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新生活

トルオン、仮面の剣士レーゼを廃業する

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 西の大国、ゼッタリア聖王国がトルオンをペガサス騎士として認めた事は全世界に広がったが・・・

 別にトルオンなんて名前はありふれた名前だ。

 なので、エトリア王国の王都アースレナの屋敷に拠点を移したトルオンの生活に問題はなかった。

 そもそもトルオンは移動に転移魔法を使う。

 ソルンの時はギリ隠してて転移する部屋を決めて移動してたが、もう隠す事もなく転移魔法で外出していた。





 普段、狩猟は1人だが、今日は新妻のセレシレルにせがまれて一緒に来ていた。

 セレシレルはドラゴニュート族なので鎧もバックレスタイプだった。ドラゴンの鎧で完全武装だ。鎧の色は赤色で勇ましい。翼の色とも合ってた。

 武器はドラゴンの牙で鍛えた三又の槍な訳だが。

 20メートル級の地竜タイプのグリーンドラゴンの死骸を見て唖然としていた。

「どう、レル? おまえが惚れて結婚した男の実力は?」

 トルオンが得意げに笑う。

 因みにレルはセレシレルの愛称だ。

「まさか、本当にドラゴンを一刀で倒すなんてな。それよりも光から出したその剣、聖剣ポロロカリバーだよな?」

 セレシレルの口調は結婚してもこのぶっきらぼうな口調のままだった。

 そこがまあ、可愛い訳だが。

「何それ?」

「トルオン、おまえ、知らないで使ってたのか? 勝利の女神ポロロビスケ様が勇者に与える自らの御名の一部を付けた伝説の剣だってのに」

「へぇ~、そうなんだ」

「そもそも、どこで手に入れたんだ、そのポロロカリバー?」

「天空神殿に刺さってたから引っこ抜いて貰っただけだよ」

 そう言いながらトルオンはアイテムボックス内にグリーンドラゴンを1頭丸々収納した。

 ドラゴンは血すら金になるらしいのでアイテムボックス持ちは解体などせず持ち込むのが普通だ。

「・・・天空神殿。試練を越えた訳か」

「それよりもさ、レル。どう、今日は気分を変えて、ここで・・・・・・」

 一仕事終えたトルオンが甘えるように腰に手を回して抱き寄せてきたので、セレシレルは慌てて、

「待て。何を考えてる、トルオン? 人の居る森でなどしないぞ。絶対に」

 拒否し、トルオンも仕方なく屋敷に転移魔法で帰ったのだった。





 さて、問題は討伐したドラゴンの売却ルートだ。

 これを誤ると面倒臭い事になる。

 仮面の剣士レーゼとしてレーゼ王国に出向くのは・・・・・・

 もうトルオンの中では論外だ。絶対になかった。

 何故ならば、

「レッドドラゴンなら1メートル、10白金塊、換算だったのにね」

「待て、トルオン。何だ、その計算は?」

「えっ、合ってるよね? 30メートル級のレッドドラゴンが白金塊3500個前後だったから」

「30メートル級のレッドドラゴンが3500白金塊だと? そんな訳あるか。倍の7000白金塊は堅いぞ」

「えっ? そうなの? ・・・待って。確認するけど、グリードラゴンの20メートル級なら白金塊1500個だったり・・・」

「いや、それも倍の白金塊3000個だろ」

「・・・へぇ~、そうなんだぁ~」

 とのセレシレルとの何気ない軽口で、ボラレてた事が判明したからだ。





 よってレーゼ王国に仮面の剣士レーゼが出没する事はもう二度となかった。





 こうして仮面の剣士レーゼは永遠にその正体を謎にしたまま、レーゼ王国の生きる伝説となったのである。





 ◇





 それはともかくとして。





 もうレーゼ王国の冒険者ギルドにドラゴンを売るという選択はあり得ないな。

 何せ、冒険者ギルドと言っても毎回同じ場所でドラゴンを売却してた訳ではないのだから。

 ドラゴン7頭を7つの冒険者ギルドで売り、結果、その全店でボッタクられたのだ。

 組織的にボッタクるなんて完全な悪徳組織ではないか。冗談ではない。

 新たな売却ルートの開拓が必要だ。

 かと言って、他の国の冒険者ギルドもないな。

 そもそも冒険者ギルドという公的だが、民間組織だか官営組織だか微妙なモノに頼ったのが間違いなのだ。

 それならば商人や貴族に売り付けた方が信用出来る。

 いや、一層の事、国家に売り付けるのはどうだろうか?





 との思考が働いたが、トルオンが懇意にしてる国家などない。

 辛うじてゼッタリア聖王国くらいだ。

 テーレ連合などはアイスシア議員が秒で裏切ったから(トルオンはまだ処刑された事を知らない)。

 だが、ゼッタリア聖王国に行くのは気が引けた。

 前回、約束の10日遅れで行ったら聖王が怒ってて最後まで出て来なかったから(トルオンはそう思ってる)。





 なので、売却ルートが見つからぬままトルオンのアイテムボックス内にはドラゴンの死骸がもう14頭も溜まる事となった。
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