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獄界追放者とは、参戦要請、手柄は独占しないに限る
しおりを挟む獄界追放者。
ぶっちゃければ、創世記に神々に敗北した負け組だ。
『何か』は不明。
巨神や邪神の類のなれの果てらしい。
悪魔ってのも『その末端』って分類だそうだ。
連中の強さは追放された階層によって違う。
その階層だが、ここでの注意点。
第1層が一番凄いからな。
これが面倒臭くてさ。
普通は地下なら数字が大きな方が下な訳だが、どうも第1層から獄界が作られたとかで、その順番になってる。
ソイツラは獄界に封印されている。
なので、通常は出れないのだが、
オレ達の世界の住民の中に、神々の定めた理に違反した獄界追放者が出た場合にのみ、その身体を乗っ取る事が出来た。
誰が考えたのか、そういうルールなんだとさ。
それが前回の巨乳ちゃん達の現象である。
これはオレの元居た世界と今のこっちの世界も同様だった。
◇
因みに、あの眼玉はそれとは違う理だから気にしなくていいぞ。
◇
・・・でだ。
そんな奴を放っておくと世界が大変だ。
狩らねばならない。
戦闘力800が2人。
正直言って小国を滅ぼせる戦力だ。
強者は一般常識があるのでやらないが。
だって、その後、メッチャ包囲網とかが出来て、結局は殺されるんだ。
面倒なだけでやらないだろ、国家を潰すのなんて。
だが、獄界追放者は違う。
中身が女神に敗北した負け組な『何か』な訳で常識なんて通用しない。
闘争本能剥き出しだ。
なので、必ず暴れる。
まあ、第5層より下の雑魚はだが。
元の世界で第3層の奴と対峙した事があるが、その時は用心深くなってて、人間のフリなんて真似もして大変だったがな。
何が言いたいかと言えば、獄界第9層追放者の討伐など、こっちの世界で四半神に成り上がった勇者のオレには余裕だった。
どのくらい余裕かと言えば、
翌朝、温泉街ソーゴの市長に、
「昨夜は魔物を退治していただきありがとうございました。これは些少ですがお納め下さい」
とお礼と礼金を貰った後に、
「大地の女神ミーカル様からのお達しなのだ。連中を追えなのだ」
とオウムのチャーリーに言われても、
「了解」
二つ返事で答えれるくらい余裕だった。
◇
問題は連中の居場所である。
こっちの足は飛竜だ。
移動距離が長い分、居場所も分からないのに無暗に移動して、方角を間違うと逆に遠のく。
チャーリーも、オレも、遠距離に居る第9層追放者なんて雑魚、探知出来る訳もなく、
「どうやって探すの、チャーリー?」
「どうせ暴れるだろうから、情報が入るまでここで待機なのだ」
という訳で、
「なら、スパに行こうぜ、ご主人様」
アシュに連れられてスパでお風呂に入った。
リラは仕事だ。
エガシー王国本国にオレの情報を送ってるらしい。
アシュがオレの身体をやたらと洗いたがり、
「何?」
「あの女の匂いが付いてるから」
「ああ。じゅあ、今日はアシュに洗われるわね」
アシュに身体を素直に洗わせたのだった。
◇
連中の居場所はすぐに判明した。
2日後に、メシコス王国の王都バルメシコを落として国王や王妃を殺したのだから。
国中、大騒ぎだ。
ナァ~イス。
オレの勇者伝説がまた1つ増える事になるのだからな。
えっ?
マッチポンプじゃないのかって?
おいおい、頭、大丈夫か、おまえら?
全然違うだろ。
どっかの狡い奴が神々が定めた理に違反してるのも知らないで、やり方も用途も良く分からないのに大地の精霊の力を得ようとして加減を間違って追放者になっただけなんだからよ。
オレはこの件は無関係だ(言い切った)。
そもそも大地の女神ミーカルが『ちゃんと魔法陣を破棄して下さいね』と言わなかったのが悪い。
ん?
誰かが使うのを予期待してたんじゃないのかって?
失敬な。
あの夜はOKサインを出したリラに赤面しながら、
「ベッドでお帰りをお待ちしてますね」
って言われたから、早くベッドに戻ってリラを可愛がる事を考えてて失念していただけだよ。
男なら分かるだろ?
事故だよ、事故。
おまえが言うなだって?
本当、失敬だな、おまえらは。
◇
さて。
バルメシコ宮殿に乗り込む訳だが、このテの騒動には手順が居るのを知ってるかな?
