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四半神

【執政官side】罠が今頃発動する

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 クワン特別独立区はゼッタリア聖王国の『金の成る木』だ。

 死の大地産出の鉱石や魔物素材は、その立地からクワン特別独立区に運ばれてくる事が多いのだから。

 そんな訳で、クワン特別独立区は中央から執政官が出向して数年の在任で大金を得て、数年後に聖王宮に返り咲く美味しい地位だったのだが。

 それが何の因果か、王女で執政のアレキレーネ姫の鶴の一声でクワン特別独立区が聞いた事もないペガサス騎士に与えられてしまった。

 お陰で税のピンパネや賄賂もままならず、美味しい出向先は一転、ただの左遷先に成り下がってしまっていた。

 割を食ったのが現執政官のランドバークだ。

 179センチの人間で、50代の小太りの男だ。文官としては出世コースを歩いていたが、聖王宮での幹部職が手に入る寸前でのこの扱い。

 『トルオンが何者かは知らんが許し難し』と思ったのも無理はない。

 聖王アレキトロスⅢ世がトルオンを捕縛しようとした経緯も手伝い、『がいしても問題なかろう』と魔術師数人を雇って官庁の執務室や庭先に魔法陣を多数配置した。

 誰にもバレないように作業は深夜だ。

 なので作業ははかどらなかったが、新領主がなかなかクワン特別独立区入りしなかったものだから(余裕で150日が経過してる)罠を23個も官庁内に完成させる事が出来た。





 そして今日、遂に新領主の若造がペガサスに乗って登場した訳だが・・・





 どの魔法陣も起動しなかった。

 ランドバークが何度も官庁内でトルオンが魔法陣の罠の上に乗った時に、ポケットの中のマジックアイテムで罠を起動させようとしたのに、どれも起動しない。

(あの魔術師どもめっ! 大金をはたいて罠を作らせたのにっ!)

 内心で怒り狂いながら、こうなったら夕食会で毒を盛ろうと計画を変えたが、若造は、

「じゃあ、後の事はよろしくな、ランドバーク執政官」

 こっちの気も知らずに機嫌良く気軽に肩を叩き、ペガサスに乗ってさっさと帰っていった。





 執政官の執務室で1人になったランドバークは荒れに荒れていた。

「くそったらっ! どうして作動しないんだ、何度も何度も押したのにっ!」

 そう呟き、ポケットから出した魔法陣の罠の起動スイットを押したら、ドゴォォォンッとの音とともに大爆発が起きて、官庁がその振動で揺れた。

「はあ?」

 驚きつつ、ドアを開ければ煙や熱風が廊下に充満してる。

「まさか・・・」

 ランドバークが手に握る起動スイッチを見た。

 そのまさかだった。

 今頃、魔法陣の罠が起動していた。

 23個の魔法陣の罠全部が同時に。

 原因は、トルオンがズッコケた際に地面に手をついた時に魔法陣が誤作動を起こしたからだが、その事を知る者は誰も居ない。





 あの罠の魔法陣は暗殺が目的だ。

 よって殺傷力がある。

 23個の魔法陣全部がだ。

 結果、23個の魔法陣の起動による爆発や炎や氷槍や影刃に巻き込また官庁で働く50人以上がこの時、死んだのだった。





 この騒動を受けて、翌日には聖王宮からグリフォンに乗った騎士団がクワン特別独立区に派遣されてきた。

 大人数でだ。それだけ執政アレキレーネが重要視したのは言うまでもない。

 捜査は困難を極めなかった。

 犯人は簡単には判明したのだから。

 大人数を派遣したからではない。

 官庁で魔法陣が仕掛けられていない主要箇所は執政官の執務室だけだったからだ。

 お陰で騎士団は当初、逆に深読みして『執政官に罪を着せる為か。狡猾な犯人だ』と慎重になったが、執政官のランドバークがシドロモドロで弁明した事で『ああ、コイツが犯人か』とすぐに見抜き、あっという間に決定的な証拠の起爆スイッチを押収して、大量殺人犯として逮捕したのだった。

 事実、犯人なので弁明のしようもなく、後日、執政官ランドバークは極刑にされたのだった。
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