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第5章 御前対校戦

御前対校戦なんか最初から眼中になかった【ムーンローズside】

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 ミリアリリー女学園の初戦の相手が優勝候補のミリアリリー男子学園で、それに勝利したのだから、後はもう消化試合の様相を呈していた。

 それよりもパリナさんよ。

 強くなってる。

 っていうか、雷炎が使えるようになってるなんて私、知らなかったわよ。

 隠し事なんて水臭いわ、パリナさんも。

 と思っていたが、次のミリアリリー女学園の試合でとんでもない事が起こった。

 また次鋒戦だ。

 次の対戦相手はヴァルゼート女学園。

 ヴァルゼート半島にある海軍や船乗りになる女子を育成する教育機関だ。

 正直、ミリアリリー女学園よりも荒くれ者が多くて、実力も向こうが上なんだけど、今年に限ってはミリアリリー女学園の方が上だった。

 その次鋒戦。

 あの高出力の魔力を纏ったエニスが最初の一刀で対戦相手の模擬刀を吹き飛ばした。

 吹き飛ばした摸擬刀が試合場を覆う魔法の障壁をつらぬいて、来賓席側に飛来して、来賓席に張られた魔法の障壁も貫いて・・・・・・・

 その摸擬刀は私達の3つ隣の貴賓ボックス席のレーゼン公爵に直撃した。

「ギャアアア・・・・・」

 激痛だったのか悲鳴が響く。

 だが、誰かが、

「えっ? 公爵の眼が・・・」

 と呟いて、私も注目したら茶色の眼が真っ赤に輝いていた。

 誰かが更に、

「・・・えっ? ヴァンパイアか、もしかして?」

 そう呟き、次の瞬間、私の背筋がゾワッと総毛立った。

 貴族の中に変身したヴァンパイアが紛れてるだなんて。

 最終目標は何?

 まさか、陛下を害する為に・・・

 と思った時、ビュンッと何かがその公爵に化けてたヴァンパイアに直撃した。

 摸擬刀だった。

「ギャアアアアアアア」

 とヴァンパイアが悲鳴を上げて身体を灰にして消滅する中、私が2本目の模擬刀が飛んできた試合場に視線を向けると、エニスが何かを投げた直後のポーズをしていたのだった。

 試合は仕切り直されて、次鋒戦は当然、ミリアリリー女学園が勝利した。





 次のミリアリリー女学園の対戦相手はブルドール学園だ。

 こちらは共学で、ブルドール山脈地方にある軍人養成機関だった。

 その試合でも次鋒戦で問題が起こった。

 高魔力を纏ったエニスが次鋒戦の対戦相手を吹き飛ばしたのだが、その吹き飛ばされた対戦相手が、試合場の魔法の障壁を貫いて、外側に控えていた対戦校の他の4選手に直撃したからだ。

 そこまでなら何ら問題はない。

 その4選手中の2選手が髪を銀色に染めて、眼を赤く輝かせたから問題だった。

「女ぁぁぁぁぁっ! おまえ、さっきから――良くも我々の同胞ばかりをっ!」

「殺してやるっ!」

 とか言って、ヴァンパイア2人が試合場のエニスに襲い掛かり、摸擬刀でエニスは簡単にヴァンパイア2人を撃破し・・・・・・

 更には奪った武器2本をエニスが観客席に凄い速度で投げて、命中させた2人の観客がヴァンパイアの正体を現して、騎士団が慌てて、負傷したヴァンパイア2体を退治して灰に返す騒ぎが起こったのだった。





 もう何が起こってるのかは明らかだった。

 あの子には御前対校戦なんか最初から眼中になかったらしい。





 御前対校戦が一時中断になる中、隣に居たお父様が真面目な顔で、

「あのエニスって子と知り合いなのか、ムーンちゃんは?」

 と嫌な事を聞いてきた。

 そんな訳ないじゃないの、とは言えず、淑女らしく微笑を浮かべて、

「彼女はまだミリアリリー女学園に来て日が浅いですから。お近付きにはなっておりませんわ」

「お近付きになっておくようにね」

 さっきまで愛人扱いしてた癖に、この豹変の仕方。

 さすがは高位貴族よね、お父様も。

「わかりましたわ」

 と笑顔で答えたけど、





 はぁ~、絶対に御免だわっ!





 私はそんな事を思ったのだった。
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