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世界地図2

【賢者side】秒で世界樹に力を回収される

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 樹陰の塔は世界樹(正式名、豊穣の女神チョリスサラの御神木)の陰になる場所に建ち、そこに賢者トロピオは住んでる訳だが・・・

 そんな立地に塔が建ち、賢者トロピオが住んでるのには当然、理由がある。

 表向きは『世界樹を観測して世界の摂理を探る為』とか偉そうな事を謳ってるが、それは対外向けの方便だ。

 本当の目的はズバリ、世界樹の根から神聖気を少し拝借して様々な事に転用する為だった。

 はっきり言ってバレたら大犯罪者の汚名を着る事になる悪行である。

 この世界には世界樹信仰すらあるのだから。

 それをやってるのが賢者トロピオを名乗る本名ルフィレストだった。

 ルフィレストは樹陰の塔を作らせた張本人で、1000年前の賢者だ。

 当然、死んでる。

 不老長寿でない以上は。

 だが、それは表向きの話だ。

 実際はまだ生きており、世界樹の神聖気の悪用によって寿命を伸ばし続けていた。

 それどころか、真の姿は若い。

 身長は184センチ。種族は人間で、長い銀髪で鷲鼻に眼鏡という特徴的な容姿だが、30代で通る若さを誇った。

 対外的にはもう11回、名前と姿を変えてるくらいだ。

 賢者ルフォレストが大賢者エレスティーの20番目の弟子で、賢者トロピオが大賢者エレスティーの199番目の弟子なのだから、大賢者エレスティーもこのカラクリを黙認だ。

 大賢者エレスティーは仲間の女魔術師ヒルシアに天罰を与えてガムガラ溶岩海で今尚、苦しめてる六柱神に否定的な考えを抱くようになっていたのだから。

 そんな訳で、賢者トロピオ改め賢者ルフォレストは・・・・・・真っ黒な人物だった。

 そんな男がペガサスを乗った男に何もしない訳がない。

 問答中に無詠唱で【暗示】【傀儡】【昏睡】の魔法を掛けよう何十回も頑張った。

 だが、魔法が掛からない。

 当然だ。トルオンは四半神なのだから。

 賢者ルフォレストは『さすがは男ながらペガサスに選ばれただけの事はある』と勝手に完結していたが。

 魔法を使った事で魔力が減った。もう1000歳だ。無理は出来ない。

(さて、また神聖力を魔力に転換して補充するか)

 そう塔の地下の特別室の玉座に座った時だった。

 ゴゴゴゴッと地震が起こった。

 あり得ない。

 この世界でも地震は確かに起こるが、世界樹の周辺では地震は起こらないのだから。

 エフィレストが椅子から立ち上がった時、地下の壁を突き破って何かが突出してきた。

 茶色い物体だった。

(これは根? まさか世界樹の? どうしてだ? こんな事、これまで一度も・・・)

 と賢者ルフィレストは驚いたが・・・

 実はたった今、根から神聖力を奪われてる事を世界樹自身が感知して攻撃されてると判断し、世界樹の防衛本能が働き、外敵に向かって根を這わしてきていた。

 樹陰の塔の外側にも根が巻き付き、根から生えた蔓や蔦が塔を包み、地中に引きずり込み始めている。

 賢者ルフォレストにも憂や蔦が伸びる。

「うおっ! 【閃光豪爆陣】っ!」

 塔が揺れる足場の中、上級魔法で迎撃するも、世界樹の根は普通じゃない。

 炎どころか魔法自体が効かなかった。

「何なんだよ、これは・・・ウワアアアアア」

 蔓が遂に賢者ルフィレストを絡め取った。

 魔力が奪われる。

「どうして、こんな事に・・・」

 と呟いた賢者ルフォレストはすぐに勘付いた。

 今日、普段と違う出来事は1つしかない。というか、さっきの出来事だったから。

「あの男っ! 世界樹を救う為に知ってて塔に近付いたな・・・・・・ウオオオオ」

 それは誤解だ。

 トルオンがズッコケた事で、塔の地下の世界樹の根から神聖力を奪う装置が誤作動を起こし、いつもよりも大量の神聖力を吸収してしまい、世界樹が探知して攻撃してるだけで。

 腕や足に絡まった蔓が賢者ルフィレストからどんどん魔力を吸収する。

「いかん、【転移】っ! っ? 【転移】っ! 転移魔法も使えないだと?」

 転移魔法で逃げようとして発動しないと知り、『もう逃げられない』と賢者ルフィレストは悟った。

 成すすべは何もなく、これまで無断借用した神聖力を世界樹に強制回収されて、魔力を失った賢者ルフィレストは僅か10分間で、30代の若さから一気に1000歳の年を取り、骨と皮のミイラどころか粉々の塵になって大往生したのだった。





 そして悪しき樹陰の塔もまた地中に引きずり込まれて跡形もなく消え去った。
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