ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

竹井ゴールド

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安全地帯

トルオン、またネレシオ砦でズッコケる

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 トルオンのズッコケは年がら年中ではない。

 ズッコケない時は長期に渡ってズッコケない。

 その逆もしかりで、ズッコケる時はそりゃズッコケた。





 そんな訳でトルオンはネレシオ砦の廊下で、

「のわっとっ!」

 ズルッとズッコケた。

 前を歩くドーベルが斡旋した女魔術師アナリアを巻き込んで廊下に倒れる。

 アナリアは人間の19歳だ。赤紫髪パーマで目鼻も整い、インテリな眼鏡を掛けてる。そして白肌に纏う衣裳は黒色の魔術師ビキニに黒マントだった。

 露出狂ではない。

 れっきとした魔力や精霊を感じ取れる為の儀式的な衣装だ。

 女魔術師がビキニを纏うのは相応の理由があるのだ。

 前に歩いていたそのアナリアをズッコケた拍子に巻き込んで、お尻を突き出す四つん這いのポーズにして倒し、アナリアの突き出したお尻に顔面をダイブさせたトルオンだったが、何故かトルオンの指にアナリアのビキニのパンツが引っ掛かってズレてしまい・・・

 ズッコケた1秒後には、トルオンはアナリアのノーパンのナマ尻というか股間に顔面をダイブさせていた。

「ヒィ」

 アナリアが慌てて立ち上がる中、

「ち、違うっ! 転倒した偶然の産物であって」

 廊下に両膝を突いて顔を上げたトルオンはローアングルからパンツがズレたアナリアの下腹部をバッチリと目撃しながら正当性を訴えた。

「わ、忘れて下さいっ! 失礼しますっ!」

 慌ててパンツを穿き直したアナリアは逃げるように去っていったのだった。

(ノーパンで眼鏡か。知恵の女神ジュピマーズ様を思い出すなぁ)

 トルオンは呑気に思ったのだった。





 トルオンのズッコケの巻き込み事故に特定の人物が重複する事は良くある。

 追放時の悪印象しか残っていないパーティーでも紫髪魔術師と銀髪エルフは一緒に居た関係で良くもつれてた。

 そんな訳で廊下を歩いてたトルオンは、

「うわっ!」

 ズルッとズッコケた。

「キャア」

 巻き込まれたのは派遣されて騎士団の責任者のバルトがトルオンに付けた専属護衛官の女騎士エイチェナだった。

 エイチェナは何故か例の新型のドラゴン鎧を纏わず騎士服だったので、トルオンは廊下に押し倒したエイチェナの制服越しの柔らかい胸に顔面をダイブさせていた。

 通常なら押し倒されて背中を強打しながら胸に顔をうずめられてるのだから、激怒するところだが、トルオンの魔物6000匹斬りを城壁の上から目撃後なので、エイチェナは怒らなかった。

 普段からもう熱視線をトルオンに送っており、廊下に押し倒された今も、

「もう、トルオン様ったら」

 愛しそうにトルオンを優しく抱き締めて、

「私の初めてトルオン様になら捧げてもいいですよ」

 と囁いていた。

「ゴメンね、エイチェナ。わざとじゃないんだ」

 なので、トルオンの方が少しエイチェナを警戒して素早く離れる結果となった。





 ネレシオ砦内でトルオンのズッコケ癖が一部で有名になり始めて警戒されても、トルオンのズッコケは止まらなかった。

 トルオンのズッコケには変則バージョンがある。

 転移魔法の直後などがそれなのだが、他にもあるのだ。

 その名もラブアタック(トルオン命名)が。

 ラブアタックはトルオン主導のズッコケではない。

 美女の方から突っ込んできてトルオンをズッコケさせるのだから。

 例えば、ネレシオ砦内の廊下に迷い込んだ野鳥を追い出そうとドラゴニュートの美人が網を持って飛翔し、野鳥を追ってたら廊下の角で歩いてきたトルオンの顔面に股間から飛び込んできて、

「キャア」

「うわっ!」

 2人して縺れて倒れるといった嘘のようなズッコケがあるのだ。

 トルオンが仰向けに倒れる中、そのトルオンの顔面に跨って座ったドラゴニュートはネイナだった。

 17歳で身長176センチ。紺髪のミディアムで、可愛いタイプだった。背中の翼は紺色。鎧姿の時もあるが今はバックレスタイプの紺色のドレスだ。

 もっともトルオンの顔面に座ってるのはスカートの下のお尻が丸見えのTバッグの黒パンツだったが。

「んんっ!」

 トルオンが苦情を言う中、

「申し訳ありません、トルオン様」

 ネイナが立ち上がって退いた。

「確かリューの側近だっけ?」

「はい。その、地下牢で捕まってるネルネとは従妹です」

(だから似たような恰好をしてた訳ね。ってか黒のTバックってドラゴニュートで流行ってるのかな?)

 と思いながらトルオンは、

「そっちは気にする事ないよ」

「申し訳ありませんでした」

「可愛いから許すね」

「もうトルオン様ったら」

 そんな事を言いながらネイナと別れてトルオンは歩き出したのだった。
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