「またか。内容は読まなくても分かるな」
「しかし、トルオン様、いい加減、飲まないと。帝太后様は言っては何ですが残忍な御方ですから。下手するとトルオン様に危害を加える可能性も・・・」
まさかトルオンと帝太后ビレリアが裏で繋がってるとは知る由もないアナリアがそうトルオンを心配した。
更には、
「【影】くらい譲渡すればどうですか? まだ後6枚もお持ちなのですから」
助言したくらいだった。
そうなのだ。
トルオンは『アタリオスの石版』だけで大賢者の塔から7枚も回収していた。
【影】はその遺物の1枚に過ぎないのだ。
どうしてその事をアナリアが知ってるかと言えば、トルオンがアナリアで試したからだ。天空神殿の時のように1枚だけなのかどうかを。
トルオンも石版を拾う時に6枚(1枚は【光】だった)の石版から上級魔法を継承したが、トルオンは四半神だ。特別かも知れない。
なので、人間でも可能なのかアナリアで試したら2枚目も魔法の伝授に成功し、『なら3枚目は』『4枚目は』と増やして、結局は持ってる7枚全部での魔法の伝授が可能である事が判明した。
上級魔法までだが、7種類の系統の上級魔法が使えればもはや大魔術師だ。
「だから言ってるだろ、アナリア。1枚でもバレたら他のもヤバいんだよ。ともかく拒否の手紙を認めるから帝都アースレナに送り届けてくれ」
トルオンはこうして手紙を返したが、帝太后ビレリアに押し切られて結局は後日、『アタリオスの石版(影)』を手放す事となり・・・
エトリア王国は騎士団はもとより末端の兵士までが上級の影魔法が使えるようになり、更に精強になったのだった。
出産が280日の人間と、出産が360日のドラゴニュートのハーフなら、この時期の出産後もあり得た訳がセレシレルに出産の兆候はない。
身重のセレシレルが腹に耳を当てるトルオンに向かって真顔で、
「トルオンの子だからな」
「わかってるよ、レル。創造の女神リュアラビーテ様のお墨付きなんだから」
「そうなのか?」
「ああ」
という会話を交わした訳だが、豊穣の女神チョリスサラの安産祈願があるので順調だった。
さて。
トルオンはこの時期、エトリア帝国の2トップの要望を断るのに全精力を使う破目になっていた。
エトリア帝国の誕生によって巨大な領土の国境が撤廃され、それによって国内で裏の勢力の抗争が激化したのが原因だ。
エトリア帝国は平定した各国の暗部組織や宗教や貴族が持つ裏部隊は取り込んだが、他にも、
エトリア本国領は銀狼、赤の塔、狼月。
ネイチェ領は闇貴人、12、赤布。
ナスナ領は第5層、毒蛇教団。
フェイアス領は六花協定、青蠍。
これらがエトリア帝国に帰順しない裏の独立勢力として存在し、エトリア帝国の顔色を窺わずに好き勝手やっていたのだ。
エトリア帝国としては、それらを帰順、または撃滅して総ての裏の勢力圏も統一したく、その制圧をトルオンやトルオンの妻、ルーヴァケビス女伯爵にやらせようと当初は予定していた訳だが・・・・・・
そんな話はトルオンとしては馬鹿らしい限りな訳だ。
そもそもトルオンは魔物相手なら幾らでも無双するが、人を殺す事は殆どない。
ポリシーとかではなく、四半神としての【予感】でありありと『余り調子に乗って殺すと六柱神様の不興を買う』と理解していたからだ。
その為、どうしても殺す必要がある際には転移魔法でマグマの海にポイが殆どだった。
妻のルーヴァケビスを持っていかれるのも困る。
女伯爵としてのネレシオ領の統治もあるし、夜のイチャイチャもあるのだから。
そこで2トップへの要請を拒否する為の代替案としてトルオンは半日問だけエトリア帝国に大賢者の塔の残骸から失敬した『アタリオスの石版(影)』をレンタルしたのだが・・・
『アタリオスの石版』とは古代文明の遺物で、その用途は一言で言えば『天空神殿にあった石版の劣化バージョン』だった。
触れただけで上級までの影系魔法が一瞬で習得出来る。
才能や魔力なし、種族の禁止系統、魔法が使えぬ種族であっても絶対に、だ。
魔法の授与と共に、魔力の絶対値の等々の上昇までが付与された。
それがこの『アタリオスの石版』だった。
使用回数はもちろん無限だ。
何千、何万人に魔法を習得させる事が出来た。
こんな便利な物、現在の魔法技術では到底製造出来ない。
古代文明の遺物で、こんな物が出回れば魔術師の価値が下がるので、大賢者エレスティーが研究の名の許に独占していた訳だが、それをトルオンは惜しげもなくレンタルしていた。
まあ、完全なヤラかしな訳だが。
そんな訳でエトリア帝国の帝都アースレナの某所にある暗部組織『宮殿の影』350人程が一瞬にして上級までの影魔法を習得した事で、戦力は大幅に増強され、国内の裏の勢力圏もエトリア帝国が簡単に統一した訳だが・・・・・・
そんな便利な石版を暗部組織の構成員だけで終わらせるのは勿体無いというのが2トップの考えで、帝太后ビレリアの手紙が極秘裡に、そして頻繁にネレシオ砦に届いており、その断りの返事にトルオンは全精力を注ぐ破目になっていたのだ。
手紙をトルオンに届ける役は女魔術師のアナリアだった。
実はアナリアは死んだドーベルが派遣したトルオン監視の暗部組織の構成員だったのだ。まあ、既にトルオン側に寝返ってたが。
手紙を受けたトルオンは封も開けずに、
「またか。内容は読まなくても分かるな」
「しかし、トルオン様、いい加減、飲まないと。帝太后様は言っては何ですが残忍な御方ですから。下手するとトルオン様に危害を加える可能性も・・・」
まさかトルオンと帝太后ビレリアが裏で繋がってるとは知る由もないアナリアがそうトルオンを心配した。
更には、
「【影】くらい譲渡すればどうですか? まだ後6枚もお持ちなのですから」
助言したくらいだった。
そうなのだ。
トルオンは『アタリオスの石版』だけで大賢者の塔から7枚も回収していた。
【影】はその遺物の1枚に過ぎないのだ。
どうしてその事をアナリアが知ってるかと言えば、トルオンがアナリアで試したからだ。天空神殿の時のように1枚だけなのかどうかを。
トルオンも石版を拾う時に6枚(1枚は【光】だった)の石版から上級魔法を継承したが、トルオンは四半神だ。特別かも知れない。
なので、人間でも可能なのかアナリアで試したら2枚目も魔法の伝授に成功し、『なら3枚目は』『4枚目は』と増やして、結局は持ってる7枚全部での魔法の伝授が可能である事が判明した。
上級魔法までだが、7種類の系統の上級魔法が使えればもはや大魔術師だ。
「だから言ってるだろ、アナリア。1枚でもバレたら他のもヤバいんだよ。ともかく拒否の手紙を認めるから帝都アースレナに送り届けてくれ」
トルオンはこうして手紙を返したが、帝太后ビレリアに押し切られて結局は後日、『アタリオスの石版(影)』を手放す事となり・・・
エトリア王国は騎士団はもとより末端の兵士までが上級の影魔法が使えるようになり、更に精強になったのだった。
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