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ゾンビは既に死んでいる。よって弱点が多い。防衛対策が万全だと手が出せないが反面ハマると

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 3日後。

 農夫達が向かった方向に歩くと、麦畑の中に村を発見した。

 煉瓦の塀が周囲を囲い、見張り台もある。

 そればかりか、城壁の外には5メートル幅の水が溜まった堀がグルリと囲んでいた。

 結構深い。

 どれだけ水が豊富なんだ?

 あの川に合流する小川から水を引いてるのか?

 と周囲を確認したら、例のオレが流された川の方から水を引いていた。

 水道橋ではなく地面を掘って石製で整備された水路だったが。

 そうだよな。

 普通はこっちだよな。

 その方が安全だし。

 水道橋なんて建てるから付け入られるんだよ、アテミスは。

 オレは村へと近付いたのだった。





 村への侵入は堀がある為に地中からは無理だ。

 入口から入る必要がある。

 村の入口は2カ所。

 両方とも稼働する跳ね橋だった。

 そして、一番大切な事だが。





 この堀に落ちたらゾンビのオレは詰みだ。

 この深さだと自力では這い上がれないのだから。

 水の入口の用水路にも上がれないだろう。





 以上の理由から、オレは戦術的撤退を余儀なくされたのだった。

 村に入った後に跳ね橋を上げられたら村から出れないのだから仕方がない。

 無謀や弱腰と冷静な判断は違う。

 今回、オレは安全を取り、この村から離れたのだった。





 ふん。

 この村を設計した奴、相当優秀だな。

 褒めてやるぜ。





 ◇





 オレは更に南下した。

 人生山あり谷ありだ。

 せっかく辿り着いた村を襲撃出来ずに撤退して、傷心していたオレの前にテント村が現れたのだから。

 どうしてこんなボーナスタイムが?

 オレを釣り出す為の罠?

 オレは警戒しながら麦畑が途切れた場所にテントを張ってる連中に視線を向けた。

 テントの数は200以上。

 用水路の水で生活してるのか?

 アテミスからの流民?

 大都市に向かわずにここで野営をしている?

 オレは麦畑を掘ってテントへと近付いた。





 本当にテントで生活してた。

 オレの読み通り、アテミスからの流民が。

 その数1200人。

 難民キャンプで食事を作ってる配給係が言ってたのだから間違いない。

 冒険者や兵士も100人以上が警備をしてる。

 これを一網打尽にしたら凄いだろうな。

 オレは難民キャンプの地下に道を掘りまくった。





 ◇





 準備期間は5日。

 雨の夜を待って行動開始だ。

 寝静まったのを待って、片っ端からテントの隙間から闇の手を発動。

 眠ってる流民を更に落とす。

 1200人居るのだ。

 テントも280以上。

 これだけの数を落とすのだから一苦労だ。

 だが、闇の手1回で複数落ちると分かったのは行幸だった。

 闇の手の射程範囲は5メートル。

 小さなテントの中で雑魚寝してくれてるお陰で闇の手1回でテントの中に居る全員が落ちるのだから。

 それでも数は280張り(テントの単位)以上。

 『闇の手の闇は持つのか?』と心配してたら、

 真面目な話、数えてなかったのでアバウトな当て推量だが150回程で本当に闇が尽きた。

 全く闇が出ない。

 仕方がないので、テントの中で美味しくいただいて闇の回復を試みる。

 身体の損傷個所も修復出来たのだから、闇も回復するだろう。

 案の定、美味しくいただいたら闇がまた出て、オレは落とす作業に戻った。

 入口が向かい合わせになってるテントなので2列ずつ落としていった。

 雨の日に難民キャンプ内を巡回する冒険者は少ない。

 雨なので濡れてまでテントから出る人間も。

 巡回は数組居たが、連中は全員が魔法の光を光源としていた。

 雨だから松明だと火が消えるのだろう。

 暗闇の中、遠方からでも見える為、落とした連中のテントの中に避難して、巡回をやり過ごす。

 戦闘が目的ではない。

 重要なのは隠密性だ。

 雨の夜の巡回をやり過ごしながら、

 280張りのテントの住民全員を落とすのに闇の手1回でも体感2時間を要する大仕事となった。

 何分なにぶん、ゾンビなもので、ノロノロ歩きだからな。

 当然、テントの中で休憩中の兵士達や冒険者達も落としてる。

 この難民キャンプは麦畑の用水路を中心としている。

 用水路のある場所が調理場で、テントが放射状に設置されていた。

 その外周には土を掘った土塁だ。

 土塁とは土を盛っただけの塀だ。

 土塁には出入り口の木製の門なんかも建築されている。

 結構、本格的だ。

 土塁の上にもテントがあり、警備の連中が守ってる。

 他にもファンタジーの地雷なども外周に張り巡らされてるらしいが。

 内側から攻撃されたこんなに脆い訳だ。

 土塁は土だ。

 掘れる。

 テントの傍にも既に道はある。

 雨の日に外に立つ真面目な奴は居ない。

 警備も全員、土塁の上に設置されたテントの中だ。

 土塁の上のテントの入口は外側を向いている。

 テントの中からでも警備は出来る訳だ。

 テントの中の警備員も落としていく。

 土塁は半円を描いており、麦畑側にはない。

 オレが地中を潜った場所は地面の地雷のみとの事だ。

 土塁の警備員のテントを落としていく。

 途中で雨の中、フード付きのコートを纏った巡回の2人がオレが落としたテントに近付いたが、人数は2人なのはオレにとっては何ら脅威ではない。

 1回で倒せるか試したかったが確実性を重視して、両手の闇の手の闇で同時に落とす。

 その後も土塁の兵士や冒険者を夜の雨に紛れて落とした。





 そして1時間後、

 夜の雨だけが音を奏でる中、全員を落としたオレはボーナスタイムを美味しくいただいたのだった。
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