ズバリ、メシコス王国の要請だ。
これがないと褒美にもあり付けないし、目撃者も居ないから英雄譚にもならない。
意外と重要なんだぜ、その国との繋がりと、マスコミ対策は。
そんな訳で、温泉街ソーゴで寛いでると、午前中にソーゴの市長が国王の弟で侯爵って奴を連れてきた。
侯爵って言っても50代の樽腹の醜い男だったがな。
ダメだな、この令嬢。
『運がいい』とは言ってもこの程度か。
元の世界のオレなら、こういう時、必ず姫騎士を引き当てるのに。
まあ、嘆いてても仕方がない。
前向きにいこう。
それにしても、もう少しマシなのが居なかったのか?
凄くダメだろ、コイツ。
初対面の印象は『コイツ、嫌い』だから。
まあ、オレも勇者だ。
腹芸くらいは出来る。
「貴様が『古代毒蜘蛛ギガノダー』を倒し、黒い翼の生えた人型の魔物を倒した女か?」
「はい」
「・・・そこにエガシー王国の騎士が居るが、エガシー王国の者なのか?」
「いえ。彼女は『古代毒蜘蛛ギガノダー』の討伐報酬関連の連絡係なだけですのでお気遣いなく」
オレはリラをチラ見しながら答えた。
エガシー王国の女騎士の格好は、白系の鎧と青色の服だ。
でも、肌の露出が一切ないんだよなぁ~。
脱がす楽しみはある訳だが、騎士の装備では肌も触れないし。
「ふむ。バルメシコ宮殿を落とされた。奪還したい。協力しろ」
「畏まりました、陛下」
オレがそう答えると、俗物の侯爵が嬉しそうに、
「これこれ、まだ閣下だ」
否定した。
「これは失礼しました」
「因みに討伐出来たら何が欲しい?」
「陛下の庇護を」
「まだ違うというに。具体的には?」
「勇者と認めて下さるだけでいいです。士官の方はまだしたくないです。冒険したい年頃なので」
「・・・なるほど、考えておこう」
と会談が進み、
その日の午後に飛竜とグリフォンの混成部隊50騎でバルメシコ宮殿に乗り込んだのだった。
ここでのポイントは気配消しだ。
実力を隠す。
それに限る。
追放者は闘争本能が剥き出しなだけに勘も鋭いからな。
接近を悟られて逃げられては敵わないから。
その甲斐あって逃げらなかった。
本当に闘争本能だけらしく、謁見の間で1人が王冠を被って王様ごっこをして椅子に寛いでた。
女型で青白過ぎる肌の金髪美女だったが。
まあ、追放者はオレの趣味じゃない。
「【聖なる矢】っ!」
魔法1発どころか1本で、
「ギャアアアアア」
と黒い塵になって消滅した。
後方で侯爵が、
「何だ、弱いではないか」
「いえ、閣下。あの女型にベード将軍以下騎士団の殆どがやられております。聖属性ですし、彼の者が強いと見るべきです」
「ふ~ん」
とか不穏な会話をしてたので、
もう1人の方を倒す時は気を使った。
もう1人の追放者は男型で、寝室で逃げ遅れた王太子妃や王女を穢していた。
さすがは闘争本能剥き出しの追放者だな。
まあ、オレは人妻や王女よりも蛮族の女戦士がタイプだったから『何、オレのオンナ候補達に手を出してくれてんだ』とはならなかったが。
後、確か孕ませられたよな?
ハーフデビルを。
そんな訳で、ソイツの方は翼を斬って、
「ギャア」
両腕を斬って、
「ウギャ」
両足を斬って、
「ヒギャ」
本体から切断された側の箇所が黒い塵と化す中、
残り1撃で消滅するところまで弱らせてから振り返って、
「とどめは誰がされますので?」
と質問した。
俗物の侯爵が前に出て、
「ワシがやろう」
魔宝石が5個も散りばめられた立派な剣を抜いた。
刀身に炎が宿る。
この剣の威力なら問題ないな。
「ふんっ!」
俗物の侯爵が剣を振り抜き、
「ギャアアアアア」
追放者の男型が悲鳴を上げて黒い塵となって風に吹かれるように消滅したのだった。
「お見事です、陛下」
「これこれ、まだ早いわ。勇者ロザリア」
俗物の侯爵がオレをそう呼び、オレは柔らかく微笑したのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
登場人物。
市長・・・ルトス。温泉街ソーゴの市長。選挙ではなく世襲制。准男爵。
俗物の侯爵・・・アルドロン・カーロ。メシコス王国の国王の実弟で臣籍降下した。王位継承権は5位。
女型の追放者・・・メテア。メシコス王国の暗殺部隊出身。
男型の追放者・・・マネオ・カルピス。伯爵家の放蕩息子。除籍されて密偵部隊に入る。
地名。
王都バルメシコ・・・メシコス王国の首都。名産品は槍。
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