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空飛ぶホウキゲット、食糧ゲット

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 オレとアシュは空を飛んでいた。

 飛翔魔法や空中ジャンプの連続で走ってる訳じゃない。

 なら、どうやって飛んでるのかって?

 オレの元の世界に現存し、こっちの世界には存在しない魔法のホウキ(動力に魔石使い捨てタイプ)でだ。

 起動キーとなる言葉が分からなかったので、起動キーを最構築して。

 えっ、そのホウキはどうしたのかって?

 指輪のアイテムボックスの中に入ってたのさ。

 あのジジイ。

 ホウキの事も教えないって。

 それとも知らなかった?

 それはありえない。

 賢者なんだから。

 ともかく、あのジジイは信用出来ない。

 教えられた13の場所も嘘の可能性が出てきた。

 ウンザリだな。

 因みに、今飛んでるホウキの再構築が出来たのはオレが天才だったからだ。

 オーケイ。

 分かったよ、正直に話す。

 能力を喰って知識を得たのさ。

 元の世界で少し狂った魔術師がオレを狙ってきて、魔法の才能の方の目当てで能力を喰らったんだが、錬金術の方も精通してたらしくホウキ作りなんかも職人顔負けの知識があってついでに習得したって経緯だ。

 そんな訳で、オレも天才ホウキ作り職人の技術があり簡単に起動キーを再構築して使えるようにし、

 現在、1本のホウキに2人乗りしていた訳だ。

 後部のアシュが、

「ヒィヤ、どうしてホウキが飛んでるんだよ?」

 オレに抱き付きながら質問し、

「マジックアイテムの一種よ、落ち着いて」

「落ち着けるかよ。ホウキだぞ、ホウキ。ホウキが空を飛んでるんだから」

 まあ、普通はそうなるわな。

 オレの世界にはあったが、それでも最初に乗った時はヒヤヒヤだったから。

 それよりも問題なのは食糧だ。

 オレがこの前まで持ってたアイテムボックスの中には腐るほどあったが。

 塔から放たれた攻撃魔法のお陰で、今は食糧なし。

 一応、未練がましく撃ち落とされた飛竜ワイバーンを探したが、消し炭になってて原型も留めていない。

 オレのアースドラゴンの牙斧槍と弓もだ。

 飛竜ワイバーンは竜種だ。

 オレの武器はアースドラゴン素材。

 竜種が消し炭になる攻撃魔法に、マジックアイテムごときが耐えられる訳がなく、もうどこにもなかった。

 まあ、分かってたけどな。

 何せ、アシュの奴隷契約書もオジャンになったらしく、

「あれ、首輪が取れた」

 アシュの奴隷の首輪が取れたんだから。

「あらら、もう自由の身ね。ここで別れる?」

「いやいや、代金分は働くさ」

「ありがと、アシュ」

 これまで通り、同行する事となったが。





 そして、東の果てから一番近い人里までは飛竜ワイバーンで2日のの距離だ。

 このホウキの速度だと絶対に4日以上掛かる。

 何がいいたいかと言えば、





 食糧がなくて大ピーンチ。





 遭難し掛けてるって事が言いたかった。





 ◇





 さて、問題。





 場所は辺境。食糧が一切ありません。どうしますか?





 答え。





 偶然出会った冒険者から分けて貰う。





 ◇





 そんな訳で、

「ふぅ~。一時はどうなるかと思ったわ。助かったわね」

 焚き火の前で焼けた骨付き肉にかじりつきながらオレが笑う中、

「あり得ないから、ご主人様」

「何が?」

 元奴隷のアシュの顔が引きつっていた。

「だって、あれ」

 とアシュが視線を向けた先には4人の冒険者が地面で伸びていた。

 最高戦闘力が490で、こんな辺鄙な場所に居るのだから、そこそこ腕に自信があるのだろう。

 まあ、オレの敵ではなかったがな。

 一応言っておくが、死んじゃいない。

 困ってたところを食糧を献上してくれたんだから。

 ちゃんと手加減してやったさ。

「何、私は悪くないわよ? ちゃんと『勝ったら食糧を好きなだけ分けてやるよ』ってアイツラだって約束したんだから」

「その前の『食糧を分けて下さい』『だったら身体で代金を支払いな、ヒッヒッヒッ』『なら、勝負しません。私達が勝ったら食糧、そっちが勝ったら好きなだけ私達を抱ける、の条件で』とか言葉巧みに勝負を持ち掛けただろ。ってか、ご主人様のその実力じゃあ絶対勝つに決まってるんだから殆ど詐欺じゃん」

