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オリビア・ニムラーン、女神へのチャンネルは開かず、奴隷アシュ

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 オレは今、リティア大森林の西側のニッサー王国の王都ラウジーンに来ていた。

 オレにだって学習能力くらいある。

 そんな訳でオレはまず変身魔法で姿を変えていた。

 80年も魔法を修行したんだぜ?

 マジックアイテムがなくてもこれくらいは可能だ。

 魔法で変身したオレの今の外見は、黒髪ショートで包帯で右顔を隠した巨乳ちゃんだった。

 まあ、元の世界のヤバイ女の容姿を拝借した訳だが。

 装備は旅の平服。

 見てくれだけで実際はアースドラゴンの装備を着てるんだけどね。

 そして、変身魔法を使ったのは大正解だった。

 何せ、王都ラウジーンの飛獣発着場の掲示板にもオレの手配書があったからだ。

 罪状は、ミント商国の第2都市モルゼクトル全焼容疑。

 懸賞金は金貨5000枚。

 やっす。

 まだまだ小物の犯罪者ってところか。

 まあ、オレには関係ないんだけどな。

 発着場の兵士に、

「お名前は?」

「オリビア・ニムラーンよ(キリッ)」 

 オレはミント商国の文官の羊皮紙の身分証を見せた。

 いや、お宝の中に騎士や文官の身分証の羊皮紙が何故か20枚くらい入ってたんだもん。

 使わない手はないだろ?

「ミント商国? もしや、あれですか?」

 オレの手配書を兵士が指差したので、オレは、

「そっちは専門の部署が追ってるわ。私は大森林の西側に流通してる葡萄酒の買い付けよ。お偉方はあれ以来、荒れててね。下っ端は苦労する訳よ」

「グリフォンで自ら?」

「この顔の所為で嫌われてるからね。明日の朝には戻るからよろしく」

 などと言いながら、オレは王都ラウジーンに潜入したのだった。





 ◇





 オレの目的はただ一つ。

 この世界の神『大地の女神ミーカル』を祀る神殿だ。

 神殿の礼拝堂に入って御神像を見た。

 ロング髪の巨乳お姉さんだったが、顔はオレが知ってる女神連中とは違う。

 やはり別物か。

 オレは一応礼拝堂で強く祈った。





 おい、どうなってるっ?

 さっさとオレを元居た場所に戻せっ!

 マジで許さんぞっ!





 強く強く強くっ!

 祈り続けた。

 1時間もだ。

 オレの居た世界では5分くらいでが開いて会話が可能だったんだが、この世界ではどれだけ願っても無駄だった。





 チクショウっ!

 無視しやがってっ!

 どうにか神界まで行って、その巨乳を揉みまくってやるから覚悟しておけよっ!





 オレはそう捨て祈りゼリフを残して神殿の礼拝堂を後にしたのだった。





 ◇





 もう王都ラウジーンでやる事がなくなった。

 暇だ。

 まずは両替商で黄金のインゴットをニッサー王国の通貨に変えた。

 王都ラウジーンのガイドマップを購入する。

 屋台の食べ歩きだ。

 高級下着も購入した。

 いやいや、エロイ意味とかじゃなくて。

 ないと怪しまれるからな。

 というか、王都を散策して包帯で顔を隠したこの容姿は目立つ事に気付いた。

 なので、路地裏で変身魔法を使い、転生した直後に見た王太子の腕に絡まってたピンクブロンドの巨乳ちゃんの容姿を拝借した。

 恰好は上等な商人服だったが。

 その姿で薬品屋に入店する。

 ポーションの値段も確認し、安かったのでハイポーションを100本ほど補充した。

 本当に暇だ。

 やる事がない。

 暇過ぎて、奴隷屋なんかにも冷やかしで入店してしまった。

 奴隷か。

 こっちの世界にもある訳ね。

 戦闘力の高い美人が居たら買おうかな。

「どういった奴隷をお探しで?」

 男の30代の店員が両手を揉みながら接客してきた。

「荷の運搬の労働力と戦闘要員。出来れば性別は女で」

「女ですか?」

「男だと少し怖いから」

 ピンクブロンドの容姿で上目遣いをするとバッチリと効果があり、

「なるほど。では獣人などは如何でしょう?」

「種類は?」

「狼、虎、兎、狐、熊、蜥蜴、鰐、犬、猫と色々いますが」

 竜はさすがに居ないか。

「犬が一番『嗅覚が良い』でいいのよね?」

「まあ、種類によりますが、そのはずです」

「では犬系で外見が強そうでないのをお願いね」

「というと?」

「商売だからね。可愛くないと。後、戦闘力を隠すのもありね」

「なるほど」

 そんな会話をして別室で待ってると、店員が犬系の奴隷の女を4人連れてきた。

 全員が同じ首輪をして、同じ白色のワンピースを着ている。

 右から、

 戦闘力80。巨乳。人妻系。

 戦闘力50。巨乳。秘書系。

 戦闘力220。巨乳。女戦士系。

 戦闘力130。巨乳。女学生系。

「右から28歳、26歳、21歳、17歳となっています」

「料理が出来る者は?」

 オレの質問に、全員が手を上げた。

「服を脱がせてちょうだい。下着は脱がなくていいから」

「理由を伺っても?」

「部族のタトゥーがあるかの確認よ」

「奴隷の購入に慣れてらっしゃいますね」

「常識じゃないの」

 そんな訳で全員が脱いだ。

 下着も全員同じ白色のフリーサイズの物を着ていた。

 戦闘力80は左太股に読めないが文字のタトゥーがあった。

 多分、恋人か旦那の名前だろう。

 戦闘力220には右肩に部族系のタトゥー。

 こっちは戦士としてのタトゥーだろう。

 戦闘力130には背中一面にタトゥーがある。

 図柄?

 部族の宝の暗号だったりして。

 ふむ。

「その子を喋らせてみて。口調が聞きたいわ」

「ええっと」

「何?」

「実は本日入荷したところで教育が行き届いておらず、購買意欲を失う事になる可能性が・・・」

「構わないわ」

 オレが言うと、店員が持ってるマジックアイテムで喋るのを許可した瞬間、

「人間がっ! 調子に乗るなよっ! 絶対にその喉を噛みちぎってやるからなっ!」

 敵愾心剥き出しで言ってきた。

 まあ、睨んでたからそうだろうとは思ったが。

 弱い犬ほど良く吠えるって言うしね。

「教育してない分、お安くしてね」

 オレが店員にウインクすると、

「ええっと、本当によろしいのですか? 言っては何ですが、従順とは・・・」

「大丈夫よ。ちゃんと躾けるから」

「何だとっ!」

 買われる方は不服っぽかったが、

 オレは戦闘力220の奴隷のアシュという、茶色の垂れ耳で茶髪ロングを1本の三つ編みにし、茶尻尾の女戦士を黄金のインゴット3個で購入して、奴隷所有の書類を貰ったのだった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。
 
 兵士・・・飛獣発着場勤務。意外にエリート。

 奴隷商の店員・・・若いが実は副店長。

 アシュ・・・犬の獣人。戦闘力220。黄金のインゴット3個で購入。





 国名。





 ニッサー王国・・・大森林の西側に位置する。





 地名。





 王都ラウジーン・・・ニッサー王国の首都。
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