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剣を失う、逃げろ逃げろ逃げろ、破壊の女神メアリーモカの右腕

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 オレは凄い。

 聞ききたってか?

 だが、事実だ。

 戦闘力17万のオレが剣を本気で投げれば岩盤20メートルに直径5メートルの穴くらいは簡単に開けられる。

 何が言いたいのかと言えば・・・





 投げたシルバードラゴンの牙剣が見つからなった。





 方角はあってるが、一向に発見出来ず、

「見当たらないわ、もうっ! 時間がないのにっ!」

 元々夕方だったのであっという間に夜になり、

 チャーリーにも、

「この付近にはないなのだ。諦めて帰るなのだ」

 と言われた。





 ちくしょう。

 お気に入りだったのに。

 ってか、武具は武器も防具も同系等で揃えるのがオレの美学だったのにぃ~。





 そんな訳でオレはシルバードラゴンの牙剣を失ったのだった。





 ◇





 因みに、数日後、

 何か世界の果てに住む暗黒竜サバンキールがオズ帝国の帝都オズブラックまで出てきて半壊させたそうだ。

 その暗黒竜サバンキールの右眼には銀色の剣が突き刺さってたんだとさ。

 オレには全く関係のない話だが。





 ◇





 えっ?

 剣よりも消滅した首都バラッカスの連中の事をいためって?

 何を言ってるんだ、おまえら?

 まるでアレで終わりみたいな事を言って。

 ・・・ああ、そうか。

 説明してなかったな、おまえらには。

 アレで終わりじゃないからな。

 破壊の女神メアリーモカの力を使った魔法は。





 いや、消滅魔法はあれで終わりだ。

 だが魔法を使った後の方が大問題だから。

 破壊の女神メアリーモカってのは。





 そんな訳で、

 夜にも関わらず、透明のオレは空飛ぶホウキで全速力で飛んでいた。

 まるで逃げるように。

 なのに、チャーリーが、

「ロザリア、お腹が空いたなのだ。食事休憩を所望するなのだ」

「何、呑気な事を言ってるのよ。ほら、これでも食べてなさい」

 オレはアイテムボックスから薬草を出したが、

「もっとシャキシャキの採れたての新鮮な薬草が食べたいなのだ」

 チャーリーがわがままを言い始めた。

「冗談でしょ、チャーリー? さっさと逃げないとヤバイ事になるってのに」

「? どうヤバイ事になるなのだ?」

「だからあの馬鹿が消滅魔法を使った所為で・・・えっ、もしかしてチャーリーは知らないの?」

「何をなのだ?」

「あの消滅魔法を探知した破壊の女神メアリーモカが無理矢理、こちらの世界の狭間をこじ開けて降臨して破壊活動をするんじゃないの」

「・・・そんな事、可能な訳がないなのだ」

「いやいや、前に私、見た事があるから。その時に巻き添えで半殺しにされて・・・」

 とオレが説明した時だった。

 爆発的な神聖力の高まりを後方で感じた。

 オレは瞬時に振り返り、チャーリーが、

「なっ、何なのだ、あれは?」

「だから言ってるでしょ、アレが・・・」

 もう名前は呼べない。

 呼んだら狙われそうだから。

 振り返ったオレの視線の先には、遠方だが、

 黒い雷と共に、世界の狭間が無理矢理こじ開けられて、巨大樹級の巨大な右腕が出てきていた。

 実体じゃない。

 黒い雷を纏った半透明だから。

 神聖力が巨大な腕の形状をしてるだけだ。

 まあ、美しい女神の腕なのだろう。

 腕環や指輪等々の装飾品なども込みだったからな。

「絶対に、こっち側に向くんじゃないわよっ!」

 オレはもう空飛ぶホウキなんて指輪の中に戻して、チャーリーの足を掴んで、

「ギャアアア、持ち方の改善を要求するなのだ」

 全力のマジ空中ジャンブの連続で巨大な腕から逃げていた。

「そんな事言ってる場合じゃないでしょうがっ!」

 オレは逃げに逃げまくる。

 無論、振り返ってチラ見する事も忘れない。

 その腕が振り上げられて・・・

 ホッ。

 良かったぁ~。

 こっちの方角じゃなくて。





 振り下ろされたのだった。






 ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ。






 直後に大地震が発生だ。

 地面が大揺れに揺れ、飛翔系の魔物や鳥達は一斉に羽ばたいていたが。

 もう巨大な右腕は消えていた。

 今の一振りで力を使い果たしたようだ。

「ふぅ~。馬鹿が使った消滅魔法が巨大だったから、今回は1撃で消えるかどうかヒヤヒヤしちゃったわ」

「今のヤバイのは何なのだ?」

「だからヤバイ女神よ。まだ世界の狭間に穴が開いてたら洒落にならないから名前は言わないけど」

「・・・滅茶苦茶な女神なのだ」

「元々は女神の列席じゃなかったらしいわよ。創世神話戦争時に邪神側からの寝返り組とかで」

 おっと、喋り過ぎたな。

 それよりも、オレは地面を見た。

 大分離れてるのに大地は波打った波紋の形状で段々になってる。

 首都バラッカスの消滅に続いて、この大地震の損害。

 もうイエロ将国は終わったな。

 という事は、あの俗物王は生き残った訳か。

 あの男、運だけは強いようだな。

「これは酷いなのだ」

「それよりもさっさと帰るわよ。私がイエロ将国に居る事がバレた日には、また良からぬ噂が立つから」

「ロザリアはこういう事に妙に慣れてるなのだ」

「うっさいわね。ほら、さっさと帰るわよ」

 そんな訳でオレはマジ空中ジャンプを駆使して、僅か3時間でメシコス王国のバルメシコ宮殿に帰還したのだった。





 途中で首都バラッカスの消滅で帰国中のイエロ将国の軍隊とはち合わたが、透明のオレは何事もなかったかのようにすれ違った。

 バレたら本当に拙いからな。





 ◇





 そして、帰還と同時に、夜10時を回っていたのに謁見の間に俗物王に呼ばれて、

「勇者ロザリアがやってくれたのかな?」

 そう問われた。

「何をです?」

「首都バラッカスの消滅さ」

 情報を聞いたのか御機嫌でオレを見てる。

 この俗物王がっ!

 全然違うわっ!

 オレに冤罪を被せる気かぁ?

 まあ、出来なくもないが。

 ブチギレそうになったが、

「えっ、何の事ですか、それは? そう言えば凄い地震はありましたが。私はマルベル大寺院を調査してただけですよ。少し帰るのが遅くなってしまいましたが」

 そうすっとぼけて真相を闇に葬ったのだった。





 そうじゃないとオレの名声が地に落ちるからな。

 自己保身だと?

 違うな。

 破壊の女神メアリーモカの存在は秘匿するのが女神達の御心だから、それに従ったまでさ。

 嘘だと思うなら大地の女神ミーカルに聞いてみろ。





 こうしてオレはちゃんと否定してから就寝し、この日は色々あったからベッドでかなり燃えたのだった。
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