 アシュが呆れる中、

「詐欺でも騙してもいないわ。こっちの実力を見抜けなかったアイツラが悪いんだから」

 という訳で、オレ達は食糧をゲットしたのだった。

 ついでに所持金と魔石と革袋型のアイテムボックスも。

 えっ。

 身ぐるみを剥ぐなんて、それじゃあ山賊と変わらないだろって?

 おいおい、頭、大丈夫か?

 これは正当な・・・





 授業料だよ。





 少しお高いけどな。

 ってか、オレらも危なかったんだぜ?

 こいつらが持ってたアイテムボックスの中に裸で入ってた骨付き肉が結構あってな。

 アシュが、

「これ、毒入りだぜ。こっちは眠り薬入り」

「なるほど、魔物に食わせる用か」

 と気付かなかったら、オレらだって御陀仏だったんだから。

 世の中、喰うか喰われるかだ。

 覚えておきな。





 ◇





 そんな訳で、4日目にどうにか人里に到着した。

 一応言っておくが、空飛ぶホウキで乗り付けるような非常識な真似はしない。

 人里を発見後は地面へ降りて、魔法のホウキをオレがしてる指輪(アシュに渡して持ち逃げされたら堪らないからな。返して貰った)にしまって歩いて近付いていた。

 お陰で門番に、

「歩いてきたのか?」

 って驚かれたがな。

「ええ、道に迷って大変だったわ。ってか、なんてところなの、ここ?」

「東の果ての町、カチョーラだ」

「嘘、何で? こんなところまできちゃったの?」

 とかトボけて、

「おいおい、どこから来たんだ。まあいい、入りな」

 何とかカチョーラの町に入ったのだった。





 最初にする事は魔石換金所で金を得る事だ。

 山賊まがいな事をして得た所持金があるだろうって?

 いやいや、通貨が何か分からないと困るからな。

 そんな訳で魔石1個を換金して、すぐさま武器屋に行った。

 武器屋に出向いた目的は当然、武器の購入だ。

 但し、魔物退治用じゃない。

 女だと舐められて騒動に巻き込まれないようにする為だ。

 言うなれば、騒動避けだった。

 オレは斧槍、アシュはクローを購入した。

 続いて、食料屋で肉を大量にご購入。

 冒険者が授業料に支払ってくれた革袋型のアイテムボックスに入れた。

 賢者が贈呈してくれた指輪型だと珍しいらしいからな。

 バレて面倒事になったら拙いので。

 それから屋台で売ってる加工された食事も大量に購入。

 どうしてかって?

 アシュが料理が出来ないからだよ。

 他にも地図やら日常品やらを購入して、その日の内にさっさとカチョーラの町からのグリフォン特急便という運搬サービス業を利用して大きな街に移動したのだった。





 どうしてそんなに急いでるのかって?

 あの賢者のジジイが生きてるからだよ。

 どうしてそんな事が分かるのかって?

 それは経験則さ。

 いいか、覚えておけよ。

 戦闘力1000以上の奴らはな。

 例え、お星様になってもピンピンして再登場するものなんだよ。

 だからオレなんて町に到着時点で姿を黒髪ロングから、この前、出会った赤毛ショートの戦闘力1980に変えてたんだからな。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。





 門番・・・魔物の接近を一番に考えている為、ロザリア達の不審点に気付かなかった。





 地名。





 カチョーラ・・・東の果ての町。辺境。
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