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帝国誕生
トルオン、妻が女伯爵になる
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3日間の建国祭が終わった翌日にはドーベルがネレシオ砦にやってきていた。
今やドーベルはエトリア帝国の大公に出世してる訳だが、
「トルオン殿、この度は城塞街ギバンの警備隊、つまりは正規のエトリア帝国兵が馬鹿な事をしてしまい申し訳ありません」
深々と頭を下げて謝罪した。
「もういいですよ、ドーベル殿。二度とこのような事がないように再発防止に努めて下されば」
「その件で御相談が」
「?」
「王国は、コホン、失礼、帝国でした。帝国は城塞街ギバンの放棄を考えております」
「えっ? じゃあ、ギバンは?」
「魔物が根城にしたら困るので破壊です」
「せっかく作ったのに? ええっと、その目的は?」
「政敵が5年間の歳月と労力を掛けて推し進めた政策なので失敗を印象付けて失脚を誘おうかと」
「結局、得をするのはドーベル殿という訳ですか」
トルオンが呆れる中、ドーベルが、
「いえいえ、トルオン殿のネレシオ砦も城塞街ギバンの放棄で更なる発展を遂げる事になります。城塞街ネレシオとして」
「まあ、それならばいいですが・・・」
「ですが、それには1つ問題が。砦ならばまだしも城塞街の統治となりますと、エトリア帝国の爵位が必要でして」
ドーベルが探るように言ったので、トルオンが、
「ですから、王太后様が、おっと、今は帝太后様でしたか? ともかく、その御方に嫌われてる以上は無理ですって」
「ええ。昨日、機嫌の良い姉に相談しましたが、やはりトルオン殿は『ダメよ』と言われました。ですが、同時にダークエルフのルーヴァケビス殿になら伯爵位と城塞街ネレシオを与えても良いと言われてまして。前にトルオン殿も言われてましたが、この案、どう思われます?」
「・・・妻に爵位を与える狙いは何なんです?」
トルオンが探るように問うと、
「ダークエルフ族の囲い込みでしょう。バーラ平原のダークエルフ族の里で何やら異変があったらしいですし。旧テーレ連合のダークエルフ族も引き抜きたいのかと・・・」
「妻に聞いてみます」
「今、お願いします」
という訳でルーヴァが呼ばれて、説明を受けた後、
「トルオン様の安泰が約束されるのであれば私は構いませんが。ですが人間の宮廷作法など知りませんよ?」
「構いません。式典の出席も最小限に留めていただいても」
「では、それで」
「では、後日、アースレナ宮殿で爵位授与式がありますので恰好はダークエルフ族の正装でお願いします」
「分かりました」
このように話が進み・・・
◇
8日後。
帝都のアースレナ宮殿の謁見の間で、貴族達が多数見てる前で女帝カミビーレから
「ルーヴァケビス、ソナタに伯爵位と城塞街ネレシオ、それにネレシオ近郊、ヨルデの森全域を与える。以後、エトリア帝国に忠誠を尽くせよ」
「はっ」
伯爵位を授与されたのだった。
エトリア帝国に限らず、魔物が跋扈するこの世界では殆どの国家が実力主義を採用している。女だろうと強ければ国の幹部だ。
なので、ルーヴァケビスの伯爵位の授与もそれほど反感は出なかった。
新参者だが、種族が強いダークエルフだというのが利いてる。
爵位授与式に立ち会う貴族の殆どが好意的に見てる。
その様子を眺めて満足してたドーベルだが、女帝カミビーレを見て、ふと皇帝即位式でカミビーレが剣を振るった事を思い出した。
ただのお飾りの姪だと思っていたが、まさかあのような剛剣を使うとは。
側近達の誰もがカミビーレが剣を使える事を知らなかった。
そもそもこの世界は戦わなければ強くなれない。
なので、温室育ちのカミビーレが強くなる道理はない。
そう言えば、トルオンが妙は秘術を知ってると治癒医から報告を受けたような。
だが、その秘術を持ってしても狩猟場に出なければならなかったはずだ。
だとしたら、どうやってあの剣を身に付けたんだ?
