ギフト【ズッコケ】の軽剣士は「もうウンザリだ」と追放されるが、実はズッコケる度に幸運が舞い込むギフトだった。一方、敵意を向けた者達は秒で

仮面の剣士レーゼ

トルオン、二重生活を満喫する

　トルオンが天空神殿に出向き、四半神族になって１００日が過ぎた。

　トルオンはまだボスの街に居た。

　そしてトルオンは人外の強さを手に入れておきながら調子に乗らなかった。

　総ては15歳でギフト【ズッコケ】を得たトルオンの経験がそうさせていた。

　18歳の年頃なら勇者に憧れて名声を追い求めるものだが、トルオンはギフト【ズッコケ】を得た事で人間『ほどほど』が一番だという事を既に学習していたのだ。

　その為、トルオンの冒険者ランクはまだＣだった。





　だが、トルオンも人間だ（種族という意味ではなく）。

　大金を手に入れて、優雅な暮らしがしたい。

　そんな訳で、トルオンの冒険者ランクはＣなのだが・・・





　総てが謎に包まれた仮面の剣士レーゼなるものがレーゼ王国で爆誕していた。





　その仮面の剣士はふらりと冒険者ギルドで現れて、アイテムボックスからランクＡ以上の金になる素材を山のように売却して、そして去っていくのだ。

　分かっている事は・・・

　身長は１９８センチ。

　青色で統一された装備。髪の色は兜で不明。

　名前はレーゼ。

　完全にナメてる。レーゼ王国でそう名乗ってるのだから。偽名に決まっていた。

　冒険者ギルドのギルドマスターが仮面を外すように促しても一切仮面を外さず反抗的に【威圧】や【殺気】で無言の応酬するのだ。命が惜しくば黙るしかない。

　何度も素性を探ろうと尾行が放たれるが、光系の転移魔法を使って帰っていき、正体は杳ようとして掴めなかった。

　【鑑定】のギフト持ちでも鑑定出来ない。

　それは仮面の剣士レーゼの正体がトルオンで、トルオンが四半神族だから【鑑定】を通さないからだが、強力な古代のマジックアイテムの所有者という事にいつの間にかなっていた。

　その為、その仮面の剣士は･･･





　どこかの高貴な身分の男がレーゼ王国の平和を守る為に人知れず魔物と戦ってる。





　などという設定までが勝手に付け加えられていた。





　そして、その噂の主のトルオンは・・・・・・

　大金を得てウハウハで、そんな仮面の剣士の噂などが耳に入らぬほど有頂天になっていた。





　トルオンは既に素材を売った大金で高級ホテル暮らしをしていたのだ。

　それも、レーゼ王国だと知人と遭遇する可能性があるので、レーゼ王国の東隣国のアジャ公国の更に東隣国のテーレ連合の首都ソルンの高級ホテルで。





　夜、最上階の高級ホテルの一室の窓からバスローブ姿のトルオンは光が灯る夜景を見下ろしていた。

　トルオンは四半神に種族チェンジしたからか、この１００日間で容姿が少し変わっていた。

　身長は１８２センチから一気に１９８センチまで成長していた。

　黒髪には自然と金色の髪が少量生え、メッシュになってる。

　眼も赤色だったのが、金色が混じって橙色っぽくなっていた。

　顔も元々秀麗で精悍だったが、四半神になった事で更に美しさが増していた。

　肉体も美術品の彫刻像のように引き締まっている。

　もっとも今はバスローブ姿だったが。

　雰囲気も一介の剣士風の冒険者からカリスマ性のある英雄に変わっていた。

　そのトルオンが夜景を見下ろしながら、成功者の笑みを浮かべて、

「ククク、気分がいいな。その内、このホテルも買い取るかな？」

　そう嘯うそぶき、高級ワインを飲んだのだった。