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ただいま静養中、モロ好みの暗殺者、名声を得る
しおりを挟むオレの元居た世界では急激な強さの会得は身体に一時的な不調を齎すと決まっていた。
強さに順応する為に肉体や精神が強くなってる過程の現象なのだとか。
まあ、簡単に説明するならば、
鍛錬して筋肉痛を経て、筋力が付くみたいなモノだが、それは肉体の話だ。
魔力では説明するのならば、
魔法で炎の矢を1本しか射てない奴が無理矢理2本撃ったとしよう。
通常は自然の摂理に反して出来ない事だが、事前に魔力量を上げる薬品などを使うと可能となる。
魔法の矢1本が限界の奴が2本くらいならまだ問題ないが、魔法の矢1本が限界の奴が5本使うと問題で、その後、ぶっ倒れ、
数日の苦しみの後、1本しか使えなかったのに薬なしでも5本とまではいかないが、2本撃てるようになってたりした。
その上達法は推奨こそされてないが、魔術師の間では誰もが知ってる最速の上達方法の1つで、誰もがやってる事である。
まあ、最初の頃だけだがな。
魔法の矢3本までかな?
それ以降は才能以前に、薬品を入手する為の金銭が続かないから。
◇
さて。
こんなどうでもいい説明を長々としていたのには訳がある。
オレは前回の戦闘で使い魔アルがプールしてた大地の女神ミーカルの神聖力を使い、戦闘力25万で戦っている。
融合時のオレの戦闘力が14万だったのにだ。
つまりは戦闘力11万の上乗せって事だ。
では、その後、どうなったのか?
全身、筋肉痛で超ダルくてやる気が出ない状況に陥っていた。
もっと、はっきり言えば、
西の果ての大瀑布に一番近いナガン諸島国所属のモンロー島のリゾートホテルの一室でぶっ倒れていた。
まあ、これでも幸運な方なのだが。
何せ、大地の女神ミーカルの神聖力を使ったからな。
オレは四半神だから、この程度で済んでるが、
最悪、大陸亀やデカ蜘蛛みたいに絶対に良からぬ現状が起きてたはずなのだから。
デカくなってたかもな?
それはそれで面白そうだが。
いや、ないか。
食事はどうするんだって話だ。
デカくなってもすぐに食糧不足になるからな。
それに服問題だってある。
真っ裸は拙いだろ、女の身体なんだから。
おっと、話が逸れた。
ともかく、そんな訳でオレはもうベッドに10日間も寝ていた。
1人でかって?
悟れよ。
3人も恋人が居るんだから。
組んず解れつだよ。
それでもまだ本調子じゃなかったが、
そういう時に限って問題事がやってくるのだった。
◇
オレの不調情報を入手した何者かが暗殺者達を放っていた。
いや、違うな。
オレは今、ナガン諸島連合に居るんだから。
日数的に合わない。
それなら、暗殺依頼を受けた連中がオレ達の足取りを追跡してて『ようやく追い付いた時、ちょうどオレが不調だった』と見た方がいい。
最近、勇者行脚をしてるからな。
オレが勇者として活動したら邪魔な連中が居るのだろう。
暗部や暗殺部隊が飛んでくるのは有名税って奴さ。
そして、
オレの恋人達の戦闘力は雑魚相手には高いが、今回の暗殺者3人は、
戦闘力780。
戦闘力560。
戦闘力490。
と凄腕の3人で、
船で呑気に接近してる時から精神過敏になっていたオレが気付いていたので、オレが出る事になった。
暗殺者の襲来と言えば夜だ。
そんな訳で、ホテルの屋上で、オレはシルバードラゴンのフード付きのコート姿でソイツラと対峙していた。
えっ?
下が裸だって?
仕方ないだろ。
こっちは本調子じゃなくてビキニ鎧を纏うのも面倒臭いんだからよ。
だったら、コートの前を閉じろって?
だから、それをするのが面倒なんだよ。
それにいいだろ、誰も見てないんだから。
「何か用かしら?」
オレが不機嫌に問うと、
「おまえを殺せてと言われてる」
「ってか、裸コートで前全開って痴女じゃん」
「さっさと始末しましょう」
仮面を付けた暗殺者3人が口々に答えた。
全員女だった。
参ったな。
新しい恋人が欲しかったところにスタイル抜群の女暗殺者達が登場って。
それも戦闘力560は竜気だから。
ポイント高過ぎだろ。
どうしよう。
ゴッドフィンガーでゲットしてしまうか?
いやいや、今は3人が微妙に不仲だから、ここで4人目投入は拙いか。
「誰に頼まれたの?」
「おまえは知らなくていい」
その戦闘力780の言葉で他の2人が殺気立つ中、
「なら、最後に。大地と海、どっちが好き?」
「海は嫌いね。潮風が臭いから。水なら好きだけど」
との言葉と同時にまずは戦闘力490が突っ込んできた。
オレを痴女とか言ってたムカつく馬鹿女だったので、手首を掴んで、
グルン、グルン。
「おりゃああああ」
とハンマー投げをして、
「キャアアア」
3秒後にはキラリンッとお星様になった。
無論、西の果てに投げてやったぜ。
プププッ、490じゃあ、戻って来れまい。
戦闘力780が影魔法(多分、アイテム)を使って、オレの足を影の中に沈めようとしたが、
無駄無駄無駄っ!
