上 下
22 / 22
御褒美

イチャイチャ剣技指導でお願いします【ソラーサside】

しおりを挟む
 都内校交流戦でミリアリリー女学園は優勝した。

 そして、私は全勝で都内校交流戦を終えた。

 そう、全勝で。

 つまり、エニスさまとのイチャイチャ御褒美だ。

 それを祝勝会の生徒が一杯の食堂で確認した私もバカだったと言えば、バカだったんだけど。





 ◇





 食堂の祝勝会で、妹2人と親衛隊と新聞部に囲まれてるエニスさまに向かって、

「・・・あの、エニスさま」

「何、ソラーサ?」
「私、都内校交流戦、全勝だったんですけど・・・」

「そうね。よく頑張ったわ、ソラーサ」

 エニスさまの言葉がそれだけだったので、私が慌てて、

「えっ、約束を覚えてないんですか?」

「何が? ・・・ああ、イチャイチャの約束をしてたわね」

 思い出したエニスさまの言葉で、周囲が殺気立ったり、新聞部が眼を輝かせたりする中、

「いいわよ」

 エニスさまはあっさりと約束の履行を承諾したけど、

「ちょっと待った。お姉さま、何、それ?」

 ミリアリリー女学園の1年生の公爵令嬢で、ミリアリリー女学園の1年生の中で2番目にヤバイと評判の妹のアテニナが質問して、エニスさまが、

「都内校交流戦で全勝したらイチャイチャしてあげる約束をしてたのよ。それでソラーサも都内校交流戦を頑張って。結果、優勝出来たから御褒美に」

「それで、どうイチャイチャするんですか?」

「イチャイチャ剣技指導だけど、それが?」

 えっ、そうなの?

 と私が思ってると、私の顔色を読んだエニスさまが、

「あれ? ソラーサはどう解釈してたの?」

 エニスさまに質問されたので私は素直に、

「えっと、イチャイチャ御褒美デートとばかり・・・」

「調子に乗ってるわよね、アナタ?」

 アテニナが最早、戦闘態勢の中、

「こら、約束なんだから騒がないの、アテニナ。ソラーサはそっちがいいのね?」

 エニスさまのその質問が妙に引っ掛かったので、念の為、

「ええっと・・・イチャイチャ剣技指導って1日だけなんですか?」

「いえ、イザベラの遊び相手が務まるくらいの強さを想定してたから、夏前くらいだと思ってたけど」

「デートだと?」

「そりゃ1日でしょ」

「イチャイチャ剣技指導でお願いします」

 私はきっぱりと言ったのだった。





 ◇





 そんな訳で、都内校交流戦が終わった翌日の平日だけどミリアリリー女学園の休校日。

 私は騎士団長のお宅にお邪魔していた。

「本当に来たわ。身の程知らずが」

 エニスさまの隣に居るアテニナが睨んでくる中、

「こら、言葉遣いを正しなさい、アテニナ。ソラーサは先輩なんだから」

「ここはミリアリリー女学園じゃないので嫌です」

「ったく、それじゃあ、訓練をしましょうか」
 
「えっと、鬼教官モードじゃなくて、イチャイチャなんですよね?」

「ええ、そうよ」

 とエニスさまはニッコリと微笑してそう私に約束したのに・・・・・・・





 嘘だった。





 もう一度言うけど、嘘だった。





 屋内闘技場の床に座るどころか、へばってお尻を突き出して無様に腹這いで寝転んでる私にエニスさまが鬼教官モードで、

「ほら、立ちなさい、ソラーサっ! まさか、都内校交流戦に全勝で優勝した翌日にはもう天狗なのかしらっ?」

「エニスさま、約束が・・・」

「はあ? 優しいでしょうが、十分」

 エニスさまが堂々と嘘をつく中、

「無理無理、お姉さまにイチャイチャ剣技指導なんて」

 小柄な割に体力が無尽蔵なのか、平然と立ってる妹のイザベラさんがそう言って、

「心配して損しちゃったわ。昨日、悔しくて悶々とした時間を返して欲しいくらい」

 もう1人の妹のアテニナは私と同じでへばって床に正座しながら、そう言ってたけど・・・





 ドMじゃないけど、エニスさまに模擬刀で虐められてるに私は興奮して・・・

 ドMじゃないけど、これはこれで御褒美としてはありよね、と思ったのだった。






 ドMじゃないけどね。





 ◇





 なのに、都内校交流戦の翌日の休みと週末を挟んでミリアリリー女学園に通学したら私に向けられた視線が変で、その視線も何かいいかも、とか危ない事を考えてると、同じクラスの新聞部員で、それほど親しくはなかったフラミーヌさんが、

「ねえ、ソラーサさん。どうだった、エニスさまとのイチャイチャ剣技指導?」

「全然、イチャイチャじゃなかったからっ! こっちは手とり足とりキャッキャと楽しいのを期待したのに・・・妹2人と一緒にみっちりシゴかれただけだからっ!」

 私は憤懣を口にした。

 メモをとりながらフラミーヌさんが、

「つまり、妹以外に初めて剣術指導が認められたと?」

「ええ、その解釈はあってるわ。ミリアリリー女学園の昼休みも食堂に来るように言われたし、放課後、エニスさまの下宿先に出向く事も許されたから」

「ふむふむ。他には? 休日の昼食は、エニスさまの下宿先では何をいただいたの? エニスさまの休日の訓練着って、どんな格好だったの? ってか、今日の朝、そのエニスさまと都内校交流戦で副将を務めたマリンピーチさまがマリンピーチさまの家の狼車で一緒に登校した件で何か知ってる事はない?」

 踏み込んで質問されて、知ってたので、

「ちょ、ちょっと待って。喋っていいのか、エニスさまの確認を取らせて」

 と私は焦る破目になったのだった。





 おわり
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

【完結】後妻に入ったら、夫のむすめが……でした

仲村 嘉高
恋愛
「むすめの世話をして欲しい」  夫からの求婚の言葉は、愛の言葉では無かったけれど、幼い娘を大切にする誠実な人だと思い、受け入れる事にした。  結婚前の顔合わせを「疲れて出かけたくないと言われた」や「今日はベッドから起きられないようだ」と、何度も反故にされた。  それでも、本当に申し訳なさそうに謝るので、「体が弱いならしょうがないわよ」と許してしまった。  結婚式は、お互いの親戚のみ。  なぜならお互い再婚だから。  そして、結婚式が終わり、新居へ……?  一緒に馬車に乗ったその方は誰ですか?

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ヒューストン家の惨劇とその後の顛末

よもぎ
恋愛
照れ隠しで婚約者を罵倒しまくるクソ野郎が実際結婚までいった、その後のお話。

【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜

よどら文鳥
恋愛
 フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。  フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。  だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。  侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。  金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。  父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。  だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。  いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。  さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。  お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。

処理中です...