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白羽家と聖ミカエル女子大学高等部

いきなりアクセサリー盗難事件発生、犯人はアリス(濡れ衣)

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 都内にある日本一のお嬢様学校、聖ミカエル女子大学の高等部の正門から車体の長いリムジンが入ってくる。

 お嬢様学校なので正門を潜った校舎の玄関前には送迎の車が停車出来るロータリーがあった訳だが、

 そのロータリーはリムジンには狭過ぎるらしく、校舎の玄関前では乗り付ける事が出来ず、仕方なく3メートル手前で停車した。

 停車したリムジンの中から現れた制服を纏った女生徒はアリスだった。

「あぁ~、眠ぅ~」

 とアリスが言ったのは寝不足だったからだ。

 別に気が変わったジュンに夜這いされて寝不足な訳ではない。

 純粋に枕が変わった所為で寝付けなかっただけだった。

「いってらっしゃいませ」

 アリス担当のメイド(今は黒服のパンツスーツを着用)の20代の出来る女、長谷川凛子に鞄を渡されて、

「いってきます、長谷川さん」

 アリスは登校したのだった。

 聖ミカエル女子大学の高等部の玄関ロータリーはリムジンだと正門を出るのに3回以上の折り返しが必要で、送迎車で混雑する朝の通学の時間帯では普通に他の車の通学の邪魔だ。

 その為、転校初日からモロにアリスは悪目立ちしたのだった。





 聖ミカエル女子大学の高等部の校舎の高等部長室で、50代マダムの高等部長の野村が、

「平良アリスさん、ようこそ、聖ミカエル女子大学高等部へ。最初に断っておきますが特別扱いはしませんからね」

「ええ、もちろんです」

 と答えてから、ふと疑問に思ったアリスが、

「ええっと、転入テストは受けなくていいんですか?」

「平良さんの場合は特別に免除です」

 舌の根も乾かぬ内にそう答えた高等部長の野村がニッコリと微笑んだ。

「ありがとうございます」

 アリスは礼を言いながら、内心では、

(この高等部長、ジュン君の御爺様くらい凄味があるわ。絶対に怒らせないようにしよう)

 本能的にそんな事を考えていた。

「では、高校生活を楽しんでくださいね」

 どうせ後で問題になるのでアリスが先に、

「ええっと、実はキス映像がネットに流れてて・・・・・・」

「事情は伺っております。転校以前の事は不問と致しますので」

「ありがとうございます」

 アリスはこうして挨拶を済ませて、





 2年4組の教室の教壇にて、





「平良アリスです、よろしくお願いします」





 と挨拶し、

 さすがはお嬢様学校だ。

 好奇心が旺盛なのか、





「どちらの平良家なんですか?」

「聖ミカエルに転校するまではどちらの外国でお過ごしだったの?」

「お住まいはどちらなんですか?」





 質問が飛びに飛んだ。

 対して、アリスは、





「いえいえ、庶民の平良ですよ」

「都内の大鳳学園に居たんですが、先輩男子に無理矢理キスされちゃって、その映像がネットに流出しちゃって。それで女子校に転校する事になりまして」

「親が海外なので、日本での私の後見人の方のお屋敷です」





 嘘も混じえて応答したのだった。





 ◇





 今朝のロータリーでのリムジンの折り返しのお陰で、校門前では登校車の渋滞が発生した。

 車を下りて徒歩で登校しなかったが為に、遅刻した生徒は40人以上を数えたほどだ。

 ここでのポイントは、正門前に出来た車列の停車中に『下車して徒歩で登校して遅刻を回避しなかった』点だ。

 つまり、そういう性格の女子達が40人以上居た訳だ。

 そんなキツイ高慢な性格の女生徒達が遅刻の原因となったリムジンに乗っていたアリスを許す訳がなく、





 初日の2限の体育(社交ダンス)を挟んだ3限目が始まる前に、





「ないわ。私の指輪が」

「私のネックレスも」

「私のピアスと指輪も」

「私のもよ」





 と、何と8人もの女生徒が騒ぎ出して、勘の鋭い名探偵アリスは、

(嘘でしょ、これって、まさか・・・)

 お約束のパターンだと気付いたがどうする事も出来ず、

 『無い』と騒いだ女子の1人が、

「アナタでしょ、平良さん?」

 アリスを犯人扱いして、

「アナタに決まってるわっ! アナタが転校してくるまでこんな事なかったんだからっ!」

「その鞄の中を見せなさいよっ!」

 強引に机の横に引っ掛かってたアリスの鞄を確認したら本当に8人分のアクセサリーが山のように出て来て、

「あったわ、私の指輪っ!」

「信じられない、人の物を盗むなんて」

「謝りなさいよっ!」

 と、あっという間に濡れ衣を着せられて、正直者のアリスが、

「アナタ達が入れたんでしょ、どうせ?」

 看破した所為で、正直な女生徒1人がひるんだが、他の7人は、

「何よ、盗んでおいて、開き直るなんて最低っ!」

「そうよ、謝罪しなさいよっ! 警察に被害届を出してもいいのよっ!」

 と騒いでると、3限目の数学のオバサン先生がやってきて、

「何を騒いでるんですか、皆さん? 授業を始めますよ」

「平良さんが私達のアクセサリーを盗んだんです」

「はい?」

 その後、事情を聞いたオバサン先生が、

「ええっと、転校生の平良さん、アナタはとりあえず生徒指導室へ」

「私は取ってませんけど?」

「鞄から出てきた以上は説明責任がありますから」

「・・・わかりました」

 とアリスはその後、





 生徒指導室どころか朝に挨拶に出向いた高等部長室に向かわされて、

「初日からですか、平良さん?」

 高等部長の野村に呆れられて、アリスは一応、遭った出来事を説明した。

 説明を聞いた高等部長の野村が放った一言は、





「本日は帰るように。こちらで処理しておきますので」





 だった。

 アリスは『ラッキー』と思わなかった。

 『処理』という言葉を聞いて背筋をゾクリッとし、

「あの、出来れば穏便に・・・」

 被害者のアリスがフォローする破目になったくらいだ。

「お優しいのですね、平良さんは。大丈夫ですよ、通常通りに対応するだけですから。平良さんは本日は帰るように」

 と言われて、高等部長室を出たアリスは仕方なしに3限目の授業中の教室に荷物を取りに戻って、

「本日は帰るように先生に言われたので帰りますね」

 そう口を開いて荷物を纏めた。

 教室の生徒達からは冷たい視線や嘲笑を浴びたが、アリスはと言えば、





(目立つの嫌いなのに、どうして毎回こうなっちゃうのかしら? 寝不足はお肌の天敵だから帰ったら昼寝でもしよっと)





 と別の事を考えていた。
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