オレは四半神なんだぜ。
種族特典で魔法は常時、無効化や弱体化してるんだからよっ!
オレは一瞬で戦闘力780の前に移動して、手首を掴むと、
「またね」
グルン、グルン、
「うぉりゃああああああ」
とハンマー投げをして、戦闘力780を投げた。
もちろん、東側の大陸側だ。
おっ、生意気にも【空中停止】しようとしたか。
だが、無駄無駄無駄ぁっ!
オレのお星様投げはエスケープ不可なんだからよ。
まあ、運が良ければ助かるだろう。
そして最後の戦闘力560の竜気を見た。
「今晩、私に付き合ったら見逃してあげるけど?」
「ふざけた事を・・・はあああっ!」
投げナイフを投擲しながら突っ込んでくる。
竜気を纏ってるから本来なら盾も貫通だが、オレは飛来する3本のナイフを指の間に挟んでカッコよく止めた。
そしてオレは、
顎クイして、チュッ。
普通にキスした。
えっ、戦闘中に何してるんだって?
いやいや、好みのタイプだったら戦闘中でも口説くよな?
次、いつ会えるのか分からないから。
「この、何を・・・」
竜気で強化したビンタしてきたが、オレは身体を引いて避ける。
おっ、純情だな。
赤面してる。
「また会いましょう」
オレは腕を掴んでグルン、グルンッと振り回して、
「はああああああっ!」
ハンマー投げの要領で投擲した。
「キャアアア」
3秒後にはキラリンッとお星様になった。
方角は南東側だ。
「イチチ。まだ本調子じゃないわね」
オレは背中を摩りながら、ホテルの部屋に戻ったのだった。
◇
身体の不調が治らない。
もうリゾートホテルに20日も宿泊しているのに。
宿泊費は問題ないが、正直ウンザリだった。
最近になってようやくプライベートビーチにも行けたが、女性専用じゃないのでナンパされて、不調だったのでオレがせっかく我慢したのに、アシュとリラとシュー(シューリーンね)の3人がナンパ男を半殺しにしてビーチの出禁を喰らう始末だし。
そんな訳で、
喧嘩の翌日にはナガン諸島連合国の女将軍が飛獣と一緒に軍隊でやってきた。
戦闘力440。
紺髪ロングで凛々しい系のお姉様の、巨乳のクールビューティーだ。
種族は獣人だが、狐ではない。
年齢は20代後半かな?
というか、ナガン諸島連合の兵装は陸海両用の為、身体のラインが出るダイビングスーツ仕様だった。
「聞きたい事がある」
女将軍が登場って。
冗談じゃねえぞ。
喧嘩なんて微罪で逮捕なんてされて堪るか。
「最初に言っておきますけど、アシュ達の身体をなれなれしく触ったナンパ男達の方が悪いんですからね」
オレの説明を聞いた女将軍のリアクションは、
「何の事だ?」
だった。
???
ええっと。
「・・・そちらの聞きたい事とは?」
「西の果てで巨大クジラの群れが海面に浮かんでる事案が発生してな。調べてみれば全頭が一刀で斬り伏せられていた」
あれ?
メッチャ心当たりがあるんだが。
何か問題でも?
軍が出てくるって、もしかしてクジラの愛護活動でもしてるのか、この国?
「そんな事出来る奴が居るとは思えないんだが、大陸では巨大蜘蛛を一刀で倒した女勇者が居るとかで、それがおまえなのだよな?」
オレは様子を伺うように、
「・・・それが?」
「ズバリ聞くが、おまえがやったのか?」
「ええ、まあ。でも正当防衛です」
オレはそう主張したが、
「だとするとあのクジラの群れの所有権はおまえにある訳だが・・・」
全然違った。
ああ、そっちね。
女将軍の目的を知ったオレは、
「欲しい方々に進呈しますよ」
太っ腹というよりは面倒臭いのでそう言った。
だって、そうだろ?
今更戻って素材剥ぎとかやってられるか。
ってか、あのデカさだぞ。
アイテムボックスにも入らないのに。
すると、女将軍が、
「いいのか?」
前のめりに喰い付いてきた。
「無論です」
「では譲渡書にサインを頼む」
「はあ」
マジでその後、譲渡書にサインすると、
「ありがとう。あれだけの鯨肉と鯨油があれば、問題は総て解決だ」
「はあ」
「何かお礼がしたい。望む事はあるか?」
「じゃあ、宣伝活動を大々的にお願いしますね」
「お安い御用だ。すぐにやらせよう」
その約束は翌日には実行されて、大々的に新聞に載ってオレは更なる名声を得たのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
登場人物。
戦闘力780・・・カタリア。ヴァンパイアハーフ。魔十教団の下請け暗殺者。親のヴァンパイアは夜王の眷族。
戦闘力560・・・レゼ。人間。魔十教団の下請け暗殺者。竜玉体内移植成功体。
戦闘力490・・・ネイ。猫人。カタリアの妹分。
女将軍・・・スレイ・ナルバ。ナガン諸島連合国の空軍トップ。虎人。父親は議長。
国名。
ナガン諸島連合・・・ナガン諸島の14の島連合。元首は議長。
地名。
モンロー島・・・ナガン諸島連合の1つ。高級リゾート島。果物と貝殻細工が名産。
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