上 下
4 / 59

【ソルベンside】怪我が治癒しない

しおりを挟む
 痛い痛い痛いっ!

 どうして偉大なるゼーレ王国の第16代国王に内定している王太子である余がこんな目にっ!

 余は現在、激痛で苦しんでいた。

 激痛の原因は卒業パーティーで反逆者のロザリアに殴られた箇所が痛むからだ。

 殴られた怪我など宮廷治癒術師に治させればいいと思ったが、変な呪いが掛かっていた所為で怪我は治らなかった。

 つまり、余は現在、





 右眼に青タンがあり、

 顎は砕かれ、

 歯も4本折れ、

 側頭部もヒビが入り、





 それはもうあり得ない激痛に苦しんでいた。

 宮廷治癒術師の話では治癒出来ないらしい。

 お陰で、激痛にさいなまれながら、余をこんな目に遭わせた反逆者ロザリアを捕らえるべく命令を出した時には(激痛過ぎてロザリア捕縛の命令を出したのは2日後だった。無論、こっちは顎が砕かれて喋れないので筆談でだ。途中でマジックアイテムでの【念話】となったが)逃げられてた。

 クソォ~。

 余が苦しんでる隙に逃げるとはっ!

 あの反逆者だけは絶対に許さんっ!

 捕らえて拷問で歯を1本1本、余が自ら抜いてやるぞ。

 そんな訳で騎士団に追跡をさせている。

 女の足だ。

 遠くへは逃げれまい。

 逃走に使った貴族車は処分されてたらしいからな。





 当然、追跡を派遣するだけではない。

 ロザリアの家族や屋敷に居た使用人らも全員捕縛している。

 王太子の余を殴ったのだ。

 つまりは反逆者の一族だ。

 貴族だろうと容赦はしない。

 拷問を掛けて居場所を聞き出して最中だ。

 全員、ロザリアを庇って拷問に耐えてるらしいが。

 馬鹿な奴らだ。

 さっさと喋れっ!

 本当に怒髪天にくる。





 それにしても顎が痛いぞ。





 ◇





 だが、余の惨状でもまだマシらしい。

 宮廷治癒術師がそう苦しむ余に言った時は『処刑にしてやる』と激怒したが、マクベスとアークの惨状を聞いて本当に『マシ』な事を知った。





 マクベスは両眼が潰れて失明。






 アークは股間を潰されて不能。





 だったのだから。

 2人とも再起不能らしい。

 ・・・股間を潰されなくて本当に良かった。

 余は激痛の中、しみじみと思ったのだった。





 ◇





 寝込んで10日後には外遊で他国に出ていた父上が国王陛下が帰国した。

 ベッドに眠る余に遭いに来てくれた陛下の第一声は、





「この愚か者がっ! おまえは廃嫡だっ! 北の塔に居を移させる。そこで寝ていろっ!」





 との信じられない言葉だった。

「あうあうあう」

 顎が砕かれて喋れない中、必死にどういう事かと質問しようとして、マジックアイテムの【念話】を思い出して、

『どういう事です、陛下?』

「その傷だっ!」

 陛下が怒り任せに即答した。





「まさか、【神罰】とはな」





『【神罰】?』

「そうだ、宮廷魔術師が治癒出来ぬ原因を調べたであろうが? その結果、【神罰】と判明した。【神罰】を受ける者がよもやゼーレ王族の中から出ようとはっ! このような不名誉、長いゼーレ王国の歴史の中でもおまえがは初だぞっ! 恥を知れっ!」

『お待ち下さい、これはロザリアにやられた傷で――』

「だからロザリアへの婚約破棄に怒った女神様がおまえに【神罰】を下したのだろうっ! そもそもあの淑女の鏡であるロザリアに殴られた時点で何かが変であろうがっ!」

『それは確かに――』

「ともかく【神罰】である為、おまえの傷はもう治らん」

『はあ?』

「よって廃婿とする。北の塔へと行くがよい。ああ、一応、子が作れぬ処置をしておくからな」

『待って下さい。余はまだ――』

 と言ったところで【念話】用のマジックアイテムを没収された。

「ソルベン・ゼーレ。おまえを廃嫡として北の塔へと幽閉する」

 陛下がそう言い放ち、オレは本当に幽閉されたのだった。





 顎が砕かれてロクに食事も出来ないのにだぞ。





 本当にロザリアに負わされた怪我はその後も治らず、食事が満足に食べれないオレは衰弱し、

 10年後に病を得て死ぬ事となったのだった。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 登場人物。





 モルガス・ゼーレ・・・ゼーレ王国の第15代国王。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ある平民生徒のお話

よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。 伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。 それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

原産地が同じでも結果が違ったお話

よもぎ
ファンタジー
とある国の貴族が通うための学園で、女生徒一人と男子生徒十数人がとある罪により捕縛されることとなった。女生徒は何の罪かも分からず牢で悶々と過ごしていたが、そこにさる貴族家の夫人が訪ねてきて……。 視点が途中で切り替わります。基本的に一人称視点で話が進みます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

思わず呆れる婚約破棄

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある国のとある夜会、その場にて、その国の王子が婚約破棄を言い渡した。 だがしかし、その内容がずさんというか、あまりにもひどいというか……呆れるしかない。 余りにもひどい内容に、思わず誰もが呆れてしまうのであった。 ……ネタバレのような気がする。しかし、良い紹介分が思いつかなかった。 よくあるざまぁ系婚約破棄物ですが、第3者視点よりお送りいたします。

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

処理中です...