そんな事を考えながら爵位授与式の女帝カミビーレを眺めたのだった。
今やドーベルはエトリア帝国の大公に出世してる訳だが、
「トルオン殿、この度は城塞街ギバンの警備隊、つまりは正規のエトリア帝国兵が馬鹿な事をしてしまい申し訳ありません」
深々と頭を下げて謝罪した。
「もういいですよ、ドーベル殿。二度とこのような事がないように再発防止に努めて下されば」
「その件で御相談が」
「?」
「王国は、コホン、失礼、帝国でした。帝国は城塞街ギバンの放棄を考えております」
「えっ? じゃあ、ギバンは?」
「魔物が根城にしたら困るので破壊です」
「せっかく作ったのに? ええっと、その目的は?」
「政敵が5年間の歳月と労力を掛けて推し進めた政策なので失敗を印象付けて失脚を誘おうかと」
「結局、得をするのはドーベル殿という訳ですか」
トルオンが呆れる中、ドーベルが、
「いえいえ、トルオン殿のネレシオ砦も城塞街ギバンの放棄で更なる発展を遂げる事になります。城塞街ネレシオとして」
「まあ、それならばいいですが・・・」
「ですが、それには1つ問題が。砦ならばまだしも城塞街の統治となりますと、エトリア帝国の爵位が必要でして」
ドーベルが探るように言ったので、トルオンが、
「ですから、王太后様が、おっと、今は帝太后様でしたか? ともかく、その御方に嫌われてる以上は無理ですって」
「ええ。昨日、機嫌の良い姉に相談しましたが、やはりトルオン殿は『ダメよ』と言われました。ですが、同時にダークエルフのルーヴァケビス殿になら伯爵位と城塞街ネレシオを与えても良いと言われてまして。前にトルオン殿も言われてましたが、この案、どう思われます?」
「・・・妻に爵位を与える狙いは何なんです?」
トルオンが探るように問うと、
「ダークエルフ族の囲い込みでしょう。バーラ平原のダークエルフ族の里で何やら異変があったらしいですし。旧テーレ連合のダークエルフ族も引き抜きたいのかと・・・」
「妻に聞いてみます」
「今、お願いします」
という訳でルーヴァが呼ばれて、説明を受けた後、
「トルオン様の安泰が約束されるのであれば私は構いませんが。ですが人間の宮廷作法など知りませんよ?」
「構いません。式典の出席も最小限に留めていただいても」
「では、それで」
「では、後日、アースレナ宮殿で爵位授与式がありますので恰好はダークエルフ族の正装でお願いします」
「分かりました」
このように話が進み・・・
◇
8日後。
帝都のアースレナ宮殿の謁見の間で、貴族達が多数見てる前で女帝カミビーレから
「ルーヴァケビス、ソナタに伯爵位と城塞街ネレシオ、それにネレシオ近郊、ヨルデの森全域を与える。以後、エトリア帝国に忠誠を尽くせよ」
「はっ」
伯爵位を授与されたのだった。
エトリア帝国に限らず、魔物が跋扈するこの世界では殆どの国家が実力主義を採用している。女だろうと強ければ国の幹部だ。
なので、ルーヴァケビスの伯爵位の授与もそれほど反感は出なかった。
新参者だが、種族が強いダークエルフだというのが利いてる。
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その様子を眺めて満足してたドーベルだが、女帝カミビーレを見て、ふと皇帝即位式でカミビーレが剣を振るった事を思い出した。
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そう言えば、トルオンが妙は秘術を知ってると治癒医から報告を受けたような。
だが、その秘術を持ってしても狩猟場に出なければならなかったはずだ。
だとしたら、どうやってあの剣を身に付けたんだ?
そんな事を考えながら爵位授与式の女帝カミビーレを眺めたのだった。
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